新型コロナウイルス感染症の感染拡大をきっかけに、企業ではテレワークを前提とするニューノーマルな働き方がスタンダードになりつつあります。
このような変化に際して、企業では社員にどのような研修を提供すべきなのでしょうか?
本稿ではオンライン研修の特徴や可能性について触れつつ、ニューノーマルな働き方の中で社員に提供する必要性が高まるオンライン研修をご提案します。
オンライン研修とは
オンライン研修とは、Zoom・Google Meet・Microsoft TeamsなどのWeb会議ツールを利用した、オンライン環境で実施する研修を意味します。
オンライン研修は eラーニングと混同されることもありますが、オンライン研修がリアルタイム形式であるのに対して、eラーニングはオンデマンド形式である点に大きな違いがあります。
集合研修をオンライン環境で実施する場合には「コミュニケーションの必要性」の有無でオンライン研修にすべきか、eラーニングにすべきかを検討することを推奨します。
具体的には、研修でグループワークやディスカッションが必要であればオンライン研修にすべきで、そうではない場合は、受講者の好きなタイミングで自由に受講できるeラーニングが好ましいと言えます。
※WebセミナーやWebinar/ウェビナー(Web/ウェブとSeminar/セミナーを組み合わせた造語)も、オンライン研修と同様の意味になります。
オンライン研修のメリット
コスト面やスケジュール面で実施困難な集合研修が実施しやすくなる
研修受講者は、Web会議ツールにアクセスできるデバイスとネットワーク環境さえあれば、どこからでもオンライン研修を受講できるので集合研修で発生するコスト(研修会場費、研修受講者の交通宿泊費)を抑えることができます。
また、オンライン研修では研修受講に伴う拘束時間が研修受講時間に限定されるため、移動時間や現地滞在時間が不要になり、受講者のスケジュール調整もしやすくなります。
ゆえに、これまではコスト面やスケジュール面で実施が難しかった集合研修(海外拠点を含めた責任者クラスを集めた研修、全国に散らばる内定者向けの研修など)もオンライン研修であれば実施しやすくなります。
インタラクティブ(双方向)な研修設計ができる
Web会議ツールの機能を活用することでインタラクティブ(双方向)な研修設計ができる点もオンライン研修の優れた特徴です。
例えば「チャット機能」。受講者が講師に質問したい内容をチャット欄に記入することで、講師は適宜質問に回答することができるようになります。
また、グループワークやグループディスカッションが必要な際には「ブレイクアウトルーム機能(受講者を少人数のグループに分けることのできる機能)」が有効です。
そして、グループワークやグループディスカッションの発表をする際には、各グループの発表者が「画面共有機能」を活用することで、自身のPC画面を見せながらのプレゼンテーションが可能です。
オンライン研修のデメリット
受講者側の集中力の維持が難しい
オンライン研修では、幾つかの理由(下記)から、集中力を維持することが(集合研修と比較して)難しいと言われています。
- オンライン研修の場合、自身の画面をオフにできるので(または、画面をオンにしていても映るのは顔だけなので)、簡単に内職ができてしまう
- オンライン研修の場合、固定された姿勢で、かつ、集中状態でPC画面に向き合い続ける必要があり、身体的にも精神的にも疲れやすい
オンライン研修でも集中力を維持させるための対策としては、まずは、休憩をこまめに入れることを推奨します。その上で、研修プログラムの中にグループワークやグループディスカッションを設計することで、受講者側が主体的に研修に関わる必要性を作ることをお勧めします。
運営のサポート役が必要
オンライン研修にトラブルは付き物です。
- 低速のインターネット回線を利用している
- 非推奨のスペックのPCを利用している
- 非推奨のバージョンのブラウザを利用している
などのPC・ネットワーク環境に問題のあるままオンライン研修に参加する受講者への対応はもちろん、オンライン研修に不慣れな受講者のフォローをするとなると、講師とは別に、運営面のサポートを担う担当者をアサインする必要性があります。
ニューノーマルな働き方の中で必要になるオンライン研修とは
社員の意識改革を進めるオンライン研修
テレワークでは社員の仕事ぶりが見えづらいので仕事のプロセスで評価することが難しくなります。その結果、仕事の成果で評価する成果主義の色合いが強くなります。
もちろん、色の濃淡は企業によって異なります。成果主義に馴染みやすいジョブ型雇用の制度へのシフトを進める企業もあれば、制度は変えずに日報や週報を義務付けることで仕事の成果の見える化を進める企業もあります。
ただ、いずれにしても、働く側には「仕事の成果を意識した主体的な働き方」が求められることに違いはありません。
社員の意識改革を進める目的のオンライン研修の必要性は高いと言えます。
組織の結束を強化するオンライン研修
テレワークでは組織の結束力が問われます。
組織の結束はオフィスでのコミュニケーション手段(業務中の会話、休憩中の雑談、各種社内イベントなど)によって強化されてきた側面がある中で、その手段に頼れないテレワークではどのようにして組織の結束を強化するべきか?
固定メンバーだけであればテレワーク環境下でも組織の結束を強いままに維持できますが、組織は新陳代謝します。古い社員が組織から抜けて新入社員や中途社員が組織に入ってくる。組織のメンバーが入れ替わる状況を加味すると、意識的に組織の結束を強化するための施策を実施することが求められます。
その施策の一つにオンライン研修が位置づけられます。
社員の健康維持のためのオンライン研修
テレワークを始めてから不健康になった。そんな声を耳にします。下記のように、オフィスワークという働き方が思いのほかに自身の健康バランスを支えていたことを実感する方は多いのではないでしょうか。
- 通勤がなくなることで運動量が極端に減った
- 人目を気にする必要がなくなったことで食事量が増えている
また、テレワークは孤独です。
オンライン会議やチャットのようなやり取りはあれども、気の知れた仲間との雑談はなく、活気のあるオフィスの雰囲気から刺激をもらえることもありません。孤独に淡々と仕事に取り組む時間は精神的にストレスがかかります。
このような “働き方の変化” が社員の健康に与える影響に配慮し、社員の心と体の両面の健康を保つための支援をオンライン研修で提供することには大きな価値があります。
まとめ
オンライン研修を集合研修の代替手段として位置づけると
- 勝手が分からない
- 事前準備が大変
- 通信トラブルが気になる
などのデメリットばかりが気になるものです。しかし、オンライン研修のメリットに焦点を当てると、オンライン研修には集合研修では代替できない価値が見えてきます。
既存の集合研修のオンライン化を検討しつつも、このオンライン研修ならではの価値に着目した新しいオンライン研修の検討をしてはいかがでしょうか。
そして、新しいオンライン研修の検討を進める上では「これからのニューノーマルな働き方の中でどんな研修が必要になるのか?」という問いを考えることが重要になるのではないでしょうか。
本稿はそういった想いを込めて書かせていただきました。今後の研修を検討される中での参考になれば何より嬉しく思います。最後までご覧いただきありがとうございました。
監修者プロフィール
福井 信英
富山県立富山中部高等学校卒業、私立慶應義塾大学商学部卒業。 コンサルティング会社勤務、ベンチャー企業での営業部長経験を経て富山にUターン。2010年、世界が抱える多くの社会課題を解決するために、プロジェクト(事業)をデザインし自ら実行する人を増やす。というビジョンのもと、株式会社プロジェクトデザインを設立。現在は、ビジネスゲームの制作・提供を通じ、人材育成・組織開発・社会課題解決に取り組む。開発したビジネスゲームは国内外の企業・公的機関に広く利用され、英語版、中国語版、ベトナム語版等多国語に翻訳されている。課題先進国日本の社会課題解決の実践者として、地方から世界に売れるコンテンツを産み出し、広めることを目指す。 1977年生まれ。家では3人の娘のパパ。