カードゲーム「2050カーボンニュートラル」で体感できる「排出削減と経済成長の絶妙なバランス」
- 最終更新日:2024-06-19
私たちプロジェクトデザインは、カードゲーム「2050カーボンニュートラル」を通してカーボンニュートラルについて理解を広げ、行動を促進するプロジェクトを推進しています。
ブランドマネージャーの竹田がプロジェクトを推進しながら出会った方・出来事・文献/ブログ/動画を通じて、カーボンニュートラルについて考えたことを言葉にし、ブログという形で発信しています。
この記事を読まれた方にカードゲーム「2050カーボンニュートラル」を体験してみたいと思っていただけたら幸いです。
参考:カードゲーム「2050カーボンニュートラル」ブログ一覧
今回お届けする内容は「カードゲーム『2050カーボンニュートラル』で体感できる『排出削減と経済成長の絶妙なバランス』」です。
それではどうぞ。
カードゲーム「2050カーボンニュートラル」で体感できる「排出削減と経済成長の絶妙なバランス」
プロジェクトデザインの竹田です。
経済産業省が「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」で謳っている「経済と環境の好循環」。
現実の日本においては、温室効果ガス排出削減の取り組みが経済成長と両立することもあれば、排出削減コストなどの環境投資が企業収益を圧迫することもあり得ます。
今回の記事は、カードゲーム「2050カーボンニュートラル」で排出削減と経済成長の絶妙なバランスを体感できます、というお話です。
竹田 法信(たけだ のりのぶ)
富山県立富山中部高等学校卒業、筑波大学第三学群社会工学類卒業。大学卒業後は自動車メーカー・株式会社SUBARUに就職し、販売促進や営業を経験。その後、海外留学などを経て、地元・富山県にUターンを決意。富山市役所の職員として、福祉、法務、内閣府派遣、フィリピン駐在、SDGs推進担当を歴任。SDGsの推進にあたり、カードゲーム「2030SDGs」のファシリテーションを通して、体感型の研修コンテンツの可能性に魅せられ、プロジェクトデザインへの転職を決意。ファシリテーターの養成、ノウハウの高度化などを通して社会課題の解決を目指す。富山県滑川市在住。
温室効果ガス排出削減の意識の高まり
温室効果ガスの排出削減に向け、世の中の動きが加速しています。
例えば、2023年11月14日、国連気候変動枠組み条約事務局は、各国が独自に策定した温室効果ガスの排出削減目標を達成しても、2030年の排出量は2019年比で2%減にとどまるとの報告書を公表したところです。
参考:温室ガス削減、各国独自の目標達成でも2023年世界排出量は19年比2%減どまり|読売新聞
また、国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が発出しているグラフを見ても、産業革命前からの気温上昇幅を2℃または1.5℃に抑えようとする場合には、今すぐ大幅に削減する必要があることが分かります。
図. カードゲーム「2050カーボンニュートラル」研修資料より
温室効果ガスの排出を削減するためには、一般的には化石燃料の使用をやめ、再生可能エネルギーにシフトしていくことが求められます。
しかし、私たちのイメージとして「再生可能エネルギーを導入するといった環境に良いことをしようとするとお金がかかる」と感じている人も多いと思います。
では、実際に再生可能エネルギー(※以下、再エネ)は高いのでしょうか?
世界に目を向けると「再エネは安い」
こうした排出削減の意識が高まる中、世界各国に目を向けると、再エネが最安の国や地域が増えていることが分かります。
次の図は、各国の新規建設発電所における最低発電コストを示しています。国名の下に表示されたドル値は、最安技術の1MWhあたりの平準化コストです。
風力発電(Onshore wind、Offshore wind)や太陽光発電(Utility PV)といった再エネが最安の国や地域が増えていることが分かります。
では、なぜ世界各国では再エネの発電コストが下がっているのでしょうか。それを示しているのが、次のグラフです。
累積導入量が増えるに従い、1ワットあたりのコスト($/W)が低下していることが分かります。
つまり諸外国では、温室効果ガスの排出量がより少ない再エネに投資することで、排出量の削減と経済発展が両立しやすい環境があるといえます。
一方で日本では、石炭火力が最安となっており、排出削減と経済発展が両立しやすいとは言えない状況にあります。
その理由としては再エネのプロジェクトが大規模となり、規模に対して経済の低コスト化が実現できない(再エネに適した平地が少ないなどの地理的な制約がある)、との説があります。
参考:No.210 世界の均等化発電コスト(LCOE): 日本の再エネの高コスト要因とは – 京都大学大学院 経済学研究科 再生可能エネルギー経済学講座
排出削減を「しても」「しなくても」、どのみち経済損失?
このように、日本ではまだ「排出削減といった気候変動対策が経済損失につながる」側面があるのです。
しかし、このまま排出削減をしないとすれば、気候変動の被害による経済損失を被ることになります。つまり、排出削減を「しても」「しなくても」、経済損失につながる、と言えます(何とも世知辛いっすね…)。
2006年10月イギリス政府は、イギリスのスターン博士が作成した気候変動問題の経済影響に関する報告書「スターン・レビュー」を公表しました。
参考:気候安全保障(Climate Security)に関する報告 6. スターン・レビュー概要
参考:記者発表2007年2月16日「スターン・レビュー『気候変動の経済学』に対するコメント(お知らせ)」|国立環境研究所
図. カードゲーム「2050カーボンニュートラル」研修資料より
スターン・レビューの要点は、以下となります。
- 気候変動対策を起こさない場合の被害損失は、GDPに対して5%から20%になる
- 今すぐに気候変動対策に向けた行動を起こせば、その対策コストはGDPの1%程度と高くはないため、早期に気候変動対策は経済的に有利
これらのことは、カードゲーム「2050カードゲーム」においても体感することができます。
例えば、温室効果ガスが大気に大量に蓄積すると、仮に温室効果ガスの排出が削減されたとしても、蓄積量は長期にわたって大きく変動しにくくなります。
このような状況の場合、カードゲーム「2050カーボンニュートラル」では、ゲームのファシリテーターは、気候変動による経済損失として、参加者から資金を回収します。
ファシリテーターが回収する資金は、およそ、スターン・レビューの被害損失の範囲内になっています。そして、今すぐに大幅に排出削減をする必要がある点も、両者に共通します。
つまり、ゲームを通して環境と経済の好循環やトレードオフを体感できるのです。
私たちが生み出す可能性
幸いにも、企業がカーボンニュートラル(脱炭素化)を事業計画に反映させることで、投資家から資金調達しやすくなる状況が生まれています。
図. カードゲーム「2050カーボンニュートラル」研修資料より
<経済と環境の好循環が起こる連携>
企業はカーボンニュートラルへのシフトによって調達した資金で技術革新を起こしていく
↓
政府や自治体は建築物省エネルギー法や東京都太陽光パネル条例といった形で政策反映させる
↓
市民は気候政策を支持する
こうした連携が起こることによって、経済と環境の好循環のシナリオが生まれていきます。逆に連携が起こらないと、短期目線・部分最適な悪循環に陥ります。
ゲームでは、この好循環/悪循環が共に起こるように設計しています。
カードゲーム「2050カーボンニュートラル」で体感できること
本記事の文脈において、カードゲーム「2050カーボンニュートラル」では、以下のことを体験できます。
- 環境(排出削減)と経済の好循環、相乗効果
- 環境(排出削減)と経済のトレードオフ(二律背反)
- 企業と政府・市民などの協働歩調、連携
- 気候変動の緩和策と適応策、これらを支えるテクノロジーの可能性
是非、カードゲーム「2050カーボンニュートラル」を体験し、環境と経済の好循環やトレードオフを味わってみてください。
ご案内
カードゲーム「2050カーボンニュートラル」は、過去から現在にかけて私たちが行ってきた様々な活動が地球環境にどのような影響を与えているのかをマクロ的に俯瞰することによって、私たちの価値観や考え方に気づき、行動変容に働きかけるためのシミュレーションゲームです。
ゲームでは、参加者が1つの組織のメンバーとして1~4人のチームを組み、 他のチームと様々な交渉を行いながら、組織の活動とプライベートの活動を行います。ある組織では獲得資金を増やすことを目指し経済活動を行っていきます。また、ある組織では排出削減量の目標に向かって環境活動を行っていきます。
こうした活動を通じて組織の目標達成を目指すプロセスにおいて、私たちの世の中のカーボンの状態がどのようになっていくのかをシミュレーション(模擬実験)します。
このゲーム体験を通して「なぜカーボンニュートラルが叫ばれているのか?」、そして「そのために、私たちは何を考えどう行動するのか?」に関する学びや気づきを得ることができます。
体験会の詳細はこちら。
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