良質な “問い” を立てるための3つのポイント
- 最終更新日:2023-12-22
プロジェクトデザインの大槻です。
私たちプロジェクトデザインでは、探究学習ツールとして「カードゲーム×探究学習プログラム」を開発・リリースしました。
これは、社会や組織の問題解決に必要なスキルを「総合的な学習(探究)の時間」の中で学ぶ機会を作るため、これまで培ってきた研修ノウハウを盛り込んだものです。
この記事では、ブランドマネージャーの大槻が 「カードゲーム×探究学習プログラム」を通して実現したいことをお伝えします。
前回の記事で、探究学習が抱える2つの課題を紹介しました。
- 生徒が主体的に取り組むためのカリキュラム設計が難しい
- 調べ学習だけで終わってしまう
この2つの課題に共通する原因は、「生徒自身が “問い” を立てられていないこと」です。
では、生徒自身が良質な “問い” を立てるためには、どうしたら良いのでしょうか。
そこで、現役の先生をはじめとする教育関係者30名にヒアリングし、良質な “問い” を立てるためのポイントを3つ見つけました。
- 自ら興味関心が持てる、簡単(具体的で身近)なテーマであること
- 多様な答えが導き出せること
- 深掘りができること
今回は、この「良質な “問い” を立てるための3つのポイント」を紹介します。
良質な “問い” を立てるための3つのポイント
1.自ら興味関心が持てる、簡単(具体的で身近)なテーマであること
まず問いを立てる上で重要なのは、「自分事に置き換えることができる、具体的で端的なテーマであること」です。
なぜなら、問いのテーマが漠然としていて抽象度が高く実生活に馴染みのないものだと、まず何から始めたら良いかが分かりません。そのまま学習を進めても表面的な情報収集に留まり、課題を掘り下げ整理分析をするまでに至らないのです。
具体例を1つ挙げると、「SDGsを達成するために私には何ができるだろうか」と問いを立てたとします。
この問いに対し、「楽しい!」と興味関心を持って取り組める生徒もいれば、「何から取り組めば良いか分からない、何だか難しい…」と感じる生徒もいるでしょう。これはSDGsという漠然とした大きなテーマに対し、関心をもって深掘りできるかが生徒によって異なるからです。
問いは大きすぎず小さすぎず、より具体的に、自己の在り方や生き方とつながる関心事をテーマにすることが重要です。
2.多様な答えが導き出せること
では1つ目のポイントを押さえた上で、さらに必要な要素とは何でしょうか。それは「問いに対し、様々な解釈から多様な答えが導き出せること」です。
そもそも探究学習とは「答えのない “問い”」に自らアプローチし、そのプロセスから判断力や思考力、対話力や表現力などの力を養う学習方法です。
そのため探究学習で「答えのある “問い” 」に向き合うと、何が正しい答えなのか正解探しに走ってしまい、答えがわかるとそこで思考を止めてしまいます。その結果、探究学習で期待される「自らが納得できる答えを生み出し、自分の可能性を拡げていく」学習効果が薄まってしまう可能性があるのです。
3.深掘りができること
そして2つ目から繋がる最後のポイントは、「問いの答えを深く掘り下げていこうと思えばどこまでも掘り下げられる可能性があること」だと考えます。
答えが簡単に導き出せてしまう、もしくは予め自分が持っていた意見が答えとして結びつけられる問いでは、そこで探究学習が止まってしまう恐れがあります。
良質な探究学習を行うには、今持っている知識や経験をさらに深く追求し掘り下げ、新しい可能性を見つける、まさに「宝探し」のようなプロセスが必要だと言えます。
3つのポイントを押さえられるカードゲーム
カードゲームを使えば、3つのポイントを全て押さえられる!
さて、ここまで「良質な “問い” をつくる3つのポイント」をご紹介しました。
- 自ら興味関心が持てる、簡単(具体的で身近)なテーマであること
- 多様な答えが導き出せること
- 深掘りできること
以上の3つを押さえた “問い” を立てることが自ら探究し続けるプロセスを生み、その時間を積み重ねることが生徒自身の成長に繋がるのだと考えます。
ところが、以上のことを踏まえ「良質な “問い” をつくる3つのポイントを全て押さえましょう!」と提起しても、子どもたちが自ら良質な “問い” を生み出すのは容易ではありません。
そこでご活用いただきたいのが、私たちプロジェクトデザインのご提案する「カードゲーム×探究学習プログラム」です。このプログラムでは、3つのポイントを押さえた “問い” を立てるサポートを、ゲーム体験を楽しみながら行っていきます。
3つのポイントを押さえられるカードゲーム
ここで「カードゲーム×探究学習プログラム」で実施いただけるゲームの1つ、「CHANGE FOR THE BLUE」 カードゲームをご紹介します。
「CHANGE FOR THE BLUE」カードゲームは、海洋ごみ問題について考えるゲーム型のアクティブラーニング学習教材です。小学生高学年から中学生向けの授業でご利用いただけます。本ゲームを通して、海洋ごみ問題を自分事として理解することで “海洋ごみを減らす行動” の第一歩となることを期待しています。
参考:「CHANGE FOR THE BLUE 」カードゲーム
「CHANGE FOR THE BLUE 」カードゲームの中には、海洋ごみを減らすプロジェクトを示す128種類のアクションカードが存在します。カードに書かれた行動を選択・実行すると「結果カード」が渡され、それと同時に地域の状況を表すメーター(市民意識/便利さ/技術/ごみ・汚れ)が変化します。つまり、参加者の行動によりゲーム結果が変わってくるのです。
アクションカードには、「仕事カード」と「生活カード」の2種類があり、それぞれ身近な行動をカードで表現しています。
〇「仕事カード」の一例
- 環境にやさしい肥料を使おう
- ペットボトルから洋服を作ろう
- ドア付きのごみ捨て場を作ろう
〇「生活カード」の一例
- マイバッグを使おう
- 夜のうちにきちんとごみを出そう
- つめかえ用の商品を使おう
では、実際に「CHANGE FOR THE BLUE 」カードゲームを用いた探究学習プログラムを実施した場合、どのように問いが立てられるのでしょうか。良質な “問い” をつくる3つのポイントに当てはめながら解説していきます。
1. 自ら興味関心が持てる、簡単(具体的で身近)なテーマ
先述したように、ゲーム体験では海洋ごみを減らすプロジェクトを128種類のアクションカードの中から選択し実行します。
探究学習プログラムでは、ゲーム体験後、これらのカードの中から最も気になるカードを「1枚だけ」生徒に選んでもらいます。
ポイントは、この「1枚だけ選ぶ」ということです。「たった1枚を選ぶ」という簡単な行為ですが、ゲーム体験中に最も印象に残ったもの、気になったものなど、自分自身にとって「これだ」という言えるカードを選ぶことが、判断力や思考力を伸ばすことに繋がると考えます。
また、後述する「選んだカードから問いを作っていく」というプロセスを踏むにあたり、問いづくりがとても簡単に行えるのもポイントの1つです。
2. 多様な答えが導き出せること
では、多様な答えを導き出すためには、その選んだ1枚のカードからどのように発展させていけばよいのでしょうか。
例えば、「マイバックを使おう」という生活カードを選択したとします。
このカードから思いつく限り “問い” を作ってみます(ほんの一例です)。
- この町でマイバッグを持っている人は、何人いるのだろうか
- マイバッグを持参し、レジ袋を使わない買い物客はどのくらいの割合なのだろうか
- マイバッグの普及は、本当にプラスチックの使用削減につながっているのだろうか
- マイバッグは本当に環境に良いのだろうか
このように、たった1枚のカードから多様な問いが生まれ、その問いの答えを導き出すために様々なアクションが想起される。これこそがポイントの2つ目を抑えた「様々な解釈から多様な答えが導き出せる問い」なのです。
3. 深掘りができること
多様な答えを導き出せる問いを立てた後は、どのように進めていけば良いのでしょうか。
例えば、上記に挙げた問いの中で「この町でマイバッグを持っている人は、何人いるのだろうか」について取り組んだとします。単純に考えると、この問いの答えは「〇〇人!」となりそうですが、どのように調べ証明していこうかと頭を捻りそうですね。
そこで「もっと具体的に調べていこう!」とすると、このように発展する可能性があります。
- 人数ではなく割合で出す場合、何人に調査すれば良いだろうか
- どの店舗や場所で調べれば良いだろうか
- マイバックを持参した人だけでなく、マイバックを所持しているが買い物の時に持参しなかった人はどのくらいの割合だろうか
- マイバックを持参しなかった理由は何だろうか
このように、1つの問いに対し様々な角度から考えることによって、新たな問いや仮説が生まれ続けます。そしてさらに深く掘り下げていくことで、取り組むべき本質的な “問い” にたどり着くと考えます。
ちなみに、私、大槻はこの記事を書きながら「地元の人が毎日持ち歩きたくなるような、愛着のあるマイバックのデザインや機能はどういったものなのだろうか」といった問いにたどり着きました。
専用のワークブックで問いづくりと探究学習をサポート
このように「カードゲーム×探究学習プログラム」では、カードゲームの実施から良質な問いを生み出すプロセスを全面的にサポートします。
さらに、効果的に学習を進めるため教材として専用の「探究学習ワークブック」を活用していきます。
「探究学習ワークブック」は探究学習をサポートする専用教材です。ゲーム結果を踏まえた具体的な「自ら取り組みたい(チャレンジしたい)こと」の表現を手助けする役割があります。
「探究学習ワークブック」は、問いづくりのサポートだけでなく探究学習のサイクル(課題設定→情報収集→整理・分析→まとめ・発表)が回るように設計しているので、生徒の自発的な “問い” を深める行動を後押しします。
カードゲームの楽しさやワクワク感から、生徒一人ひとりの興味関心を引き出し “問い” の形に整えていく。そんな、生徒も先生もワクワクしながら問いを深められる探究学習を、「カードゲーム×探究学習プログラム」で体験してみませんか?
ご案内
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
「カードゲーム×探究学習プログラム」を体験したいと思ってくださった方は、是非、ご体験ください。
また、カードゲームを活用した研修やワークショップによって、お客様(クライアント様)の解決策を提案するコンサルタントや、ゲーム研修を運営する研修講師、カードゲームコンテンツを世に広げるプロジェクトマネージャーなど、私たちと一緒に働いてくださる仲間を募集しております。
詳細は、こちらをご覧ください。
この記事の著者について
大槻 拓美(おおつき たくみ)
長野県伊那市出身、2001年4月伊那市役所入庁。徴税業務、結婚支援業務、地方創生担業務などを担当。プライベートでは高校生や大学生が地域と関わる活動の支援や、地区の交通安全協会会長を担うなど幅広く地域活動に参加。また、5,000人以上が参画する公務員限定SNSコミュニティ「オンライン市役所」で、LIVE配信 “庁内放送” のパーソナリティを務めた。カードゲームのファシリテーターとして高校や大学、企業などの研修会にも多数登壇。こうした活動を通じてゲーム開発元の (株)プロジェクトデザインの経営理念に共感し、2022年4月に同社へ転職。カードゲーム「moritomirai(モリトミライ)」「CHANGE FOR THE BLUE」カードゲームなどのファシリテーターを務める。
- 富山県滑川市総合計画審議会委員(2023年度~)
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