突然ですが問題です。マイクロファイナンスの「マイクロ」とは単位の大きさを示すものですが、この「マイクロ」の説明として正しいものは次の選択肢のどれでしょうか?
<選択肢>
- 「マイクロ」は「ナノ」より小さい
- 「マイクロ」は「ミリ」より大きい
- 「マイクロ」は「ピコ」より小さい
- 「マイクロ」は「ミリ」より小さい
<正解>
選択肢4の「マイクロはミリより小さい」が正解です。単位の大きさは小さい順に、
- ピコ:10-12
- ナノ:10-9
- マイクロ:10-6
- ミリ:10-3
となります。私たちが普段使っている「ミリ」の1000分の1の大きさが「マイクロ」です。それぐらいに小さい、小規模という意味でマイクロファイナンスという言葉が使われています。
ちなみに、メガバンクの「メガ」は106です。以下の単位は知っているという方も多いのではないでしょうか?
- キロ:103
- メガ:106
- ギガ:109
- テラ:1012
MB(メガバイト)やGB(ギガバイト)のように、データ通信量(バイト)を示す際の単位として馴染みがあると思います。
マイクロファイナンスとは何か?
マイクロファイナンスとは?
マイクロファイナンスとは、貧困層や低所得者を対象にした小規模金融サービスです。
マイクロクレジットと呼ばれる「無担保の少額融資」のサービスから始まり、「預金」「送金」「保険」などにもサービスが拡大していることから、現在ではマイクロファイナンスという言葉が広く使われています。
このマイクロファイナンスは、貧困層の人々の経済的自立を目指す「貧困緩和」を目的に含んでいる点に大きな意義があります。
マイクロファイナンスの仕組みは?
マイクロファイナンスでは、お金を「生活費」として貸すのではなく、起業や就労のための「事業費」として融資しています。融資を受けた人が、事業で得た利益でマイクロファイナンス機関(MFI)に返済することでサービスが成り立ちます。
有名な成功例は、世界的なマイクロファイナンスの拡大に貢献したグラミン銀行の「グループ貸付」制度です(無担保である代わりに5人で1つのグループを作らせ、1人でも返済できなければ他の4人も今後一切融資が受けられないという仕組みです)。
自分が今後もお金を借りることができるように、仲間同士で監視し、誰かが上手くいかない時は助け合うようになります。そもそも債務不履行の心配がある人とはグループを組まないため、銀行側のリスクも軽減されます。
これにより、グラミン銀行は毎年97%以上の高い返済率を維持できています。現在、このグラミン方式は世界中のマイクロファイナンスに広く採用されています。
マイクロファイナンスに将来性はあるのか?
グラミン銀行を筆頭に、世界各地での成功例が積み重なっていくに連れて、マイクロファイナンスは世界中の貧困地域に広がりを見せています。
「Microfinance-Barometer-2021」によると、コロナ禍における2020年の世界のMFI合計融資残高は1,599億ドル、利用者は1億4,300万人と推定されています。コロナ禍前の過去3年間(2017年〜2019年)にかけての利用者数の年間成長率は6〜10%でした。2019年から2020年にかけては0.3%の増加であり、成長率は大きく減速したものの、途上国でも経済復興の兆しが見られるため今後さらに成長していくことが見込まれます。
参考:INPACT FINANCE BAROMETER 2021
“グローバルマイクロ貸付市場規模は2019年に1343.5億ドルと評価され、2027年までに3438.4億ドルに達すると予測されており、2020年から2027年にかけて12.6%のCAGR(年平均成長率)で目覚ましい成長が見込まれています”
参考:マイクロ貸付市場は2027年まで12.6%のCAGRで目覚ましい成長が見込まれています|Report Oceanのプレスリリース
マイクロファイナンスとSDGs
マイクロファイナンスはSDGsの17の目標の中では「SDGs1:貧困をなくそう」と密接に関係しています(SDGs1のターゲット1.4に「マイクロファイナンス」という言葉が使われています)。
“1.4|2030年までに、貧困層及び脆弱層をはじめ、全ての男性及び女性が、基礎的サービスへのアクセス、土地及びその他の形態の財産に対する所有権と管理権限、相続財産、天然資源、適切な新技術、マイクロファイナンスを含む金融サービスに加え、経済的資源についても平等な権利を持つことができるように確保する”
参考:SDGs1「貧困をなくそう」の企業の取り組み事例・私たちにできること | 株式会社プロジェクトデザイン
マイクロファイナンスの日本における事例
グラミン日本
グラミン日本はグラミン銀行の日本版であり「誰もがいきいきと社会で活躍し持続する社会」の実現をビジョンに掲げています。生活困窮の状態にあるシングルマザーや非正規雇用の女性に起業や就労の準備資金を融資し、経済的な自立を支援しています。
特徴は、5人1組のグループ貸付と低利・無担保での少額融資、起業就労トレーニングです。
“グラミン日本では、貧困ライン以下の生活困窮者で働く意欲と能力のある人に、5人一組の互助グループを作ってもらい、金融トレーニングと家庭訪問を経て、初回は20万円から融資を実施する。5人一組の互助グループは週1回の会合を行い、資金の利用状況をお互いに確認し合ったり事業の相談をしあったりする”
“融資されたお金は生活のために使うのではなく、起業や就労によって収入をアップさせるために使うことを求められる。日本では起業のハードルは高いイメージがあるが、実際にはほとんどの人が起業をしているという”
参考:応援し合い、助け合うコミュニティの場に。日本初のマイクロファイナンス、グラミン日本の挑戦|世界のソーシャルグッドなアイデアマガジン|IDEAS FOR GOOD
五常・アンド・カンパニー
五常・アンド・カンパニーは「すべての人に金融包摂を届ける」ことをミッションとするグローバル企業です。低価格で良質な金融サービスを2030年までに50ヵ国1億人以上に届けることを目指しています。これまで5カ国の途上国、9社のグループ会社に出資し、顧客数は120万世帯に到達しました。
”私たちは、お金をやりくりする手段を提供することで、顧客とその家族の家計の向上と、自分の未来を自分で決めることができる世界を実現することを目指します。そのためには、(1)ソーシャル・パフォーマンス・マネジメント(Social Performance Management, SPM)の国際規格に沿った質の高い金融サービスを提供すること、(2)その結果として、顧客が自分たちのお金をうまくやりくりできるようになることが重要です”
“2022年3月時点で、私たちは農村部に暮らす女性を中心とした120万人以上の顧客に、融資などの金融サービスを提供しています。2021年度は、昨年比2倍となる6億米ドル以上の新規融資を実行し、タジキスタンを新たに加えた5ヵ国へ事業展開国を広げました。27万人以上の顧客が預金サービスを利用しており、うち40%の顧客が任意で預金を預け入れています(預入金額:昨年比3倍の22百万米ドル)”
参考:五常・アンド・カンパニー2021年版インパクト・レポート
SAMURAI証券
SAMURAI証券は「金融をもっと自由で使いやすいものとする」をミッションの1つに掲げる企業です。少額の資金から運用できるクラウドファンディングサービス「SAMURAI FUND(サムライファンド)」を運営し、社会貢献しつつリターンが期待できるマイクロファイナンスへの投資も積極的に行っています。
2022年3月より、カンボジアのマイクロファイナンス金融機関 Golden Cash に対して貸付する貸付型クラウドファンディングサービスを始めました。
“Golden Cashはカンボジアで個人事業主向けや中小企業向けの事業ローン、個人向けのバイクローンや自動車ローンなどの貸付を行うマイクロファイナンス機関(以下、「MFI」といいます。)です。MFIとは貧困層向け小規模金融サービスの総称であり、金融インフラが脆弱な発展途上国を中心に急速に産業として拡大しました。大手企業では、2019年に大和証券がミャンマーでマイクロファイナンス事業への進出を表明し、2020年には第一生命保険がMFIへの融資を発表しています。近年、他のクラウドファンディング業者でもMFIへの貸付案件は増えており、その中でも今回の貸付先であるGolden Cashは認可を受けるためのハードルが高い、カンボジア中央銀行の認可を得ています”
サグリ
サグリ株式会社は「人類と地球の共存を実現する」をビジョンに掲げ、”衛星データ×AI技術”で農業と環境の課題解決を行う事業展開をインドで行なっています。
インドの農家の現状を調査したところ、肥料や農薬を購入する資金が必要だが信用不足のため、金融機関が貸し渋るケースが少なくありません。そこでサグリが人工衛星を活用した農地データを提供し、どれほどの収穫が見込めるのか定量化して伝えることで、金融機関はこのデータから将来の農家の収入見込みと返済能力を予測できます。このように金融機関から適正なレート設定での融資を引き出す、という仕組みでマイクロファイナンス事業を行なっています。
“インドでのビジネスモデルの特徴の1つは、「農家には課金せず、農地情報を与信情報として金融機関などへ販売する」という点だ。サグリは、対象となる農地の区画面積や作物の予測収穫量・収穫最適時期などを衛星データから分析・算出。農家に資金を貸し付けるマイクロファイナンス企業などの金融機関にレポートとして販売する。金融機関にしてみると、サグリと取引することで、貸し付け先農家の経営見通しを把握し、営農支援に応用できる有用な情報を入手できる。また、与信管理をし、円滑な資金の貸し付け・回収にもつながる。一方で農家は、情報を利活用するリテラシーを有しなくとも、農業資材などの購入資金を金融機関から調達しやすくなる”
参考:衛星データ×AIで世界の農業課題に挑む/サグリ(兵庫県)|ジェトロ
でじたる女子
でじたる女子プロジェクトは、就労機会を失ったシングルマザーをはじめとした女性にむけ、マイクロファイナンスによる教育費用、デジタル・ビジネススキル研修、就労・キャリア支援を一貫して提供しています。女性の経済的自立を支援するため、一般社団法人日本シングルマザー支援協会とグラミン日本、株式会社MAIAの3社がそれぞれが持つ知見やサービスを掛け合わせ、共に立ち上げたプロジェクトです。
“本プログラムは、グラミン日本がマイクロファイナンスにより教育費用を支援し、5人一組でのメンタリングサポートを行いながら、MAIAが「RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)」もしくは「SAP(SAP社のERPシステム)」に関するオンライン教育を実施しDXスキルを習得、MAIA及び日本シングルマザー支援協会のキャリアサポートの下、ソーシャル・リクルーティング・プラットフォームを通じて業務委託や正規雇用に結びつける、一貫性のある独自のキャリアプログラムです”
参考:シングルマザー向け『でじたる女子』プログラムを提供、第1期受講生を募集開始 :お知らせ|グラミン日本
応援投資(ソーシャルボンド)
株式会社丸井グループは、五常・アンド・カンパニー株式会社とクラウドクレジット株式会社との共創により、途上国の応援と資産形成を同時に実現できる金融サービスを提供しています。
“応援投資”は、“誰かの未来を応援したい”という社会貢献に取り組みたい気持ちと、“預金より高い利息収入”という資産形成を両立することをめざす新しい仕組みです。お客さまが社債を購入して参画いただくことで、お預かりした資金は、五常・アンド・カンパニー、クラウドクレジットを通じて途上国の低所得者層に融資されるなど、社会課題の解決に活用されています”
“当デジタル債は、証券会社が販売・顧客管理する従来の社債とは異なり、丸井グループが 直接お客さまへ販売し、顧客管理も行います。ブロックチェーン技術の仕組みを利用することで、エポスカード会員さま限定で、お一人でも社会貢献の取り組みに参加いただける選択肢の提供が可能になりました。また、お客さまからお預かりしたお金が、“実際どのように活かされているか”を当社ウェブサイトまたは統合報告書で、レポートにて定期的にお知らせする「ストーリー」をお届けし、社会貢献への参画を実感していただきます”
参考:エポスカード会員さま向けデジタル社債 2回債発行額決定のお知らせ|株式会社丸井グループのプレスリリース
【ご案内】SDGsの理解を深める、SDGsゲーム
私たちプロジェクトデザインでは「SDGs」や「地方創生」などをテーマにしたゲームを普及させることで社会課題の解決に挑戦しています。
大きな課題や問題を解決するには、より広く・効果的に伝え、多くの人の知恵を結集し、具体的な行動を起こしてもらう必要があります。その手段として何が良いのか。私たちが多くの挑戦の結果たどり着いたのが『ゲーム』というテクノロジーです。
今回はプロジェクトデザインが制作に関わったSDGsに関するカードゲームをご紹介します。SDGsの取り組みを進めていく上での参考情報としてお役立ていただけますと嬉しく思います。
3分でわかる!SDGsクイズとは
SDGsに興味のある方々が「そういえば、このSDGsに関連する用語の意味って何だっけ?」と思った際に、短時間で分かりやすく用語の意味を知ることのできるコンテンツ。
それが「3分でわかる!SDGsクイズ」です。
用語の意味を理解するに留まらず、その用語を “活きた知識” へと昇華するためのクイズコンテンツをご提供します。
この記事の著者について
執筆者プロフィール
氷見 優衣
神戸大学国際人間科学部環境共生学科の3年生(2023年時点)。高校生の時に参加したワークショップで、体験型のゲームコンテンツを通した社会課題の解決や参加者全員が主体的に生き生きと議論できる「場づくり」に魅せられる中で、体験型ゲームの開発元であるプロジェクトデザインと出会う。2022年の8月より、同社の長期インターンシップに参加。大学で学んでいる知識を活かし、環境問題や社会課題、SDGsをテーマにした記事の執筆に取り組む。ジブリ映画が大好きで、趣味は絵を描くことと、カフェ巡り。
監修者プロフィール
長瀬 めぐみ
岐阜県高山市出身、富山県滑川市在住。実家が100年以上続くお菓子屋を営んでおり、幼少期より観光や地域産業が身近な環境で育つ。高校時代、同級生が家業を知らない現実にショックを覚え、地域創生に関心を持ち始める。短大卒業後、すぐにUターン。まちづくりのNPOで子どもの教育支援や大学のない中山間地域へ若者を誘致するインターンシップ、農業支援などの取り組みで4年間で延べ600人以上の学生と関わる。様々な活動の中で、地域が元気になるためには、地元の若者が育つ仕組みと地域の大人が楽しんで地域に参画する土壌づくりの必要性を感じ、公立高校で学校と地域をつなぐコーディネーターなども務めた。体験から気づき、意識・行動変革をもたらすゲームコンテンツに魅力を感じ、全国に広めたい!とプロジェクトデザインに参画。地元飛騨が大好き。