研究職や開発職の採用にあたり、某大手メーカーで年間3,000人に対して集団面接代わりに使われていたツールがあります。当社が開発した「The Engineers」というビジネスゲームです。
研究職や開発職に求められる能力・適正はなにか? それを考えたときに私が理系の開発チームと出した結論が、
- ものごとに対する知的好奇心(探究心)
- 限られた情報から推論ができ、仮説を立てられること(論理的思考)
- 様々な現象の背景にある構造を理解し応用できること(構造理解)
- 他の研究者との対話を通じて新たな着想を得られること(対話力)
というものでした。そして、これらの4つの能力が求められるように下記のようにゲームを創りました。
- 複数の研究要素を組み合わせることで新たな製品やテクノロジーが生み出せる
- 研究要素の組み合わせには一定の法則があり、法則に気づくと立て続けに新たな製品を生み出せる
- 初期に持っている情報は部分的なものであり、一定の失敗や他者との対話を通じて情報を集める必要がある
- 完全な情報が用意されているわけではないので、推論と挑戦(実験)を通じて仮説を確かめていく必要がある
当時、私はこういった論理的思考や物事の背景に潜む構造の理解は、理系特有の能力と考えていたわけです。
——
以前、大学入試の日本史の問題を監修している方のブログを読んだことがあります。
テーマは「日本史の良問とは?」というものです。僕自身は田舎の高校出身であり、故に塾に通う文化もなく「歴史なんて丸暗記だろ?」と長らく思っておりました。 しかし、その認識は全く違っておりました。
日本史学者の方のブログによると日本史の良問というのは、
-よく知られている(教科書に載っている)歴史的事実から推論し、答えを導き出せるもの
とのことです。歴史用語や年表の細かな暗記で解けるものは歴史の問題としては良問とは言えず、例えば「墾田永年私財法」が生まれた背景を抑えておくと、その背景から類推して答えられるものが良問といえる、とのこと。
……なんか、基本的な数式を知っていれば解法を導き出せる。数学と一緒じゃないか!!と、びっくりしたのを覚えています(読んでないですが、ドラゴン桜とかだとそういう歴史問題の解き方とか教えてくれるんですかね)。
そして、そういうふうに歴史を教えてくれる先生がいたら、もっと歴史の授業が好きになっただろうな……と感じました。
ビジネスの現場ではコミュニケーション能力と並んで、新たな価値を生み出す「知的創造力」が多くの会社で求められるようになりました。むしろ、理系であれ文系であれ創造する力こそが、他社と本質的に差別化する力とも言えます。
「The Engineers」はお陰様で様々な企業のインターンシップで今も用いられています。創造する力がない人は「えー。わからーーん」と早々に匙を投げ、ある人は「めちゃめちゃ面白い!」と猛烈に前のめりになるゲームです。
興味のある方はぜひどこかで、ご体験頂ければ幸いです。
執筆者プロフィール
福井 信英
富山県立富山中部高等学校卒業、私立慶應義塾大学商学部卒業。 コンサルティング会社勤務、ベンチャー企業での営業部長経験を経て富山にUターン。2010年、世界が抱える多くの社会課題を解決するために、プロジェクト(事業)をデザインし自ら実行する人を増やす。というビジョンのもと、株式会社プロジェクトデザインを設立。現在は、ビジネスゲームの制作・提供を通じ、人材育成・組織開発・社会課題解決に取り組む。開発したビジネスゲームは国内外の企業・公的機関に広く利用され、英語版、中国語版、ベトナム語版等多国語に翻訳されている。課題先進国日本の社会課題解決の実践者として、地方から世界に売れるコンテンツを産み出し、広めることを目指す。 1977年生まれ。家では3人の娘のパパ。
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