自己効力感を高めるための具体的な方法

自己効力感とは何か。

その意味と、自己効力感を高めるための具体的な方法について、分かりやすく解説します。

Contents(目次)

自己効力感とは

自己効力感とは、自分の行動に関する可能性の認知です。自己効力感の高い人は「自分ならできる」と考え、自己効力感の低い人は「自分にはできない」と考えます。

この自己効力感という概念は、社会的学習理論を体系化したアルバート・バンデューラ(Albert Bandura)氏によって1977年に提唱されて以来、関連する様々な研究が進められています。

ビジネスシーンにおいても、人的資本経営の流れの中で人材のレジリエンス(困難を乗り越えるしなやかさ)を高める取り組みが注目されていますが、このレジリエンスを構成するコンピテンシー(行動特性)の一つに、自己効力感が位置付けられています。

※レジリエンスの詳細を知りたい方は、ぜひ下記の記事をご覧ください。

自己効力感と自己肯定感の違い

自己効力感と自己肯定感。この2つの言葉は似て非なるものです。

自己効力感が自分の行動に関する可能性の認知(知覚・認識)であるのに対して、自己肯定感とは自分自身のことを好ましく思う感情(気持ち)です。

感情と認知が全くの別物であるように、自己効力感と自己肯定感は全く異なる概念として捉える必要があります(自己肯定感が高い人でも自己効力感の低い人はいます。同様に、自己肯定感が低い人でも自己効力感の高い人はいます)。

自己効力感を高める4つのアプローチ

自己効力感は直接的達成経験・代理経験・言語的説得・生理的状態の4つの情報源をもとに形作られていくものと考えられています。ゆえに、自己効力感を高める観点では、これらの4つの情報源へのアプローチをすることが有効です。

1. 直接的達成経験

直接的達成経験という言葉は、ビジネス的には「成功体験を得ること」と言い換えられます。自分が何かに挑戦して成功する。この成功体験こそが、自己効力感に最も強力に作用します。

頑張れば成功することを身をもって経験することで、次の挑戦の際にも自分にはできる(なぜならば、頑張れば成功する体験をしてきたからだ)という自信が芽生えます。

なお、失敗経験であっても、それを糧にすることで長期的には成功体験に繋がるという意味において、自己効力感を高める機会になり得ます。

2. 代理経験

代理経験とは、他者の行動を観察することを通じて「自分にもできる」という認識を醸成するアプローチです。

一般論として、直接的達成経験には劣りますが、優れた代理経験は、直接的達成経験に勝るとも劣らない強固な自己効力感を育むこともあります。

3. 言語的説得

言語的説得は、第三者による励ましや承認などの言葉の力で「自分にもできる」という認識を導くアプローチです。

ただ、この言語的説得のみで高められた自己効力感は、経験を通じて得られた自己効力感と比べて脆い傾向にあります。実際の困難を前にすると、たやすく消えてしまうことが懸念されるため、他のアプローチと併用することが推奨されます。

4. 生理的状態

自己効力感と生理的状態(心や体の状態)はリンクしています。自己効力感という認知は、不安が強い状況や疲労感が溜まっている状態、ストレス環境下などの影響を受けます。

よって、心身ともに良好な状態を維持することが、自己効力感の向上にも繋がると言われています。その上で、大切なことは本人が自らの生理的状態をどのように認知するかです。

追い込まれた状況下にある方が能力を発揮できるタイプの人にとっては、ストレスを受けている状態の方が自己効力感が高まることもあります。

自己効力感を高める具体的な方法

OJT

自己効力感を高める上で最も効果的なアプローチは「直接的達成経験」であり、その観点でOJT(On-the-Job Training)は、最良の方法であると捉えられます。

新入社員・若手社員が良質な成功体験を重ね、自己効力感を高められるように、直接的、かつ、密にOJTでサポートをすることが推奨されます。

良質な成功体験とは、本人の努力の積み重ねによって困難を乗り越える感覚を掴める体験です。Oストレッチ目標を設定する・一定程度の裁量を渡す(自分で判断してもらう)などの適度な負荷をかけることが重要です。

なぜなら、簡単に実現できてしまう成功体験は、自分なら簡単にできるという認識を生むことに繋がるからです。そうやって築かれた自己効力感は、本当の困難の前には全く通用しません。

1on1ミーティング

1on1ミーティングには、OJTで不足する部分を補完する役割があります。

仕事がコミュニケーションの中心になりがちなOJTとは違い、をコミュニケーションの中心にしやすい1on1だからこそ、相手の生理的状態のケアや言語的説得(励ましや承認)のアプローチを取りやすくなります。

1on1ミーティングのポイントについては下記の記事をご覧ください。

ビジネスゲーム

私たちプロジェクトデザインが開発・提供するビジネスゲームは、ゲームの原則や要素をゲーム以外の物事に応用する「ゲーミフィケーション」ではなく、現実世界の原則や要素をゲームに落とし込む「ビジネスシミュレーション」です。

現実の世界では、活動の結果と経験を得るためには多くの時間と労力が必要になりますが、ビジネスゲームでは、短時間で活動の結果と経験(成功体験や失敗体験)を得ることができます。

ビジネスゲームを通じた「高速経験学習」は自己効力感の醸成にも役立てられます。

心理的安全性の醸成

仕事とはチームで行うものである以上、チームに対する信頼感や安心感が、個人の自己効力感に少なからず影響を及ぼします。

自己効力感を高める観点においては、個人が困難に立ち向かっていく上でリスクのある行動を取りやすくすること、つまり、心理的安全性(※)を高めることが重要です。

※心理的安全性とは、対人関係においてリスクある行動を取ったときの結果に対する個人の認知の仕方、つまり、「無知、無能、ネガティブ、邪魔だと思われる可能性のある行動をしても、このチームなら大丈夫だ」と信じられるかどうかを意味します。

心理的安全性を高める方法については下記の記事をご覧ください。

この記事の著者について​

執筆者プロフィール

池田 信人

自動車メーカーの社内SE、人材紹介会社の法人営業、新卒採用支援会社の事業企画・メディア運営(マーケティング)を経て、2019年に独立。人と組織のマッチングの可能性を追求する、就活・転職メディア「ニャンキャリア」を運営。プロジェクトデザインではマーケティング部のマネージャーを務める。無類の猫好き。しかし猫アレルギー。

監修者プロフィール

亀井 直人

鳥取県立鳥取東高等学校卒業、福岡工業大学情報工学部情報通信工学科卒業。SE(インフラエンジニア)として長く経験を積む。プロジェクト遂行におけるチームのパフォーマンスを引き出すためにファシリテーション技術の習得・実践を続ける。特定非営利活動法人日本ファシリテーション協会では役員(2016年~2021年理事、2019年~2021年副会長)を務める。富士ゼロックス福岡在籍中にSDGsとビジネスゲーム「2030SDGs」に出会う。ビジネスゲームが持つ力の素晴らしさに触れ、2020年に研修部マネージャーとしてプロジェクトデザインに合流する。活動を通じて関わり合う方々との対話を楽しみにしている。鳥取県鳥取市出身。蟹と麦チョコが大好き。

  • 経済産業省認定情報セキュリティスペシャリスト
  • PMP(Project Management Professional)
  • NPO法人 SDGs Association 熊本 監事
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