「おおかみこどもの雨と雪」というアニメ映画があります。
この映画の解説を読んでいたときに「日常の中にひとつだけファンタジー(空想)を入れる」というセオリー(技法)があることを学びました。
この映画では「父親がおおかみ男である」という現実と異なる要素がひとつあり、それがすべての素となって、様々な人間の物語が紡がれていきます。
他の映画もこのセオリーをもとに見直してみると、「タイムマシンが出来た」「夢の中に入ることができる」「ゾンビという人と異なる存在がいる」そんなひとつのファンタジーが呼び水となって、多種多様な物語が生まれていることがわかります。
これはひとつの「物語づくりのセオリー」の事例ですが、セオリーを知って応用することでスピーディーに完成度高く作品を作ることができると感じます。ピカソだって、若かりし頃にデッサンを徹底的に行なったのですから。
新入社員研修の内製化
4月に入ってからというもの、新入社員研修に出ずっぱりで多忙な日々を過ごしておりました。
研修を提供する側の視点では、新入社員研修の時期は繁忙期であり、1年間の売上の大半を4~6月の3ヶ月間であげる研修会社も存在します。
それだけ、新入社員時代に配属されてから必要となるスキルセット・マインドセットを提供し、自律的に成長できる素地をつくっておくことは企業にとってメリットがあることと言えますが、同時に構造的な問題点も生じます。
それは研修講師の需要に対して供給が限られるため、新入社員研修の価格高騰が起きたり、優れた講師を安定的に手配するのが困難になったりする点です。
ゆえに、新入社員研修は会社のことをよく理解し、自社の状況にあわせて伝えることができる人事部を中心とした社内の人間で内製化し、自社で行うと効率が悪いところに絞って外注していく、ということが大切になっています。
しかし、様々な研修ツールやスライドを集めて自社なりにカスタマイズした結果、研修の流れに統一感がなく、学習効果が低下してしまうケースも見受けられます。
研修づくりの6つのセオリーと、やりがちな3つのミス
そこで、この機会に当社が研修づくりのセオリーとしている手法を簡単にご紹介します(新入社員研修に限らず、幅広い研修に適用可能な手法です)。
貴社の研修で利用しているスライドやタイムラインをチェックしてみてはいかがでしょうか。
基本の研修構成は下記の通りです。伝えたいテーマごとに、大きく下記の流れで学習内容が構成されているかどうかをチェックします。
<研修づくりの6つのセオリー>
- 問いかけ
なぜ、そのテーマを学ぶ必要があるか考えさせる - 発表・共有
参加者同士で出た意見を共有する - 絞り込み
出た意見の中で重要と感じるものをグループで絞り込む - レクチャー
伝えたい学びのメッセージを講師から伝える - 演習
受け取った内容を実践できるかチェックする - 振り返り
出来たこと出来なかったことを振り返り、学ぶポイントを明確化する
上記のように、参加者に考えさせてからレクチャーを行うことで「わかったつもり」を防ぎ、その後に演習と振り返りを行うことで「理解したつもり」や「できるつもり」を防ぐことができます。
加えて、講師が話す部分を減らし、相対的に参加者に考えさせる場を増やします。それによって講師の負担は減り、自信をもって社内講師として研修を提供することができるようになります。
もちろん、1(問いかけ)→2(発表・共有)→3(絞り込み)→4(レクチャー)→5(演習)→6(振り返り)という流れは基本パターンです。
5(演習)→1(問いかけ)→2(発表・共有)……という、演習を最初にもってくるパターンもあります。
また、時間が限られるときには、1(問いかけ)→4(レクチャー)→5(演習)→6(振り返り)という流れにし、2(発表・共有)と3(絞り込み)を割愛する場合もあります。
基本の流れを抑えた上で応用していくことで、改善もしやすくなります。
ちなみに、研修をつくるときにやりがちなミスを挙げると、下記のようになります。
<研修づくりでやりがちな3つのミス>
- 参加者の心理的安全性が低い(発言に対しての抵抗感がある)状態で研修に入っている
- ほとんどがレクチャーで構成されており、参加者の主体性が発揮されにくくなっている
- 演習が簡単すぎる、あるいは難しすぎることで、演習の意味をなさない
自社で提供している研修は、研修づくりの6つのセオリーの流れを押さえているのか。また、研修づくりでやりがちな3つのミスを避けることができているか。
是非、この機会に確認してみてください。
執筆者プロフィール
福井 信英
富山県立富山中部高等学校卒業、私立慶應義塾大学商学部卒業。 コンサルティング会社勤務、ベンチャー企業での営業部長経験を経て富山にUターン。2010年、世界が抱える多くの社会課題を解決するために、プロジェクト(事業)をデザインし自ら実行する人を増やす。というビジョンのもと、株式会社プロジェクトデザインを設立。現在は、ビジネスゲームの制作・提供を通じ、人材育成・組織開発・社会課題解決に取り組む。開発したビジネスゲームは国内外の企業・公的機関に広く利用され、英語版、中国語版、ベトナム語版等多国語に翻訳されている。課題先進国日本の社会課題解決の実践者として、地方から世界に売れるコンテンツを産み出し、広めることを目指す。 1977年生まれ。家では3人の娘のパパ。
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