30歳前後の社員を採用したときに、「仕事が出来るな」と感じる人と「良いものは持っているが厳しいな。使いものになるかどうかギリギリだな」と感じる人がいます。
どこにその境界線があるのか私なりにずっと考えていたのですが、「段取り力」が身に付いているかどうかだと最近気づきました。
段取り力とは何か。
それは仕事を受けたとき、見つけたときに実行する4つの力のことです。
- その仕事のゴールを自ら設定する力
- ゴールに至るまでのプロセスを分解してタスクに落とし込む力
- 仕事を遂行するのに必要な関係者に連絡・調整する力
- タスクを自分のスケジュールに落とし込み、納期通りに進める力
「プロジェクトマネジメント」と言うには少し大げさな感じがしますし、「タスクブレイクダウン(業務を分解して落とし込む力)」という表現よりは示す仕事の範囲が広いような気がします。
ハウスメーカーや住宅資材の商社の研修をしている際に、参加者が「段取り力」と何度も口にするのを耳にしました。これは使えると思って、今では僕も上記4つの力を総合して「段取り力」と表現しています。
考えてみれば、家を建てることは一大プロジェクトです。
大工さんや資材の納入担当者などのプロジェクトメンバーに対してスケジュールや注意点をしっかりと伝えられないと、職人気質のメンバーから「あいつは仕事ができない」と烙印を押されてしまいます。プロジェクトを円滑に進めるためにも、プロジェクト責任者となる営業や工事の担当者にはこの「段取り力」が必要不可欠です。
当社のビジネスゲームを制作する仕事もまた、住宅とは規模が異なるかもしれませんが、非常にクリエイティブで段取りが必要不可欠な仕事です。
ビジネスゲームは提案段階では形のないものです。ディスカッションを繰り返しながらイメージを作り上げていく中で、お客様は提案内容以上に、提案に至るまでの「段取り力」を見ていらっしゃると感じています。
商談の場での顔を合わせてのコミュニケーションを “直接コミュニケーション” と言うならば、顔を合わせずに様々な段取りをする力は “間接コミュニケーション” と言えるかもしれません。
- 提案までの流れがスムーズか。
- 要望をきちんと汲んでくれているか。
- ステークホルダーへの配慮がしっかりされているか。
- 完成した後、活用のイメージまで抱けるかどうか。
ビジネスゲームの制作も大きな買い物です。お客様は(意識的か無意識かはわかりませんが)発注に至るまでの「段取り」が適切か、発注した後に安心して任せられるかを注視されていると感じます。
新入社員研修で伝えたい「段取り力」
さて、ここまでは30歳前後の社員を話題にしてきましたが、今は桜の季節。新入社員を迎えるタイミングですね。
新入社員にとって必要な力を3つ挙げるならば、そのうちの2つはマナーと自らゴールを設定しPDCAを回す力≒自律する力として、3つ目には「段取り力」が挙げられるのではないかと思います(この「段取り力」をゲームとして表現できたらなぁ……なーんて考えたりもしています)。
実は、当社でも新卒社員を迎えました。
最初のキャリアに当社を選んでくれた新卒社員を育てる義務が私にはあります。彼ら・彼女らが30歳になったときに当社に在籍しているかどうかはわかりません。しかし、どこにいたとしても各々が胸に抱いた志をプロジェクトとしてデザインし、実行してもらえるように、新入社員研修では「段取り力」を伝えていきたい。
そう感じています。
執筆者プロフィール
福井 信英
富山県立富山中部高等学校卒業、私立慶應義塾大学商学部卒業。 コンサルティング会社勤務、ベンチャー企業での営業部長経験を経て富山にUターン。2010年、世界が抱える多くの社会課題を解決するために、プロジェクト(事業)をデザインし自ら実行する人を増やす。というビジョンのもと、株式会社プロジェクトデザインを設立。現在は、ビジネスゲームの制作・提供を通じ、人材育成・組織開発・社会課題解決に取り組む。開発したビジネスゲームは国内外の企業・公的機関に広く利用され、英語版、中国語版、ベトナム語版等多国語に翻訳されている。課題先進国日本の社会課題解決の実践者として、地方から世界に売れるコンテンツを産み出し、広めることを目指す。 1977年生まれ。家では3人の娘のパパ。
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