【実施レポート】新作ゲーム「2050カーボンニュートラル」テストプレイ(環境省近畿地方環境事務所)
株式会社プロジェクトデザインの複数のゲームの「公認ファシリテーター」としてご活躍の福嶋慶三さん(環境省近畿地方環境事務所環境対策課長)にご協力いただき制作した新作カードゲーム「2050カーボンニュートラル」。
2022年5月25日、プロジェクトデザインが環境省近畿地方環境事務所で実施したテストプレイの模様をお届けします。
「2050カーボンニュートラル」の産声
私たち株式会社プロジェクトデザインでは、2016年3月にSDGsの本質を学ぶゲーム「2030SDGs」を一般社団法人イマココラボと協働で開発して以来、様々なSDGsのゲーム制作に携わってきました。
ゲームを通じて社会課題の理解と解決に向けた取り組みを促進できることを確認した私たちは「次なる世界が、そして日本が向き合うべき社会課題は何か?」という問いを立てた時に、相次ぐ異常気象や伝染病の流行などの地球単位で解決するべき課題として「カーボンニュートラル」というテーマが相応しいという考えに至りました。
そして、2021年12月。
奇しくも、公私にわたり脱炭素やSDGsの推進に携わっておられる福嶋慶三さんより「カーボンニュートラルをテーマにしたゲームを作りませんか?」という嬉しいお話をいただきました。福嶋さんに協力してもらえるならば、世の中にインパクトを与えるゲームが作れるかもしれない! このゲームを活用して日本から脱炭素の先行事例を作り、その事例を世界に広げていきたい!
そんな想いを胸に「2050カーボンニュートラル」のゲーム制作プロジェクトがスタートしました。
「2050カーボンニュートラル」が生み出したい価値
ゲーム制作で最初にすることは、ゲームを通じて何を表現するのかというゴールを定めることです。「2050カーボンニュートラル」で表現したい価値として、次の4点を定義しました。
- カーボンニュートラルの取り組みはまったなしの状況。1年取り組みが遅れれば達成は何倍も難しくなる
- ひとつひとつの組織、私達ひとりひとりにできることが必ずある(まずはできることを知るところから)
- ただし、ひとりで取り組んでいても限界がある。官と民。個人と組織が足並みを揃え、カーボンニュートラルに取り組む必要がある
- カーボンニュートラルの取り組みが一気に広がるティッピング・ポイントが必ず訪れる。SDGsの認知度が80%を超えたように、いち早くティッピングポイントを迎えたい。日本は脱炭素の先行事例となれるし、日本の事例を世界に広げることができれば、世界に勇気を与えられる
テストプレイの模様
新作ゲームを開発する際には、何度もテストプレイを重ねながらロジックの修正や運営のブラッシュアップを行っていきます。それは「2050カーボンニュートラル」の制作でも同じです。今回のテストプレイでは約50名様に参加いただきました。
内訳は、企業で脱炭素の事業を展開されている方々などが約25名様、自治体で脱炭素宣言のご担当者や研修ご担当の方々が約10名様、環境省の脱炭素室の方々が約15名様といった具合です。
カーボンニュートラルに対する関心の高さが伺えます。
ゲームプレイ中の様子:誰もが席を立ち、ゲームに熱中します
体験者の声
ゲーム体験を経て、どんな学びや気づきがありましたか?
“個人や一つの組織にも、カーボンニュートラル達成に向けてできることがありますが、単独の取り組みでは限界があり、協働で歩調を合わせないと効果が低く、望んだ結果が得られないことが分かりました”
“組織のアクションと個人のアクションを両方やることが大切。企業のアクションが個人のアクションを変えていく、個人のムーヴメントが組織を動かす、そんな双方向で波及効果を及ぼし合うことが大切だと思いました”
“ゲームではカーボンニュートラルを実現できたが、温室効果ガスが大量に溜まった状態になっており、排出量削減は急務だと分かりました”
“ゲームでも現実世界でも、カーボンニュートラルの実現は待ったなし。初手で大きなプロジェクトを行う必要がありました”
“経済施策と環境施策を同時に行い、経済価値と環境価値を好循環させることでカーボンニュートラルを実現できると腹落ちしました”
このゲームの「良かった点」は何ですか?
“「関わり合わないと前に進めない」という仕組みが秀逸。わずか1時間のゲーム体験で、文字通り視野が広がるのを感じました。グループを変えて、また参加してみたいです”
“ともすると分かりづらい、カーボンニュートラルの概念がゲームを通して自然と理解できました”
“カーボンニュートラルの実現のために何をすれば効果が上がるのか、どういった行動をすべきなのか、について、自分事として捉えることができるゲーム”
“誰と何をすればカーボンニュートラルを達成できるのか分からない、というのは、現実でもゲームでも同じ。だからこそ、「情報共有の大切さ」や「初動の難しさ」をゲームで多くの人に体験してほしい”
協力者より一言
時計を遡ること、2016年秋。前年に国連でSDGsが誕生したものの、どうやってこれを世の中に浸透させていけばよいか悩んでいた頃に出合ったのが、カードゲーム「2030SDGs」でした。
そこで、カードゲームのダイナミズムや何より楽しさ!に目覚め、気づいたら、自分もファシリテーターとなっておりました(笑)
あれから時は流れ、今やSDGsの認知度は80%超に。次に立ち向かうべき社会課題は、この気候変動問題です。政府の2050年カーボンニュートラル宣言後、企業や自治体などの間では、今、急速に取り組みが進み始めています。しかし、2030年の46%削減、2050年の脱炭素社会の実現のためには、まだまだ、多くの人々を巻き込んだ取り組みが必要です。
そこで、餅は餅屋。プロジェクトデザイン社さんにお話しさせていただいたところ、出来上がったのがこの「2050 カーボンニュートラル」です。自分も今回のテストプレイで初めて体験したのですが、想像をはるかに超える面白さと学びがあり、楽しくのめりこみました!(笑)
ぜひ多くの方にご体験いただき、カーボンニュートラルへの取り組みを踏み出す一助としていただければ幸いです。
福嶋 慶三(ふくしま けいぞう)
英国サセックス大学大学院修了。環境省入省後、地球温暖化対策課、環境影響評価課、大臣官房政策調整室ほか、内閣官房副長官補室(気候変動対策チーム)や
尼崎市役所(政策担当理事)への出向等を経て、現在、近畿地方環境事務所環境対策課長 兼 地域脱炭素創生室長。
執筆者プロフィール
竹田 法信(たけだ のりのぶ)
富山県立富山中部高等学校卒業、筑波大学第三学群社会工学類卒業。大学卒業後は自動車メーカー、株式会社SUBARUに就職し、販売促進や営業を経験。その後、海外留学などを経て、地元・富山県にUターンを決意。富山市役所の職員として、福祉、法務、内閣府派遣、フィリピン駐在、SDGs推進担当を歴任。SDGsの推進にあたり、カードゲーム「2030SDGs」のファシリテーションを通して、体感型の研修コンテンツの可能性に魅せられ、プロジェクトデザインへの転職を決意。ファシリテーターの養成、ノウハウの高度化などを通して社会課題の解決を目指す。富山県滑川市在住、地元・富山県滑川市総合計画審議会委員。
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