20年来の友人である、株式会社NEWONEの上林社長の著書を献本いただきました。これが「人事関係者は全員読んでも良い!」と言えるほど、とても素晴らしい内容だったのでここに紹介させていただきます。
・人的資本の活かしかた 組織を変えるリーダーの教科書|上林 周平(著, 編集), 田中 研之輔(監修).
“米アップルの時価総額が一夜にして、1兆円下がった”
本書では、そんな衝撃的なニュースの紹介から話が始まります。時価総額が一気に下がってしまった理由は、なんと、初代iMacの頃からAppleのデザイン責任者を勤めてきたデザイナー、ジョナサン・アイブの退職によるものでした。
このニュースは、本書のテーマである「人的資本経営」を語る上でも、象徴的なものだと思います。
さて、この「人的資本経営」というキーワードについて、本書では「マネー・ボール」を例に挙げながら分かりやすく解説しています。
※マネー・ボールは大リーグの弱小チームがデータを駆使して低予算でトップに立つノンフィクション書籍です(映画化もされているので、そちらでご存じの方もいらっしゃると思います)。
マネー・ボールの中で、ゼネラル・マネジャーであるビリー・ビーンは次の3つに取り組み、成功を収めました。
- 超具体的に選手の個性をデータにし、誰にも知られていなかった能力を明らかにした上で採用・活用する
- 各々の能力に着目し、組み合わせて結果に繋げる
- 現場のリーダーが選手とコミュニケーションすることで育成を支援する
これが、まさに「人的資本経営」の姿です。
また、本書の中では「S&P500社」と「日経225構成企業」の市場価値構成要素の比較も行われていますが、これが、実に興味深い。
S&P500社の資産は90%が無形資産(知的財産権やソフトウェア)であるのに対し、日本の無形資産は31%に過ぎず、資産の多くを土地や建物といった有形資産が占めている。
この事実が示されているのです。
私も “財務諸表を題材にしたゲーム” を作成しているのでよく分かるのですが、企業の価値観や投資の傾向は、バランスシートに明確に現れます。
少し極端に話すと、米国企業が知財やソフトウェアに盛んに投資していた30年の間、日本は変わらず、土地や機械設備に投資をしていたのだなぁ、と。
もちろん、会計基準の違いなどはあると思います。本来持っている技術や特許といった無形資産の全てを、日本企業が資産として計上しているわけではないでしょう。
しかし、それにしてもこの差はショッキングなものです。経営が20世紀でとどまっている国が、21世紀に適した経営をしている国に敵うわけがない。
本書の中では、その遅れを取り戻し、管理職が価値を生み出すリーダーに変わるために、専門職「TMO(チームマネジメントオフィサー)」としての力を認識し、磨くためのすべが描かれていくわけです。前半部分が衝撃的だったので、中盤以降はもはや全てに頷くしかない状態でした。
人材育成や組織開発に携わる人にとっては必須と言ってもいい、「人的資本の活かしかた」。
興味を持った人は、是非、手に取って読んでみてください。
ご案内
上記で触れた “財務諸表を題材にしたゲーム” は、「The 財務諸表」です。
「The 財務諸表」は、管理職(マネージャー)にお勧めのビジネスゲームです。参加者がカフェの経営者として3~6人のチームを組み、お客様に支持されるお店を2年間で作ることをゴールに掲げながら、他店舗との業績を競い合います。
財務諸表を読み解く力の構成要素となる、コストとリターンの視点・B/SとP/Lの関連性・分析力を身に付ける機会を提供します。
執筆者プロフィール
福井 信英
富山県立富山中部高等学校卒業、私立慶應義塾大学商学部卒業。 コンサルティング会社勤務、ベンチャー企業での営業部長経験を経て富山にUターン。2010年、世界が抱える多くの社会課題を解決するために、プロジェクト(事業)をデザインし自ら実行する人を増やす。というビジョンのもと、株式会社プロジェクトデザインを設立。現在は、ビジネスゲームの制作・提供を通じ、人材育成・組織開発・社会課題解決に取り組む。開発したビジネスゲームは国内外の企業・公的機関に広く利用され、英語版、中国語版、ベトナム語版等多国語に翻訳されている。課題先進国日本の社会課題解決の実践者として、地方から世界に売れるコンテンツを産み出し、広めることを目指す。 1977年生まれ。家では3人の娘のパパ。
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