【事例インタビュー】従業員同士が困りごとを相談し、助け合える関係を築く(クーパーサージカル・ジャパン)

企業名 :クーパーサージカル・ジャパン株式会社(旧社名 オリジオ・ジャパン株式会社)
業界業種:医薬品・医療機器
事業内容:婦人科系・不妊治療の関連製品・サービスの提供、医療用機械器具卸売業
従業員数:59名(2024年1月時点)

課題
  • 業務において部署間の関わりが少なく、横のコミュニケーションを促進したい。
  • 業務上の悩みや困っていることを相談できる、助け合える関係を築いてほしい。
解決策
  • 当事者意識を持ち、助け合える関係を築くため、社長と全従業員でビジネスゲーム「地域共生社会」を実施する。
  • 自分が幸福でも周りにいる誰かが困っている状況を体験し、会社の中で助けを求めたいけど声を上げられない人の気持ちを受け止める。
効果
  • ゲーム体験後のアンケートで、9割以上が「とても良かった」「良かった」と回答。
  • 困りごとを相談し、助け合える関係を築くため、従業員一人ひとりの意識変革ができた。

本稿では、ビジネスゲーム「地域共生社会」を活用した研修事例をご紹介します。

2023年11月16日にクーパーサージカル・ジャパン株式会社(旧社名 オリジオ・ジャパン株式会社)の皆様に実施した内容です。

クーパーサージカル・ジャパン株式会社は、ニューヨーク証券取引所に上場しているクーパーカンパニーの子会社である、米クーパーサージカルカンパ二ーの日本法人です。婦人科系・不妊治療領域を専門とするグローバル企業で、体外受精の全プロセスをカバーする製品やサービスを提供しています(コンタクトレンズで知られるCooper Visionは兄弟会社です)。2024年4月1日に、社名がオリジオ・ジャパン株式会社からクーパーサージカル・ジャパン株式会社に変更になりました。 

同社では、毎年11月の期初にキックオフイベントを開催しており、プロジェクトデザインのビジネスゲームをこれまでに3回実施いただいております。今回の研修テーマは「貢献」でした。

なぜ「地域共生社会」をお選びいただけたのか、そしてどんな効果が得られたのか、今後の展望などについてお話を伺いました。

<お話を伺った方>

クーパーサージカル・ジャパン株式会社 代表取締役社長 藤田 信行様
クーパーサージカル・ジャパン株式会社 薬事品質保証部スペシャリスト 鈴木 亜希子様
クーパーサージカル・ジャパン株式会社 アカウンティング オフィサー 南 美佳子様

クーパーサージカル・ジャパン株式会社 代表取締役社長 藤田 信行様(右)

<企業プロフィール>

クーパーサージカルカンパニーは、「健康な女性・赤ちゃん・家族がいる世界を創ること」をビジョンとし、不妊に悩むカップルのニーズに応えるサービスを提供している会社です。体外受精や着床前遺伝子検査サービス受託分野において、グローバルにビジネスを展開する業界のリーディングカンパニーです。

地域共生社会とは

今回、クーパーサージカル・ジャパンの皆様に体験いただいたビジネスゲームは「地域共生社会」です。

「地域共生社会」とは、世代や分野を超えてつながり合い、住民一人ひとりの暮らしと生きがい、地域をともに創っていく社会のことです。本ゲームは、地域共生社会を考えるきっかけとして開発されましたが、会社や仕事においても大切な「助け合える関係」について従業員一人ひとりの意識変革ができます。

参加者の皆様には、全員が「自分らしく生きがいを持って暮らす社会」を目指し、様々なアクションに取り組んでいただきます。ゲームでは現実世界と同様に、自身や家族の病気、親の介護などのライフイベントが起こります。これは、実際に働いている中で起こる「思わぬことで不調になってしまう出来事」を表しています。その結果、障害・貧困・疾病状態になる場合があり、一度この状態になると、周囲の支援がないと抜け出すのは難しいことに気付きます。

また、周囲の人は、自分が幸福な時は他者が困っている状況に気づきにくいことや、周りにいる誰かが疾病・障害・貧困に苦しみ、取り残されてしまっている状況を体験することで、周りに目を向けること・必要に応じて支援することの大切さを理解します。

コミュニケーションのきっかけとなるコンテンツを探していた

ー今回、研修のテーマを「貢献」とされた背景を教えてください。

藤田様:「貢献」というテーマは、クーパーサージカル・ジャパンとしての一体感を高めるために、2024年の今期日本法人で設定したものです。我々の会社は外資系で、直接のレポート(報告)先は海外となっている部署もあります。他部署との関わりが少なく、縦割りの関係が強いため、部署間のコミュニケーションを促進させたいと考えました。従業員一人ひとり、日々悩みや困っていることがあるかと思いますので、お互いに助け合える関係を築いてほしいと思っています。

ー「お互いに助け合える関係を築くこと」を目的として研修を実施されたのですね。この関係性が築かれていないと、会社ではどのような問題が起こるのでしょうか。

藤田様:他者への関心が薄まると思います。従業員同士の仲が悪いわけではありませんが、我々の会社はレポートライン(指揮命令系統)が独立している部署もあり、自分から踏み込んでいかないとコミュニケ-ションが促進されない部分があります。

鈴木様:リモートワークをしている人や、営業に出ている人など、全従業員が揃うのは月に数回程度です。名前と顔は知っていても、次の一歩を踏み出せる「コミュニケーションのきっかけ」が掴めていないように感じていました。

南様:コミュニケーションの機会が少ないと、他の部署が何をやっているのか、どれくらい忙しいのかが分かりません。関係性が築かれていないと、「今は忙しい時期だからMTG時期をずらそう」などの気遣いをすることすらできなくなってしまいますね。

ービジネスゲーム「地域共生社会」をお選びいただいた理由や、弊社に複数回研修をご依頼いただいている理由を教えていただけますか。

南様:今回は短い準備期間の中でより良い研修にしようと考え、過去にも研修の実績があるプロジェクトデザインさんに依頼しました。

鈴木様:実は私が「地域共生社会」にとても興味を持っていました。今年はテーマが「貢献」ということもあり、勝ち負けなど順位をつけるものではなく、チームみんなで良くなっていこうと協力するコンテンツを探していたところ、ビジネスゲーム「地域共生社会」を見つけました。

助けを求めたいけど、声を上げられない人の気持ちを受け止める

ー今回、研修を実施されていかがでしたか。

鈴木様:「地域共生社会」のゲーム体験では、立ち話感覚で話しかけやすく、色んな人とコミュニケーションを取ることができました。「みんな大丈夫?」というような、協力し合う雰囲気がありましたね。これまでに実施した、順位を競うゲームについていけなかった人でも、気負わずに参加し、楽しめたのではないでしょうか。

南様:私も、みんなで協力できるところが良かったと思います。対抗戦じゃなく、「みんなでハッピーな社会を作りましょう」というゴールが良かったですね。

鈴木様:ゲーム中、私と同じテーブルの人が疾病状態になりましたが、上手く助けを求められる人だったと思います。もし、疾病状態になったのが別の人だった場合、声が上げられなかったかもしれません。

ー研修の中で、助けを求める人の正しい声の上げ方について、「ヘルプシーキング(※)」の考え方をご紹介しました。従業員同士が助けを受け止め合える会社を作るために、どのような取り組みを行われていますか。
(※ヘルプシーキング…困難や問題を解決するために、助けが必要だと自覚し、他者に支援を求めること。問題を認識して他者に相談し、サポートを受け入れる過程を指す。)

藤田様:「助けてほしい」と言える従業員と言えない従業員がいます。気づけば声をかけられますが、やはり自分から発信してもらう必要もあります。そのためには、話しやすい場所やきっかけなど、悩みを打ち明けられる環境を整えることが理想ですね。我々の会社では、社長と従業員の1on1ミーティングに取り組んでいます。一人ひとり話をする場を設けると、意外とみんな自分から話をしてくれますし、困っていることを聞くことができます。

鈴木様:内容によっては同じ部門の人には言いにくいこともあるでしょうから、他部署のマネージャーとかに話してみるのも、気分が変わって良いと思います。人によって話しやすい環境が違うので、色んなパターンを考えていくと良いですね。

ヘルプシーキング(今回の研修スライドより)

助け合える会社を作るために取り組みたいことを主体的に考えた

ーふり返りのワークでは、助け合える会社を作るために、従業員一人ひとりが取り組みたいことを書き出していただきました。ご覧いただいた印象や、取り入れたいと思ったアイデアはございますか。

藤田様:以前から従業員同士で感謝を送り合える社内システムがありましたが、あまり活用されていませんでした。今回の研修後に、従業員自ら積極的に活用したいという意見が多数出てきたので、意識の変化が感じられました。

鈴木様:コミュニケーションという言葉がたくさん書かれていた印象があります。コミュニケーションが大事だという意識を、改めて従業員全員で確認することができたと思います。

藤田様:これから毎月一回、お昼に社内勉強会を開催したいと思っています。不妊治療の全体の流れや、どのようなお客様がいるのか、自社製品の良さなどを改めて伝える場です。そこで「顧客からの良いフィードバックや、我々が仕事をして感謝をしてもらったことを会社全体で共有したい!」というアイデアを取り入れたいです。

従業員には主体性を持って、お互いの関係性を築いて欲しいと考えています。なので、何か行動を強制したり義務感で行って欲しくなかったのですが、今回様々なアイデアを挙げてくれたので、会社として反映していきたいです。このように、従業員一人ひとりが主体的に自分で考えて、お互いの関係性のために色んなことができてくると良いですね。

アイデアをリンゴ型の付箋に書き出し、従業員全員でリンゴの木を実らせました

ー今後どのような研修を行っていきたいですか。

鈴木様:せっかく得たことが振り出しに戻らないように、フォロー研修など、違った形のチームビルディングも取り入れて行きたいですね。

南様:実施後のアンケートでも、「繋げていける場が欲しい」という意見がありました。

藤田様:全員でなくてもまた集まる機会を設けるのは、キックオフから繋がっている感じがしますし、会社が部門間の関係性強化に熱心に取り組んでいることを伝えられていいですね。

ーこれまで弊社のビジネスゲーム研修を3回実施いただき、どのような感想をお持ちでしょうか。

藤田様:参加者がのめり込み、吸い込まれていく印象があります。研修を行う際、最初はいつも入り込んでいけるのか、退屈していないか心配するのですが、ゲームを始めてみると必ず盛り上がります。今回は特に「貢献」のテーマに合わせて、導入講義とゲーム体験、ふり返りが繋がっていた点が良かったですね。

ー最後に、「貢献」を背景にしたとき、藤田様が目指す会社の姿とはどのようなものか、伺わせてください。

藤田様:現在日本では少子化が進み、不妊治療の市場は拡大しています。クーパーサージカル・ジャパンの目標は、市場の広がりを上回って業績を伸ばしていくことです。そのためには、従業員の動機付けをする必要があります。従業員一人ひとりがそれぞれの立場で何ができるのかを考えられたら、目標を達成できるでしょう。私どもは全従業員54名の会社ですから、お互いに顔が分かって、助け合える会社をつくれるはずです。一体感を持って企業の目標を達成していきたいです。

研修内容

  • 組織の属性
    医薬品・医療機器販売業(従業員数51~99名)
  • 研修の目的
    「社会への貢献」・「会社への貢献」・「他者への貢献」を支えるための「より協力し合い、支え合える関係性」を作る
  • 研修受講者
    44名
  • 研修実施日
    2023年11月16日

研修プログラム

  1. 導入(15分)
      ・チェックイン
      ・研修目的の共有
      ・講義(日本の社会の現状について)
  2. ゲーム体験(75分)
      ・ルール説明
      ・ゲーム実施
  3. 振り返り(90分)
      ・対話(ゲーム体験を振り返る)
      ・講義(ヘルプシーキングの考え方について)
      ・ワークショップ(具体的なアクションについて付箋で共有し、発表)
      ・チェックアウト

研修の様子

立ち上がり、会場内を歩きながら情報収集される参加者の皆様
カードを見せ合いながら、活発に交流される様子
全従業員で、助け合える会社を作るためのアイデアを共有しました

研修受講者の声

“協力的に見えない人や積極的ではない人が、実は困っているとか落ち込んでいるのかもしれない、という可能性があるということに気づいた。周りをよく見て自分の状況を伝えたり、相手の状況を聞いたりすることが大切だと感じた”

“困っている人を助けることで社会が活性化できるゲーム体験を通して、他部署とコミュケーションを取りながら課題に取り組むことの大切さに改めて気づいた”

“チームディスカッションで、他の従業員も同じ組織の課題を認識していることが分かった。会社を良くしていくために出来ることを考える良い機会になった”

“ゲームを通して、普段接することがあまりない他部署の方と楽しくコミュニケーションが取れて有意義だった”

“直接困っている人に声をかけたりサポートすることも大事だけれど、同時に、困っている人が発信しやすく、動きやすい環境を整えていくことも大切ではないかと思った”

ご案内

「地域共生社会」は、助け合える会社を築くための意識改革を行うことができるビジネスゲームです。

参加者の皆様には、困っている人とその周囲の人が、どう作用すると助け合える関係を築けるのか、試行錯誤していただきます。従業員同士が困りごとを相談し、助け合える関係を築くためには、助けを求める側のアクションだけでなく、支援する側が「ヘルプをキャッチする姿勢を意識すること」もまた大切です。実際に会社の中で、一人ひとりがどう行動すれば良いか、「地域共生社会」を通して実感いただけます。

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