私たちが『社会課題』に関するゲームを積極的に開発する理由(ビジネスゲーム開発日誌 Vol.9)

プロジェクトデザインではSDGsといった大きな枠組みから、高齢化社会、地球温暖化といった『社会課題』に関するゲームも積極的に開発しています。

日本でも、例えば『少子高齢化』は大きな社会課題となっています。少しデータを拾って見るだけで、

  • 20年後には日本の人口が1000万人減少し、1.1億人になると言われている一方で、65歳以上人口は4000万人弱となり、3人に1人が高齢者になる社会を迎える
  • その高齢化社会を支える社会保障費は現在130兆円と言われているが、20年後には1.5倍の190兆円に達すると試算されている
  • 認知症の人数は現在でも630万人と言われ、すでに全国の小学生の数より多くなっているが、20年後には1,000万人近くに達し、認知症は今よりもはるかに身近なものになっている

といった、『危機感は感じるけれど、個人の力ではどうにもならない』と無力感を感じるような事実を見いだします。しかし、本当に無力なのでしょうか。

10年前、私は起業する直前に前職(ジョブウェブ)の社長である佐藤孝治さんに問うたことがあります。

リーマン・ショックに気候変動、増加する一方の自殺者。世界は苦しみに満ちているように感じますが、多くの課題を抱えたこの社会を良くするために、僕らはあまりに無力なように感じます。一市民である自分たちができることって何かあるのでしょうか。

彼はこのように答えました。

“福井くん、僕もその問題については長いこと考え続けているんだよ。世界に多くの問題が存在しているわけだけど、たいていは、自分自身がその問題の当事者になって直面してはじめて、問題が存在していたことに気づくんだ。それまでは問題が存在していても見ないようにしているか、本当に見えないんだ。だから、僕たちは『一隅を照らす』という精神でもって、自分が感じている、見えている課題に対して、自分ができるやり方で全力で向き合っていくしかないと思う。100人が100通りのやり方で課題に向き合えば社会がよくなることもあるんじゃないかな”

この答えは楽観的すぎるかもしれませんが、同時に現実的な解決策とも思います。

社会課題に対して、政治や経済といった分野で大きな力を振るえる人は振るうべきだし、一人一人の個人はエシカル消費(人や社会、環境に配慮した消費行動)やゴミの分別などの小さな目の前の課題に向き合うべきだと思います。

ただ、大きな力を振るうにせよ、小さな目の前の課題に向き合うにせよ、“社会課題に向き合う意志” を持つことが大事です。

そのためにも、まずは「社会課題に対して無力ではない自分」と「自分が起こした小さなさざなみが、社会を動かす大きな渦に変わる瞬間」を感じてもらえるように、私たちは『社会課題』に関するゲームを積極的に開発しています。

執筆者プロフィール

福井 信英

富山県立富山中部高等学校卒業、私立慶應義塾大学商学部卒業。 コンサルティング会社勤務、ベンチャー企業での営業部長経験を経て富山にUターン。2010年、世界が抱える多くの社会課題を解決するために、プロジェクト(事業)をデザインし自ら実行する人を増やす。というビジョンのもと、株式会社プロジェクトデザインを設立。現在は、ビジネスゲームの制作・提供を通じ、人材育成・組織開発・社会課題解決に取り組む。開発したビジネスゲームは国内外の企業・公的機関に広く利用され、英語版、中国語版、ベトナム語版等多国語に翻訳されている。課題先進国日本の社会課題解決の実践者として、地方から世界に売れるコンテンツを産み出し、広めることを目指す。 1977年生まれ。家では3人の娘のパパ。

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