カーボンニュートラルやSDGsなどの社会課題に関する取り組みの本質を伝える4つのポイント(ビジネスゲーム開発日誌 Vol.41)

社会課題に関するゲームを作成していると、ものごとが一気に広まる “ティッピングポイント” を目の当たりにすることがあります。

ティッピングポイントとは、物事が急激に流行・普及する転換点のことです。

私は企業の採用支援と学生の就職支援を行うベンチャー企業で働いていた20代の時、「大学の授業がケースやワークを活用した実践的なものであればいいのに!」「学生時代から一部でも仕事体験をしていれば、大学の授業ももっと面白く受けられるのに!」と考えていました。

そこで、様々な企業に対して、当時はまだ珍しかったインターンシッププログラムの開発を提案しました(今のビジネスゲーム制作も、この仕事の延長線上にあると思っています)。

私の所属していた会社では2004年に “1dayインターンシップ” という1日でインターンシップを経験できるプログラムを開発するなど、インターンシップの普及に努め続ける中で、徐々にインターンシップを実施する企業が増えていきました。

「企業の魅力を効果的に伝え、良い学生を採用したい」という企業側の思惑と、「就職活動を通じて学びの機会を提供したい」という私たちの思惑、「企業のことを理解し、自分の力を高めたい」という学生。3者のニーズがマッチングしたのです。

そして、インターンシップは日本全国に広がりを見せ、就職サイトにインターンシップを掲載することが当たり前になった頃(2007年~2008年頃でしょうか)になると、「インターンシップはけしからん!」というインターンシップに対するネガティブな意見が、官や学、実情を知らない有識者たちから寄せられるようになりました。

これはインターンシップを開催する産業側(企業側)に叩かれるだけの理由があったと思います(※)。

※例えば、インターンシップが広まると同時に、インターンシップとは名ばかりの就職支援や会社説明会的な内容が爆発的に増えたことが理由の1つに挙げられます。

ただ、幸いなことにインターンシップは「本質的に価値があること」だったので、批判にさらされる逆境を乗り越え、現在では産官学が連携して緩やかなルールも定められ、より良い形が出来つつあると感じています。

これはインターンシップという概念や取り組みが社会に普及していく過程で起きた出来事ですが、どんな物事(新しい概念や言葉、商品や取り組み)も、ティッピングポイントを超えると社会全体に爆発的に広がりを見せるとともに、その物事に対するネガティブな意見や報道も急激に増加する傾向にあります。

ネガティブな意見が出てくるということは「言っていること」と「やっていること」のズレが大きくなっていることの兆しです。

例えば、インターンシップの目的は良質な仕事理解・就業体験だったものが、採用の一手段となり、仕事理解や就業体験につながらないものが増えた(あるいはインターンシップの名のもとに実質無賃金のアルバイトのような仕事が増えた)ことで「インターンシップはけしからん!」というネガティブな意見が増加していきました。

ただ、その物事に関わる当事者としてはネガティブな声に一喜一憂せず、自分自身を振り返りながら、本質的に正しいことを追求していけばそれで良いのだと思います。

その上で、本質的に価値があり正論と言えることであっても、それが「強い押し付け」や「実現不可能な夢想」に感じられてしまっては、異なる立場から反論したくなる人が出てくるのは当然のことと思います。

例えば、私自身もSDGsの「誰ひとり取り残さない」という言葉には多少の違和感を覚えます。他の人が使うのは別に構わないのですが、目の前の人、1人も救えない経験をしている自分がその言葉を吐くのは、綺麗事を述べているだけのようにも思うからです。

社会課題に関する取り組みを伝える4つのポイント

今、開発を進めている新作ゲーム「2050カーボンニュートラル」についても、「カーボンニュートラル」というテーマの伝え方を慎重に見定めないといけないと感じています。

大気中のカーボンの増加が温暖化と気候変動を招いているのは、科学的に事実と言えるでしょう。そして、温暖化と気候変動によって世界の各地で問題が起きていることもまた事実です。

しかし、だからといって「脱炭素」という正義を振りかざして他の人にそれを伝えても、十分伝わらないケースはこれからたくさん出てくるでしょう。

「カーボンニュートラルを目指す取り組みは、ビジネスにおける機会です!」

このような言い方はできるでしょうし、それに意を得て取り組み始める人もいると思います。しかし、現実的にカーボンを排出せざるを得ないビジネスをしている人にとって「ビジネスにおける機会」なんて言葉を吐く私は、自らの生活を脅かすアジテーター(扇動者)のように見えると思います。

では、「カーボンニュートラルを目指す取り組みは、多くの人や産業においてリスクマネジメントになります」と伝えればどうでしょうか。何らかの産業に従事する人にとっては、この伝え方の方が受け止めやすいかもしれません。一方、多くの市民にとっては「リスクマネジメント」という言葉はピンとこないかもしれませんね。

「相手に本質が伝わるように話す」のは、とても重要なスキルだと思います。

改めて、社会課題に関するテーマを掘り下げる時には、次の4つのポイントがとても大事だと感じます。

  1. 自分の言葉と行動に矛盾がないようにすること
  2. 一方向からだけものごとを見ず、必ず複数の視点から見ること
  3. 事実をもとに考えること
  4. 相手に伝わりやすい言葉で表現すること

皆さんなら、カーボンニュートラルやSDGsの取り組みの大切さを、「誰に」「どのように」伝えていきますか?

執筆者プロフィール

福井 信英

富山県立富山中部高等学校卒業、私立慶應義塾大学商学部卒業。 コンサルティング会社勤務、ベンチャー企業での営業部長経験を経て富山にUターン。2010年、世界が抱える多くの社会課題を解決するために、プロジェクト(事業)をデザインし自ら実行する人を増やす。というビジョンのもと、株式会社プロジェクトデザインを設立。現在は、ビジネスゲームの制作・提供を通じ、人材育成・組織開発・社会課題解決に取り組む。開発したビジネスゲームは国内外の企業・公的機関に広く利用され、英語版、中国語版、ベトナム語版等多国語に翻訳されている。課題先進国日本の社会課題解決の実践者として、地方から世界に売れるコンテンツを産み出し、広めることを目指す。 1977年生まれ。家では3人の娘のパパ。

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