【公認ファシリテーターインタビュー】カードゲーム体験はゴールではなく、あくまでも1つの “きっかけ” に過ぎない。重要なのは、そこからどのように自己の得意分野に繋げていくか?

私たちプロジェクトデザインが展開するカードゲーム「2050カーボンニュートラル」には、「カーボンニュートラルの実現」という志を共にし、組織の事業活動や個人の日常行動の変革を生み出すべく、カードゲームの力を使いながら日々活動している公認ファシリテーターが全国各地にいます(2024年6月末現在146名)。

公認ファシリテーター…「公認ファシリテーター養成講座」を受講し、修了した方が認定される制度です。公認ファシリテーターとなることで、カードゲーム「2050カーボンニュートラル」を自ら開催することができます。

プロジェクトの始動から2年。ブランドマネージャーの竹田が、改めて数名の公認ファシリテーターへインタビューし、カードゲームに出会ったきっかけや、養成講座を受講した背景、目指している姿などをお伺いしました。

この記事では、先輩ファシリテーターの足跡(ゲームとの出会い、ファシリテータになった経緯、今の状況、将来に向けた考え)をご紹介することを通じて、「ゲームの魅力や活用法」「ファシリテーターになったことで生まれる新たな可能性」などの情報をお届けします。

ファシリテーターになることに悩みや不安を持つ方の背中を一歩押すことにつながれば幸いです。

第1回となる本稿では、国際航業株式会社(以下、国際航業)カーボンニュートラル推進部の今田 大輔様へのインタビュー内容をお届けします。

今田様は、SDGsおよびカーボンニュートラルの推進アドバイザーとしてご活躍されているサステナビリティ領域のコンサルティングのスペシャリストです。

お話を伺った方

今田 大輔(いまだ だいすけ)様

<プロフィール>

国際航業株式会社 カーボンニュートラル推進部 SDGs担当
MBA(経営管理学修士)・BA (芸術学士)・准認定ファンドレイザー
帝塚山学院大学 非常勤講師

2016年3月に尼崎市課題解決型 ソーシャルビジネスコンペにてSDGsに対応した「自転車マナーポイント」で市長賞を受賞。このプランは第1回日本財団ソーシャルイノベーター支援制度(現ソーシャルイノベーションアワード)にて応募総数225件中上位20件に選出されるなど、当初よりSDGs 事業の開発に取り組む。

コンサルタントとして活動する中で、尼崎市においては電子地域通貨「あま咲きコイン」の “SDGsポイント” や “SDGsサポーター制度” を考案。三郷町では「SDGsメンター制度」、芦屋市では「カーボンニュートラルサポーター制度」を構築し、SDGs やカーボンニュートラルについての普及・実践を仕組み化する事業展開を最前線にて展開中。自治体の脱炭素計画策定業務などにも従事している。また個人として2024年春より帝塚山学院大学(大阪府堺市)で週一回教壇に立っている。

<ファシリテーター資格を保有するプロジェクトデザイン制作のゲーム>

  • 2030SDGs(一般向けライセンス・子ども向けライセンスの両方)
  • SDGs de 地方創生
  • SDGsアウトサイドインカードゲーム
  • カードゲーム「2050 カーボンニュートラル」
  • 「CHANGE FOR THE BLUE」カードゲーム

<企業プロフィール>

“国土保全、防災・減災、社会インフラ整備、環境・エネルギーなど、人びとのくらしに関わる幅広い分野で空間情報を活用した専門性の高い技術サービスを提供しています。創業より培った測量・分析などの技術により世界的な社会課題の解決に真摯に取り組み、持続可能な社会を次世代に引き継ぐことを目指しています”

参考:事業領域|国際航業株式会社

行動変容を創り、実装するスペシャリスト

ーまず、今田様の国際航業での業務内容を簡単にお伺いできますか。

今田様:私はカーボンニュートラル推進部の担当者として、地方自治体の地球温暖化対策についての実行計画策定や企業コンサルティングなどを行っています。

自治体や企業を訪問するだけでなく、自治体からの依頼を受け、学校にも赴くことがあります。二酸化炭素排出量の算定で “見える化” を行い、そこから排出量削減に向けた次なるアクションをご提案するなど、現場から挙がる細かなニーズにお答えしています。

※二酸化炭素排出量…活動量(事業者の活動の規模に関する量)に排出原単位(活動量あたりの二酸化炭素排出量)を乗じることで算定可能。

ーこれまで複数の自治体で、SDGsおよびカーボンニュートラルの推進アドバイザーとして新たな事業のコンサルティングをされてきました。「SDGs推進」における個人ビジョンをお伺いできますか。

今田様:私の専門は “行動変容を創っていく(働きかけていく)” ことです。

尼崎市の「あま咲きコイン」の例や奈良県三郷町での「SDGsメンター制度」、大阪府芦屋市の「カーボンニュートラルサポーター制度」など、地域特性に合わせた「サステナブル×行動変容」の仕組みを実装する日本の第一人者の一人であると自負しております。

その中でカードゲームは、行動変容を起こし普及させるための1つのソリューションだと思っています。

ーありがとうございます。

カードゲーム「2050カーボンニュートラル」との出会い

ー今田様はどのようにカードゲーム「2050カーボンニュートラル」と出会われたのでしょうか。体験会参加のきっかけを教えてください。

今田様:きっかけは、既に参画していたコミュニティからの情報です。

カードゲーム「2050カーボンニュートラル」の公認ファシリテーター取得以前に、既にプロジェクトデザインの制作する「2030SDGs」「SDGs de 地方創生」「SDGsアウトサイドインカードゲーム」のファシリテーター資格を保有していました。そのファシリテーターコミュニティの中で、「カーボンニュートラルをテーマとした新しいカードゲームの体験会が行われる」という情報をキャッチしたのです。

案内を見た2022年当時、“SDGs” の言葉自体は世の中に浸透し、認知度も高まりつつありました。しかしこの時私は、17の目標(ゴール)に対しより個別具体的なアクションを起こす必要性を感じていました。

その中で「カーボンニュートラル」というテーマは、SDGs13「気候変動に具体的な対策を」の目標に対し、温暖化の原因となるCO2(温室効果ガス)の排出量を減らす取り組みと密接に関係しています。他にも、SDGs7「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」やSDGs12「つくる責任 つかう責任」など、様々なSDGsの目標に大きく関わります。

参考:SDGs13「気候変動に具体的な対策を」の企業の取り組み事例・私たちにできること | 株式会社プロジェクトデザイン

これを踏まえ「カードゲーム『2050カーボンニュートラル』は、クライアントに対しカーボンニュートラルを伴走支援するツールに最適だ」と思い、2022年9月に体験会へ参加しました。そして翌10月には養成講座を受講し、公認ファシリテーター資格を取得しています。

資格取得当初は企業に属した活動ではなく、個人としてカードゲームを活用し各種自治体のまちづくり事業などに携わっていました。今ではその実績が会社にも認められ、企業活動の一環として事業にも取り入れています。

「求める人は必ずいる」クライアントの要望を形に

ー体験会後すぐに養成講座の受講を決めていらっしゃいますが、受講を後押しした要素として何が挙げられますか。

今田様:それは「クライアントのニーズに的確に答えなければならない」と感じていたことが大きいです。

当時、「脱炭素化」や「脱炭素経営」のワードを耳にすることが増え、私の元にもクライアントからカーボンニュートラル推進や事業展開の要望が寄せられており、真摯にお答えする必要がありました。

しかし、具体的な計画策定へ移るには、まずクライアントにカーボンニュートラルの概念を正しく理解してもらわなければなりません。その課題を解決してくれるツールが、まさにカードゲーム「2050カーボンニュートラル」だったのです。

今田様が体験会を運営される様子

今田様:このゲームの良さは、熱狂し「楽しい」「面白い」「勉強になる」と体感するプロセスを通して、誰にでもカーボンニュートラルの概念を正しく伝えられる点にあります。そして、ゲームならではの参加しやすさが「入り口」となり、ゲーム体験で得た内容と結び付けながら、「出口」である個別具体的な行動にまで落とし込むことができます。

カードゲームが体験者にもたらす効果は、既に資格を持つゲームで体感していたので、受講に迷いはありませんでした。

ー「受講に迷いはなかった」とのことですが、例えば受講費用や講座受講のスケジューリングなど、ご自身の中でハードルは感じられませんでしたか。

今田様:受講日も土日に設定いただいたので、スケジュールの調整は問題ありませんでした。

また、自治体や企業が「カーボンニュートラルについて学びたい」というニーズは大きいため、このカードゲームのファシリテーター資格を取得することは、“力強い武器” を手に入れることだと感じました。

つまり、カードゲーム体験の場を自分で作ることができれば、求める人(クライアント)は必ずいる。そこに受講料を払う価値はあると思いました。

カーボンニュートラルの概念を腹落ちさせ、次のアクションへ

ー公認ファシリテーターになられたことで、カーボンニュートラルへの理解はどのように深まりましたか。

今田様:そうですね、これまで理論として知っていた知識も、ゲーム運営を学ぶ過程で腹落ちし、さらなる理解を深めてくれました。

ゲーム内で用いるカーボン・マップでは、カーボンの循環構造(カーボンの量や動きの変化)や “経済と環境の好循環” が可視化されています。

カーボン・マップ…人間社会・大気中・森林にストック(貯蔵・蓄積・固定)されたカーボンが、排出・吸収・活用されることによって地球上を循環する概念を示す。

これによりカーボンニュートラルの概念が映像化され、ストックとフローの仕組みがより鮮明にイメージできるようになりましたね。体験者にも、特にこのマップ上の変化を強調してお伝えしています。

ーゲームから自己の学びも深めていただいていますが、受講以前に思い描かれていた「クライアントのニーズに的確に答える」目的は果たされましたか。

今田様:はい。カードゲームはカーボンニュートラルの概念の理解を促進し、「難しい」「分からない」のような先入観を断つ「入り口」のツールに最適でした。そして「出口」としてクライアントの個別具体的な要望を引き出し、コンサルティング案件へ繋げることができています。

つまり、ゲーム体験を “学び” で終わらせるのではなく、最終的に「クライアントに対し、どのような価値を生み出し提供できるか」。ここに私はリード獲得の最大のチャンスがあると思っています。

脱炭素領域へビジネス参入、カーボンニュートラル推進を伴走支援

ー今ほどリード獲得についてお話いただきましたが、今田様はカードゲーム「2050カーボンニュートラル」をどんな文脈で実施されていますか。
 
今田様:強みとする文脈はファシリテーターによって異なると思いますが、私はコンサルタントとしての経験を活かして、企業や自治体の脱炭素領域へビジネス参入のアプローチをしています。

今、自治体や上場企業、また上場企業と取引をする中小企業は、脱炭素領域で具体的な対策を講じ、事業展開をしていかなければならないフェーズに来ています。しかし、取り組まなければならない意義は理解しつつも、具体的な行動にまで落とし込めていない状況です。

ここが最大のターゲットであり、自己のこれまでの実績や肩書を活かせる領域だと思っています。

企業・自治体が脱炭素経営を推し進めるには、様々な課題をクリアする必要があります。例えば、「個人ではなかなか自分事にならない」「組織から個人の行動変容へ落とし込みたいが、膨大な時間やコストがかかる」などの課題感を持つ中で、これらに対する伴走支援ツールとして、カードゲーム「2050カーボンニュートラル」の活路を見出しています。

先ほども申し上げているように、カードゲーム体験はゴールではなく、あくまでも1つの “きっかけ” に過ぎません。重要なのは、そこからどのように自己の得意分野に繋げていくかです。

私の強みは、コンサルティング力にあると考えています。ゲーム体験から生まれた新たな要望に、カーボンニュートラル推進を目的とした講演や研修・ロードマップ策定など具体的なアクションを指し示しています。

まずは「ゲームをどのような位置付けでやるのか」「キャッシュポイントをどこに持っていくのか」を見出すことが必要です。

ー今田様の強みとする文脈でゲームをご活用いただいているのですね。これまでのアプローチの事例や、特筆すべきポイントもお伺いできますでしょうか。

今田様:はい、私の考える2つの事例をご紹介します。

1つ目は、「自治体・企業の研修や年間計画への差し込み」です。

この中でも、「カードゲーム単体で実施する場合」と「年間計画に盛り込む」2パターンがあると思います。

単体の実施は、自治体や企業研修等、あらかじめ年に数回組み込まれている定期的な研修内容でゲーム体験を実施。年間計画へ盛り込む場合は、地球温暖化対策やロードマップ策定などの中にカードゲームを「差別化要素」として取り入れています。

自治体研修でカードゲーム体験が行われる様子

今田様:脱炭素を自分事化しているのは、大企業や自治体が中心です。そして、一般的にフォーカスされる二酸化炭素排出量の算定はあくまでも現状把握でしかなく、実際に排出量を減らすには周囲の協力を得なければなりません。

カーボンニュートラルを実現するには、自社の脱炭素だけでなく、上流や下流の原材料製造や製品使用時の間接的な温室効果ガス排出量(Scope3)も含めたサプライチェーン全体の排出量削減が求められます。

サプライチェーン全体での脱炭素(カードゲーム「2050カーボンニュートラル」体験会スライドより)

今田様:まずはその理解を得るためにゲーム体験を取り入れ、組織や周辺企業全体で協力して取り組む必要性を訴えかけることが効果的だと考えています。

2つ目は、「クライアントに対する事業展開へのサポート」です。

カードゲーム「2050カーボンニュートラル」は、地域の中小企業など、地域連携を組むクライアントへ脱炭素領域の参入方法を提示するツールにもなり得ます。なぜなら、本ゲームのカードには、企業が脱炭素を事業化する方法が多く示されているからです。

日本では、2021年6月に経済と環境の好循環をつくるための産業政策である「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」が策定されています。国もイノベーションを起こす企業の挑戦を後押しする体制の中で、中小企業にはビジネス参入のチャンスがありますし、経済と環境の好循環の実績を残すための伴走支援として、カードゲームでのアプローチが有効です。

ゲーム体験が生み出す、その先の変革

ーここまでカードゲーム「2050カーボンニュートラル」の活用をお伺いしてきました。本ゲームがきっかけとなり、国際航業では現在カーボンニュートラルをテーマとしたオリジナルゲームをプロジェクトデザインと共同開発しております。今後どのように広めていかれるご予定ですか。

今田様:オリジナルゲーム制作の発端は、社内でのカードゲーム体験でした。私が所属する部内で行ったところ社員に大きな衝撃を与え、「自分の案件にも差し込みたい!」と問い合わせが相次ぎ、あまりにも多いのでお断りをしないといけないほどでした(笑)。

その体験から「お客様とのコミュニケーションツールとして、ファシリテーションスキルの有無に関わらず、短時間で気軽に実施できるボードゲームがあったら」と社内からの要望の声が上がり、制作をプロジェクトデザインに依頼することになりました。まだ開発段階(2024年6月現在)ですが、形になりつつあります。

参考:国際航業「ボードゲームdeカーボンニュートラル」を使った脱炭素研修サービスを開始 〜楽しみながら「脱炭素」を学べるボードゲームを開発。自治体・企業等での活用を想定〜|国際航業株式会社

カードゲームやボードゲームのようなツールは、仲間意識を醸成し、共通の目的に向かって対等にコミュニケーションができるプラットフォームです。クライアントのニーズに合わせてカードゲーム「2050カーボンニュートラル」と共に活用し、変革を推し進めていきたいと思っています。

ーカードゲーム「2050カーボンニュートラル」養成講座の受講を迷われている方に向けて、一言エールをお願いします。

今田様:迷っているなら、まずは飛び込んでください!

今、世の中のSDGs推進のニーズは、よりテクニカルで個別具体なフェーズへ移行しています。ファシリテーター資格の取得と同時に、正しいカーボンニュートラルの知識を得ることが不可欠ではありますが、得た知識から相手の期待値に応じた価値の提供が可能になりますし、行動変容につなげることができます。

脱炭素の啓蒙には、このカードゲーム「2050カーボンニュートラル」が最強ツールです!共にカーボンニュートラルな未来を目指し、活動していきましょう。

ーコンサルティングのスペシャリストは、SDGs領域においてどのようにビジネス文脈にゲーム体験を差し込んでいるのか。ツールを生かした戦略が非常に参考になるお話でした。今田様、ありがとうございました!

公認ファシリテーターになりたい方へ

公認ファシリテーターになるには、まずはカードゲーム「2050カーボンニュートラル」をご体験いただく必要があります(体験会にご参加いただくほか、組織内研修やイベントの場でカードゲーム「2050カーボンニュートラル」を体験いただく形でもOKです)。

その後、「ファシリテーターになることをご検討の皆さまへ」をご一読いただき、その上でファシリテーターになることを希望される場合は、「体験会/養成講座」のページから養成講座にお申込みいただきますようお願いいたします。

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