4つの戦略セオリーの価格戦略について~自社にとっての “泡ソープ” を探せ!!~(ビジネスゲーム開発日誌 Vol.29)

次世代経営幹部向けに研修を行う機会も最近増えてきまして、難しいことを簡単に伝えることが得意な僕はおかげさまで重宝されております。

例えば、事業戦略に関して研修を依頼される際には「4つの戦略セオリーを覚えておきましょう、そうすればMBA的な様々な戦略論が理解しやすくなりますよ」という話をしています。

その4つとは、

  1. 上りのエスカレーターに乗ること(成長する市場を選ぶこと)
  2. 勝負する土俵を絞ること(勝てる領域に集中的に経営資源を投資すること)
  3. 価格は “上げる” が原則。大事なことはどこで上げるか
  4. 戦略は “繋げて” 模倣ができないものをつくる

なのですが、この中でも3つ目、“価格は上げる” に関して大変勉強になる出来事があったのでご紹介したいと思います。

本題に入る前の余談ですが、価格戦略に関してコンサルタントと言われる方に相談すると、たいていの場合は「価格は上げましょう」という話に落ち着きます。詳細に分析していった結果、上げる余地がある。上げた方が売れるという場合が8割以上になるというコンサルタントの経験則も “価格は上げる” 論に一役買っています。

“価格を下げて” 勝利を掴めるのは多くの場合、Amazonやトヨタやニトリなどの市場において支配的になった強者だけに許された手法です。また、原価というのは売れれば売れるほど “経験曲線” 効果(生産量が2倍になる毎に生産コストが一定割合下がる)によって下がる傾向があるので、時間の経過とともに商品には値下げ圧力が加わります。

ゆえに、意識的に “価格を上げて” いくことが重要になるわけですが、単純に価格を上げては市場や顧客から反発を得ます。だからこそ大切なことは、どこで上げるか、どのように上げるか。という部分になります。

さて、本題に入ります。

家庭での家事力が極めて低いワタクシは年末の大掃除の時期に、(家では使わない)液体ソープを泡のソープと間違えて3袋も買い溜めしてしまうという大失態を犯してしまいました。普段、こんなことをすれば愛する妻に大目玉をくらってしまいます。

しかし、我が妻は落ち込んでいた私のことを察したのか、何も言わずに「液体ソープを水で2倍に薄めて泡で出るソープ」に変えて各洗面所に設置してくれたわけです。 水で薄めるだけでびっくりするぐらい泡になって石鹸が出てきます。

……女神かと思いました。

さて、液体ソープは実は水で薄めれば泡で出るソープとして使えるようです(石鹸の性質を考えれば当たり前のことですね)。しかし、液体ソープも泡ソープも内容量は250mlで標準価格は378円。水で薄めれば液体ソープを買うと2倍長持ちするという計算になります! 

その話を聴いたときに、目からウロコと言いますか、メーカーの努力と工夫に頭が下がる思いがしたわけです。原料が1/2で価格は同じ。消費者にとっては泡で出るほうがお肌に易しい、使いやすいという人はいるわけで、何なら泡で出るほうが売れているように感じます。

工業原料なので、精製水も石鹸水もコストはほとんど変わらないのかもしれませんが、泡ソープ用の新たな容器をつくったり広告宣伝したりするための追加コストは必要だったことでしょう。だからこそ、価格が同じというのは理解できなくはないのですが、極端な話をすると「生産に利用するリソースを1/2にしつつ、売値を変えずに市場を広げた」ということになるわけで、これこそ、すごいマーケターの発想だなと感じるわけです。

なので、今年から僕は「自社にとっての “泡ソープ” を探せ!!」ということをテーマに研修やゲームを作っていきたいと考えております。また、「プロジェクトデザインにとっての “泡ソープ” はこれですよ!」というアドバイスをいただける方がいらっしゃれば是非、ご意見をお聞かせください!

執筆者プロフィール

福井 信英

富山県立富山中部高等学校卒業、私立慶應義塾大学商学部卒業。 コンサルティング会社勤務、ベンチャー企業での営業部長経験を経て富山にUターン。2010年、世界が抱える多くの社会課題を解決するために、プロジェクト(事業)をデザインし自ら実行する人を増やす。というビジョンのもと、株式会社プロジェクトデザインを設立。現在は、ビジネスゲームの制作・提供を通じ、人材育成・組織開発・社会課題解決に取り組む。開発したビジネスゲームは国内外の企業・公的機関に広く利用され、英語版、中国語版、ベトナム語版等多国語に翻訳されている。課題先進国日本の社会課題解決の実践者として、地方から世界に売れるコンテンツを産み出し、広めることを目指す。 1977年生まれ。家では3人の娘のパパ。

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