【事例インタビュー】開発したオリジナルゲームを自動化し、運営の省力化とクオリティ向上を実現(島津製作所)

企業名:株式会社 島津製作所
業界業種:精密機器
事業内容:分析計測機器・医用機器・産業機器・航空機器の研究開発・製造
従業員数:14,219名(2024年3月31日現在)

本稿では、オリジナルビジネスゲーム開発をご依頼いただいた事例をご紹介します。

「科学技術で社会に貢献する」の社是のもとに、地球・社会・人との調和を図りながら社会課題に取り組み、豊かで安心・安全な社会の礎を築き、社会に必要とされる会社を目指す、株式会社 島津製作所(以下、島津製作所)。

2013年にプロジェクトデザインにご依頼いただき、インターンシップ用コンテンツとして開発したのがビジネスゲーム「島津の営業体験グループワーク RegistaREAL(以下、レジスタリアル)」です。インターンシップで毎年ご利用されているほか、2020年からは新入社員研修でもご活用いただいています。

しかし、島津製作所の業績向上に伴い、近年は新卒採用人数が140名程度に増加。「レジスタリアル」はロールプレイング方式で行うゲームのため、運営に多くの人員が必要となったことで、省力化とクオリティ向上が求められました。

そこで今回、ゲームの改訂をご依頼いただき、運営を自動化できるオンラインツールを開発したことで、運営人数を3分の1以下に絞ることを実現。営業教育ツールとして非常に完成度の高いものになりました。

今回のインタビューは改訂後の「レジスタリアル」がリリースされた2024年4月から2か月後に実施させていただいた内容をお届けします。

<お話を伺った方>

株式会社 島津製作所 人事部 東畑修平様

<企業プロフィール>

1875年創業の、分析計測機器・医用画像診断機器・産業機械のトップメーカー。気体から液体・固体まで、遺伝子やタンパク質、あらゆる物の性質を「分けて見る」ための技術を磨いている。分析・計測機器や産業機器、航空関連機器は多くの産業分野で採用され、顧客の事業を通して社会の安全・安心を守り、利便性を向上させる役割を果たす。また、医療機関における診断・治療・健康測定や新薬開発を支援する機器は、人々の健康な日々を支える大切な役割を担っている。

「島津の営業体験グループワーク RegistaREAL(レジスタリアル)」とは

「レジスタリアル」は、島津製作所のインターンシップに参加する学生に営業の仕事を体験してもらうビジネスゲームです。

グループに分かれ、それぞれに配布された情報を元に顧客役の「教授」や「代理店担当者」などにアポイントを取り、装置の提案をしていきます。

ワークに取り組むにあたって必要な営業としての基本情報は、A4で約10枚の営業マニュアルにまとめられています。営業マニュアルや追加で取得できる情報から自社装置の強みを読み取り、顧客のニーズに合致した装置をタイミング良く提案できる力が重要なロールプレイングゲームとなっています。

「レジスタリアル」はゲーム体験を通して、島津製作所が展開している事業内容や顧客のニーズを理解でき、技術部や代理店との関係構築などについて学ぶことができる特徴があります。

また、提案する過程において、顧客へのヒアリングやメール文の作成など、実際のビジネスシーンで求められるスキルを実践することができます。

研修で新入社員が用いるツールの基本画面。ワーク中に得られる全情報はこの画面に集約される
営業マニュアルの一部

島津のリアルな営業場面のシミュレーションを通して体感で理解

―今回、ご依頼いただいた背景や経緯を教えていただけますか。

東畑様:元々弊社がインターンシップ用コンテンツとして2013年にプロジェクトデザインさんに依頼し、開発したビジネスゲームが「レジスタリアル」でした。

営業職希望のインターン生に向けて実施しており、更新を加えながら現在も実施しています。

「BtoBの営業の仕事理解に優れたツール」「自分の頭で考え、島津のリアルな営業場面のシミュレーションを通して体感で理解することができる」と社内の評価も上々です。

「新入社員研修でも使った方が良いのではないか」という案がありまして、コロナ禍の2020年から3年間、採用グループがリモートで実施していたものを新入社員研修でも利用したという背景があります。

ところが近年、新卒採用人数の増加に伴い、140名以上の新入社員に対して実施することになったのです。ロールプレイング形式で2日間かけて行う「レジスタリアル」の運営には、顧客役がのべ20名程度必要になってきました。

その人員と工数の捻出が難点となり、今までの方式で回すことが不可能になってきたため、ゲームを開発いただいたプロジェクトデザインさんに再度お声がけをしたということです。

―ありがとうございます。「レジスタリアル」はインターンシップに加えて新入社員研修でもご活用いただき、ご満足いただけていたということですね。

東畑様:そこはもう、間違いないですね。

島津製作所の「レジスタリアル」を活用したインターンシップは、大変厳しいと学生界で有名です。ネット上の就活の掲示板にはゲーム内の登場人物名まで書かれるほど、噂になっています。私自身も「レジスタリアル」を体験した際は難しいと感じましたし、教授役の人が怖かったのを覚えています(笑)。

もちろんゲーム自体が厳しいこともありますが、島津製作所の事業活動について伝えるフィードバックが非常に高評価をいただいています。ゲームの登場人物は実際に社内で営業・技術などを経験した人間が演じており、新入社員がゲームを1度体験した後に、社員が「実際はこうですよ」などの話を折り混ぜることで、仕事に対する理解も深まります。

入社後に「実はインターンシップが良かったので入社しました」という新入社員も多いので、我々の人事・採用教育の中では、この「レジスタリアル」というゲームはもう共通言語・ゲームありきの話になっているほどです。

―大変ありがたいお言葉です。

改訂で省力化・クオリティ向上(ラーニングポイントの担保)を実現

―今回ご依頼いただいたのは「レジスタリアル」のゲームの改訂ということでしたが、具体的にはどのようなご要望をいただいたのでしょうか。

東畑様:省力化、かつ品質担保です。

ゲームでは運営側の登場人物が多いため、これまで2日間かけて行う中で、延べ20名以上の人員が必要でした。それを、改訂後は1日につき3名、2日間で延べ6名という少数人員で回し切ることができるようになった省力化が1番大きいですね。

その上で、品質担保以上に、オンラインのシステムを使ってのクオリティ向上を実現していただきました。

研修ではゲームがリアルタイムで進む必要はなく、ラーニングポイントがどこで、それをいかに持って帰ってもらえるかが勝負です。プロジェクトデザインさんには事前にラーニングポイントをきちんとお話しできたので、そこがきちんと具体化できたところが良かったと思います。

―クオリティ面では、ラーニングポイントをより押さえられるようになったということですね。

東畑様:はい。特に今回、ゲーム内のフェイズを仮説構築・調整訪問・提案の3つの場面に分けて進行する形にしたのが、受講者にとってプラスだったと思います。

改訂前はフェイズを分けずにゲームが進んでいたため、チームによる進行度合いに大きな差が生じ、最終商談に至らず途中で終わるチームも出ていました。本来は全てのフェイズを疑似体験させたかったのにできなかったということです。

そうすると、丸1日通してゲームを行う中で、受講者の記憶に残るのは最後の 30分程度です。そこから「全部振り返ってください」と言っても、結果のところしか見ない人が多いのも難点でした。

それを今回はフェイズを3つに分けたことで、フェイズごとの進行や結果がどうあれ、次のフェイズで全チームのスタートラインが再度並ぶ形にしました。

その結果、どこかのフェイズがうまくいかなくても、最終提案まで全チームが疑似体験できるようになりました。また、フェイズごとにふり返りをすることで、元々営業だった私から見ても、持って帰ってもらえるものが分厚くなった印象です。

また、チームそれぞれの得点評価も行うため、不公平感もない仕様と言えます。

各チームのワーク結果は全20項目で採点。進捗状況がリアルタイムに分かる(※画像の一部に加工処理を施しています)

―全チームにすべての流れを体験してもらえるようになったのですね。

東畑様:はい。今までは最後の提案にたどり着かなければ、そこを経験せずに話だけ聞いて終わりでしたが、改訂後はゲームがどれだけ進んでいなくても最後の提案に到達するようにしました。

最終提案を持っていき、価格の交渉や予想までを全員が確実に体験できたので、そこは間違いなく大きな進歩だと思っています。

「レジスタリアル」の大元の目的は「島津のバリューチェーンを理解する」、そして「営業活動のいろはを知ってもらう」ことです。最初に行う「アポ取り」はゲームだと1時間弱で済んでしまうのですが、そこにしっかり時間を使ってふり返りも行う設計としたので、アポイントを取る重要性をまず理解してもらえます。

次に、ゲームの中だとたった1回ずつですが、1発目の提案を持っていく難しさと、1回目のヒアリングの難しさにフォーカスを当てています。

―島津製作所様の営業のお仕事は、最初のアポを取るところと提案、ヒアリングのアクションが重要なのですね。

東畑様:非常に重要だと思います。その理由としては、島津製作所の装置は高価なものなので、お客様が「とりあえず買う」ものではないということです。

ただ待っていても売れないため、お客様が気づいていない使い方やニーズを掘り出すことが不可欠です。「御用聞き」では絶対に買ってもらえない業界であるので、仮説立案をして持っていく1発目の提案は非常に重要です。

―そうすると、自社の装置について知り仮説を立てて提案する、その重要な部分を体験できるということですね。

東畑様: はい。元々2013年に作ってもらったゲームもそうですが、お客様のことをしっかり理解していないと装置を売れないゲーム設計にしてもらっています。

リアルでも、うちの装置にめちゃくちゃ詳しい営業マンは意外とおらず、どちらかと言うとお客様のことを何でも知っている営業マンが、「装置のことなら任せとけ」という技術の人とタッグを組むことが多いのが現実です。そこを一歩踏み込み、顧客理解につながる仕掛けにしてもらったのも良かったところです。

技術職が営業職の仕事を理解し連携につながる体験

―ほかに、「レジスタリアル」の特に良いと思っていただいているポイントはどこでしょうか。

東畑様:1つは、うちの営業スタイルを知ることができたところ。

2つ目は、営業職の体験ワークとは言え、営業だけでなく技術職のためにもなる要素がたくさん入っているところです。

うちの社員の8割は技術職で、営業職は2割前後なのですが、例えばリアルに「特注の案件」などがあるんですね。ゲーム内でも、技術の人は特注の仕様の打ち合わせを通して自分たちが営業さんとどう関わっていくかを学べますし、工場が納期調整するフェイズでは、工場がお客様にどういう価値提供をしているかまで知ることができます。

ゲームに没頭している中で、自然と会社のバリューチェーンの理解に繋がります。

あとは全体的な意味で言うと、実際の営業現場に同行せずに営業を体験できるところが3つ目です。

―「レジスタリアル」を体験することによって、実際に働いた時に技術の方々が営業の方とコミュニケーションを取りやすくなる場面もあるのでしょうか。

東畑様:もちろん、十分にあると思いますね。イメージがつきやすくなると思います。

―このゲームの改訂に関してご要望いただいたことは全部反映できていたでしょうか。

東畑様:はい、もう感謝しかありません。何度も打ち合わせしてもらった中で、納期通り、むしろ早いうちに納品いただけたので良かったです。

1つ後悔しているのは、私たちが「3人で回す」と言ったことぐらいです。運営側は休憩なくやり続けるため、2日目の終わった後などは誰も何も言えないくらい疲労感たっぷりで…。丸一日集中していた私たちが1番頑張りました(笑)。

―20人以上で実施するところを3人で運営する際には、1人何役もされるわけですし、相当の集中力が求められますね。ちなみに、今回追加した新しい機能で、メールとツール一覧についてはいかがでしたか。

東畑様:まずは全体として良かったと思っています。メールを実際に書く練習ができたのはもちろんですし、アポイントの取り方も時代によって変化しています。今はリアルでも電話かメールでのアポイントがほとんどなので、体験してもらえたのが良かったです。

運営はメールの返信が忙しくて大変ですが、あれは学びが深まるため、来年もやらないといけないと思います。

ツール一覧は、とても作りこまれていて見やすく、やりやすかったです。スプレッドシートであそこまでやってもらえるなんて感動しました。

メール画面。お客様に対して送ったメールの内容に応じて、半自動化された返信が運営から返される(※画像の一部に加工処理を施しています)

営業の目線を身につけることでアウトプットが変化

―受講された新入社員の方々が回答された「有益度評価アンケート」で、「レジスタリアル」は高得点を付けていただいたと伺いました。

東畑様:そうです。研修のセッション全ての合計が5段階中4.58だったのが、「レジスタリアル」は4.75でした。全員ではないですが、100名以上の方に回答いただいた結果です。

高評価の理由はここまで話したことに加えて、多分1番楽しかった研修だからだと思います。ワークショップ型でじっくり考える研修とひたすらインプットする研修がある中で、ワークショップ型、かつ自由にできる度合いが高く、ゲーム性もあるため、楽しんでもらえたのは間違いないですね。

それでも、楽しいだけだと、うちの社員は「楽しかったけど、何の意味があるか分からなかった」などと、とても低い点数をつけてくるんです。「レジスタリアル」にはそういう話もなかったです。「楽しかったし、きちんと振り返ってみると重要なところが学べて良かった」、そういう声が上がっていたので、そこが高かった理由じゃないでしょうか。

―ありがとうございます。では次に、研修を受講された方々の変化や気づきについてもお聞かせいただけますか。

東畑様:うちの新人研修の体系は、グループ学習となっています。

1か月かけて行う新入社員研修の最初にマインド系やマナー系など、社会人としての基礎を学び、その後すぐにグループを作って「こういうことを1か月でやってもらいます」とお題を与えます。「島津の力で世の中の課題を解決する」というお題で最終プレゼンテーションを行うものです。

次に営業系、ロジカルに物事を伝える研修、最後に「実は製造もありますよ」と工場の方々からの研修を受けてもらうなど、何回か巻き直しのフェイズがあります。社員にインタビューするといったグループワークを行う中で、「レジスタリアル」の体験後には急にプレゼンテーションの内容が変わるんです。

これは我々の仕掛けが幸いにもうまく合致してくれているところです。

私の印象としては「レジスタリアル」を実施した後には全体のバリューチェーンを考えるようになると感じます。「どうやって販売するか」を考える際、営業の目線がないと「とりあえず1対1で販売する」しか知らなかったのが、「代理店を使う」など、具体的なものに変わるんですよ。

もうスポンジのように吸収してくれるので、本当に面白いですね。やはり全体の設計にうまくフィットしている研修だと思っています。

新入社員研修の様子

―課題解決に関しては、「何となくアイデアを出す」ところから、よりリアルに「どう売るか」に向かっているということですね。では、このゲームを活用しての今後の展望などもお聞かせいただけますか。

東畑様:はい。長期的な話になってしまうかもしれないですけど、また異なるラーニングポイントも盛り込んでいけると面白いかなと考えています。バリューチェーンの部分は全新入社員に担保できていると思うので、うちの営業のやり方をもっと深く知ってもらうために、まだアレンジできる要素があると思っています。

日常的に営業をしていると想定外の事態は多々起こるので、そういったタスクマネジメントや緊急対応をどうするかも盛り込んでいけるといいですね。

据え付け問題やトラブル対応などの泥臭い部分、大変だけど営業が頑張っているところも、技術職に理解してほしいと思います。やっぱりトラブルが起こると技術職に渋い顔をされるのですが、「お客様の前でその顔はできないですよね」と。そういうところを全社員に知っておいてほしいです。

―ゲームをパッケージのまま活用されるだけでなく、さらにブラッシュアップされていく感じですね。今後ともよろしくお願いいたします。本日はありがとうございました!

実施内容

研修の様子

ロープレ形式で行われるお客様との面談結果も半自動で記録され、運営の労力を極力少なくしている(※画像の一部に加工処理を施しています)
新入社員研修で名刺交換の練習
新入社員研修のグループワーク

参加者の声

“営業体験をすることで、技術者としてどのような行動をすれば営業のためになるのかを学ぶことができた”

“チームで動くときに自分に何ができるかを考える癖がついた”

“営業活動はこれまでまったく無知だったので、その一歩を踏み出すという点で有益だった。また、チェックポイントをクリアしていくことで売上額が自然に増えていくスタイルだったので、終わった後のふり返りがやりやすい制度設計になっており、その点でも有益だった”

“技術職では営業の仕事を知る機会がなかったので、他人から聞くのと自分がシミュレーションするのでは後者の方が圧倒的に理解が深まると感じた。したがって会社の利益創出を知る上でためになったと感じた

“自分から話し倒すのではなく、聞き手に回り相手の情報を引き出す姿勢が大切だと学んだ。グループで分担して進める方法も試行錯誤しながら学ぶことができた”

ご案内

プロジェクトデザインでは、今回のカードゲーム「レジスタリアル」のように、オリジナルゲームの開発を行っています。人と組織・社会の課題をビジネスゲームで解決する会社として、お客様の課題解決に貢献するオリジナルビジネスゲームを提案します。

仕事や現実の世界で求められるエッセンス(考え方や行動)を抽出し、繰り返しトレーニングできるように作られたオリジナルビジネスゲームは「自社のビジネスや仕事の魅力を短時間で分かりやすく伝える」ことが得意です。インターンシップや新卒採用、内定者研修などの様々な場面でご活用いただけます。

オリジナルビジネスゲームは貴社の教育研修コンテンツとして販売可能です。また、開発したオリジナルビジネスゲームについて、当社が販売支援・研修代行などの形で関わらせていただくことも可能です。どうぞ、お気軽にご相談ください。

皆様の想いを大切にしながら、私たちプロジェクトデザインの知見と強みを活かし、貴社のビジョンを見える形にしていきましょう。

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〈文=古野知晴(chiharu.furuno)〉

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