「チンギス紀」から学ぶ、人材採用や組織開発の考え方(ビジネスゲーム開発日誌 Vol.22)

最近、喪失感に襲われています。 原因は明白で、子育ての合間や娘が寝た後に kindle で読み進めていた北方謙三の「チンギス紀」をついに最新刊の10巻まで読み終えてしまったからです。

これから何を楽しみに生きれば良いのか。そんな答えにならない問いをついつい考えてしまっています。

北方謙三の「チンギス紀」は、彼の描く「大水滸伝」シリーズの最新巻です。

全部合わせると100巻近くになる、とんでもない作品です。ちなみに、北方謙三の書く歴史小説は史実に準拠しているというよりも、半分以上は空想・妄想の世界です。

自他共に認める歴史小説好きとしては、本来許せない描き方なのですが、それでも面白い。圧倒的に面白い。何がそんなに面白いのかというと、1つは小説にリアルを持ち込んでいるところでしょうか。

例えば、チンギス・カンはモンゴルを制し、やがて世界の三分の二を制するわけですが、軍隊を大きくすることは考えていない。ライバルたちが軍を大きくしていく中、未来を見据えて、交易の道を切り開いたり、軍制を整えたり、鉄を採掘し、自ら作れるようになったり、と徹底して “バックキャスティング” で国造りをしている。

まずはそういった、戦で勝った・負けたで語られない本来の内政の部分がしっかり語られているところが魅力の1つ。

2つめは、軍事や内政に取り組む、男たち(女たち)の心のあり様が非常に丁寧に描かれていることでしょうか。その心のあり方は少し現代的でもあり、いまの国や社会のあり方に疑問を感じる僕のような男には「つべこべ考えず目の前のことに一生懸命取り組めよ」と語りかけてくれているようで、また面白い。

これから北方謙三を読む人は「水滸伝」から読んでいただくしかないわけですが、水滸伝も面白いですよ。社会に出てから何人もの人にお勧めされました。でも僕のお勧めは圧倒的に「チンギス紀」ですね。

「チンギス紀」は登場人物ひとりひとりにスポットライトを当てていますが、同時に戦の勝敗を英雄的な登場人物に委ねるのではなく、あくまで地道な内政から生まれる総合力としての国力に委ねています。

話は変わりますが、日本人がつくるシミュレーションゲームは「信長の野望」に代表されるように、人材の能力が高ければとにかく強い、「人材」に焦点を当てたものになりがちです(それはそれで非常に面白いです)。

一方で、欧米のシミュレーションゲームは「人材の能力はアクセント程度」で、あくまで、置かれた環境や立地、社会制度などの「国の構造」に焦点を当てるものが多いです。

非常に大事な「人材採用」も、日本のゲームでは「魅力」など個人の能力値に左右されるのに対し、海外のゲームは「人が集まる組織を作れているか」という「構造」に焦点を当てています(いい人材がくるかどうかは、創り出した構造に対しての結果に過ぎない考え方です)。

人材採用や組織開発の相談を受けていても、社長や人事によっては「いい人がいれば/くれば(業績が上向く)」といった人材重視で考えられている人が、まだまだ多いようにも思います。

しかし、本当に大事なことは、地味で時間がかかっても「いい人が集まる/いい人を育てる」にはどんな組織が良いのだろうと、組織のあり方や構造を考えたり、時間を変えて考えたりすることではないかと思うわけです。

農民から天下人の身になった豊臣秀吉も凄いですが、家族以外はみんな敵の状態から世界の三分の二を制するに至ったチンギス・カンのことを思うにつけ、「僕にもまだまだ出来ることってあるよなぁ」と勇気をもらう次第です。

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「人事制度ゲーム」は、人事制度に関わる方や人事制度の社内浸透を進めたい企業にお勧めのビジネスゲームです。人事制度の意義・人事施策の知識・人事制度の自分ごと化について理解を深める機会を提供します。

「いい人が集まる/いい人を育てる」組織のあり方や構造を考える機会にご活用いただけます。

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執筆者プロフィール

福井 信英

富山県立富山中部高等学校卒業、私立慶應義塾大学商学部卒業。 コンサルティング会社勤務、ベンチャー企業での営業部長経験を経て富山にUターン。2010年、世界が抱える多くの社会課題を解決するために、プロジェクト(事業)をデザインし自ら実行する人を増やす。というビジョンのもと、株式会社プロジェクトデザインを設立。現在は、ビジネスゲームの制作・提供を通じ、人材育成・組織開発・社会課題解決に取り組む。開発したビジネスゲームは国内外の企業・公的機関に広く利用され、英語版、中国語版、ベトナム語版等多国語に翻訳されている。課題先進国日本の社会課題解決の実践者として、地方から世界に売れるコンテンツを産み出し、広めることを目指す。 1977年生まれ。家では3人の娘のパパ。

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