先日、「En-ROADs」という気候変動に関するシミュレーターを用いたロールプレイ・ゲームを、様々な方にお声がけして実施しました。
ファシリテーション、および翻訳はチェンジ・エージェント社の小田さんにお願いいたしました。
このゲームでは、有力なNGOやクリーンテック、先進国首脳といった8つの立場になって、それぞれ主張する政策を提言します。あるいは他者の提言を拒否することによって、「どうすれば人類共通の課題である2100年時点での気温上昇を2℃以内に抑えるか」ということを考えます。
30名の参加者で実施し、ゲームは大いに盛り上がりました。
このゲームの秀逸なところは、科学的根拠に基づいたシミュレーターを使いながら議論を進めるところです。日本語版のシミュレーターは誰でも使えますので、興味のある方は、是非触ってみてください(詳細はこちら)。
ゲームを終えた後、参加者からはゲームに対してのご意見とともに、「こんなことをしたい!」「協力したい」といった様々な声や提案を頂きました。
このように、参加したメンバー間で自然と共創(Co-Creation)の動きが出たプロジェクトは、大体素晴らしいものになります。しかしながら、意図的に共創を起こそうとしてもそれは押し付けに過ぎず、主催者側が描いた絵とは裏腹に、共創の動きなんて生まれません。
そのため、参加者間での共創を生み出すためにできるのは、“環境を整える” ことだけだと思います。
今回のロールプレイ・ゲームの体験、およびこれまで参加・実施したワークショップの体験を踏まえ、“環境を整える” には次のような意識が大切だ、と思い至りました。
- 参加する他のメンバーに対する理解
- 参加するメンバー共通の問題意識
- 異なる視点、専門分野をもったメンバーの参加
- ティーチングではなく、参加者の意思や知恵を引き出すファシリテーション
- 協働作業を通じた小さな成功体験(共通体験)
- 今後の活動の武器となるツールやメソッドの提供
この条件が整っていれば、押し付けずとも場の設定だけで共創は生じ得るのですが、企業研修の場において実施しようとすると、
- 参加者の問題意識はバラバラのことが多いので、事前にある程度揃える
- 視点や専門分野が異なる人を集める
といった工夫が必要になる中で、階層別研修などではこれらの工夫が不徹底な場も多いと思います。
なぜなら、共創ではなく教育を提供する場合において、参加メンバーの問題意識はバラバラでも致し方ないですし、視点や専門分野が同じ人の方が伝えやすい背景があるからです。
また、私自身が研修を行うとき、参加者同士の気づきを促すファシリテーションではなく、知識を伝達するティーチングになってしまうこともよくあります。
十分トレーニングされていない参加者の場合は、共創の前に十分な教育を行う必要もあることは重々承知しておりますが、共創を目的とする場に過度なティーチングを持ち込むのは不適切と感じます。
教育を目指す場なのか、共創を生み出す場なのか。
これからの時代は、どういう場なのかしっかりと定義してから、参加者や内容を設計していくことがより重要になってくると感じます。
執筆者プロフィール
福井 信英
富山県立富山中部高等学校卒業、私立慶應義塾大学商学部卒業。 コンサルティング会社勤務、ベンチャー企業での営業部長経験を経て富山にUターン。2010年、世界が抱える多くの社会課題を解決するために、プロジェクト(事業)をデザインし自ら実行する人を増やす。というビジョンのもと、株式会社プロジェクトデザインを設立。現在は、ビジネスゲームの制作・提供を通じ、人材育成・組織開発・社会課題解決に取り組む。開発したビジネスゲームは国内外の企業・公的機関に広く利用され、英語版、中国語版、ベトナム語版等多国語に翻訳されている。課題先進国日本の社会課題解決の実践者として、地方から世界に売れるコンテンツを産み出し、広めることを目指す。 1977年生まれ。家では3人の娘のパパ。
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