「SDGsに熱心に取り組まれている御社の、管理職および経営陣の女性比率は何%でしょうか?」
そう問われた時、答えに窮する企業はまだまだ多いのではないかと思います。
ジェンダー不平等な会社よりも、平等な会社の方が業績が良いという調査結果はすでに出ています。
しかし、日本社会において女性は採用活動の場で不利益を被っており、その後の昇進機会でも不利益を被り、結果として男女の賃金や待遇に大きな差が出ています。
見方によっては、日本の企業は自ら望んで「ジェンダー不平等≒業績の悪い企業」を創り出しているとも言えるのです。
なぜ、このような事態が起きてしまっているのでしょうか。
不平等が存在する組織ではエンゲージメントが減退する
喜ばしいことに、当社にも一人目の新卒内定受諾者が生まれました!
大学の授業はすべてオンライン研修になっており、緊急事態宣言下のエリアということもありアルバイトも出来ない状況なので、在宅で当社のオンラインインターンシップ(有給)に取り組んでもらっています。
もちろん、将来入社する虎の子の新卒社員なわけですから、インターンシップは企業理解とトレーニングを兼ねたものです。自社で年始から考えていた「ジェンダー平等について学ぶゲームを作ろう!」ということで、私を含めた4名のプロジェクトチームで現在は動いています。
当社がビジネスゲームを作成するときは、ゲームの骨格を作成する前に、既存のデータをもとに現実のあり様を調査するところから始めます。
最初にインターン生に与えられたタスクは「ジェンダー不平等の実態調査」。
(フリーハンドで自由に調べてきて、という乱暴な指示でしたが、ほんの数日で良いアウトプットをまとめてくれました。)
さて、この中でも僕が注目したのは、7ページ目の最後に紹介されている論文の抜粋です。
“労働者が不公平な賃金格差を自覚すると生産性や出勤率が低下することが証明されている”
THE MORALE EFFECTS OF PAY INEQUALITY EMILY BREZA SUPREET KAUR
YOGITA SHAMDASAN
“マサチューセッツ工科大学の研究では、労働者が賃金格差に気付いた時に、生産高が最大で52%も低下するという実験結果が得られた”
THE MORALE EFFECTS OF PAY INEQUALITY
これは非常に興味深く、多くの人が心に刻むべき内容と感じました。
すなわちジェンダー(に関わらず)不平等が存在する組織では、不平等な側は本来持っている力を発揮しづらくなり、エンゲージメントも減退するということです。
これは不平等を拡大することにも繋がります。
不平等を放置することによって、優遇されていない側は本来の力量を発揮することが出来ず、ただのライスワークに従事するようになる。
さらなる調査が必要ですが、優遇されている側もそれに胡座をかき、健全な競争が阻害されることで、本来のパフォーマンスが劣化する可能性もあります。
組織は不平等を放置することで、組織内の人材の能力発揮を阻害し、ひいては業績を伸ばす機会も失っているのです。
これらの調査結果をもとにプロジェクトチームで1時間ほどでまとめた、不平等の構造とゲームの骨格は下記のようになります。
(これを見ただけでは、何がなんだかわからない……と感じられる方が多いと思いますが、ビジネスゲーム制作の裏側を見せるという趣旨のもと公開します)
できるゲームは「王国ゲーム(仮称)」という、国の政策を話し合って決めるようなゲームになると思います。しかし、その話し合いは、ひとり一票を持っているようでいて「見えない不平等」が存在し、必ずしも平等な一票ではない。
そんな状況下で、人々は理性的に話し合い、全体の最大幸福を実現できるのでしょうか。それとも見えない不平等から得られる利益を享受し、あるいは不平等に抗うことに諦めを感じ、格差が拡大するのでしょうか。
実際にはジェンダーに限らず、格差社会の問題、階層社会の問題、貧困の問題等、様々な問題を伝え学ぶゲームにできそうです。
もともとは企業のジェンダー不平等の存在に対して提言できるようなゲームにしようと思い、開発をはじめましたが、学生向けの差別と格差の問題を考えるゲームとしてもつくることができそうです。
完成は未定ですが、年内にリリースしたいと思っています。
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2022年3月追記
本記事掲載後にこの「王国ゲーム」はひとまず完成しましたが、テストを重ねる中で更にバランス調整が必要と考え、リリースはまだ先になる予定です。
ゲーム体験をすぐにお届けすることはできませんが、本テーマに関心ある方がいらっしゃいましたらお問い合わせください。調査において我々が気づいたことや、ゲームを通じて体験いただきたいと考えていることなど、意見交換の場を持つことができると思います。
執筆者プロフィール
福井 信英
富山県立富山中部高等学校卒業、私立慶應義塾大学商学部卒業。 コンサルティング会社勤務、ベンチャー企業での営業部長経験を経て富山にUターン。2010年、世界が抱える多くの社会課題を解決するために、プロジェクト(事業)をデザインし自ら実行する人を増やす。というビジョンのもと、株式会社プロジェクトデザインを設立。現在は、ビジネスゲームの制作・提供を通じ、人材育成・組織開発・社会課題解決に取り組む。開発したビジネスゲームは国内外の企業・公的機関に広く利用され、英語版、中国語版、ベトナム語版等多国語に翻訳されている。課題先進国日本の社会課題解決の実践者として、地方から世界に売れるコンテンツを産み出し、広めることを目指す。 1977年生まれ。家では3人の娘のパパ。
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