
【実施レポート】学校向け無料開催キャンペーンで「CHANGE FOR THE BLUE」カードゲームを体験(江田島小学校5年生)
本稿では、「CHANGE FOR THE BLUE」カードゲームを学校の授業に活用した事例をご紹介します。
「CHANGE FOR THE BLUE」カードゲームは、海洋ごみ問題について考えるゲーム型のアクティブラーニング学習教材です。小学生高学年から高校生向けに、総合的な学習(探究)の時間やSDGs授業でご利用いただけます。
海洋ごみ問題への興味関心を引き出し、ゲームの体験と振り返りを通じて、対話的かつ協働的な学びを深める仕組みがあります。
私たちプロジェクトデザインでは、「CHANGE FOR THE BLUE」カードゲームを全国の学校にお届けするため、2024年7月から12月に「学校向け無料出張キャンペーン」を展開いたしました。
このキャンペーンにご応募いただいた広島県江田島市立江田島小学校(以下、江田島小学校)で、2024年10月2日、5年生34人に体験いただきました。
体験した児童にどのような学びが得られ、実施後にどのような変化が生まれたのか、担任の先生にインタビューした内容をお届けします。
<お話を伺った方>

<江田島小学校プロフィール>
広島湾に浮かぶ江田島の海沿いにある小学校。「まっすぐ しなやかに ねばり強く~学びをつなぎ、ともに創造しようとする児童の育成~」が教育目標。一人一人が主体的に学び、多様な人々と協働して、新たな価値を創り出そうとする基盤づくりのほか、「里海」を教育資源と捉え、自然体験活動や探究活動の充実を図り、自然に対する好奇心や探究心を育むことを目指している。
「CHANGE FOR THE BLUE」カードゲームとは
「CHANGE FOR THE BLUE」カードゲームは、海のごみや汚れを減らす行動のシミュレーションを通して海洋ごみ問題について考えるきっかけとしてもらえるように「CHANG FOR THE BLUE in富山実行委員会」とプロジェクトデザインが協業で開発したゲームです。
ゲームでは、参加者全員が12の役割に分かれ、海洋ごみを減らすためのプロジェクトを実行していきます。
自らが選択した行動によって地域の状況を示すパラメーターが変化することで、「その行動が海の環境にどう影響するのか」「海の環境を良くするための行動はどれか」などを考えます。それにより、日常生活に “海洋ごみ問題を減らす行動” を取り入れるきっかけを生み出します。
また本ゲームは、取るべき行動を自分たちで考え、実行に移していきます。これにより「主体性を持って学習する力」が身に付くだけではなく、仲間と協力して問題を解決する「社会能力」や「課題を発見し、解決する力」も身に付くため、アクティブラーニングに最適です。

さとうみ学習を深め「主体的に活動する力」を身に付けられる学習教材として選定
ー今回、本キャンペーンにご応募いただいたきっかけを教えてください。
佐々木様:本校の卒業生でもあり、プロジェクトデザインに勤務されている山口明菜さんからメールをいただいたことがきっかけです。
江田島小学校の5年生は、総合的な学習(探究)の時間に「故郷の海について知ろう」とテーマを設定し、さとうみ学習をしています。さとうみ学習では、SUP(サップ)やカヌー体験、生き物観察などを通して江田島の海の良さを知り、今後どのように海を守っていくかを考えています。
山口さんからは、「さとうみ学習と関連づけて『CHANGE FOR THE BLUE』カードゲームを実施してみてはどうか」とご提案をいただきました。
ー総合的な学習(探究)の時間やSDGsに関する授業を行うにあたり、苦労されていることはありますか。
佐々木様:子どもたちに現実社会をどこまで知らせるか、どのように学習に落とし込んでいくかという点に課題意識を持っています。
総合的な学習は小学校3年生から始まります。江田島小学校では学年ごとにテーマを設けており、今年度のテーマは、3年生が牡蠣やオリーブなどの地場産業を中心とした「地域のよさ」、4年生が「福祉」、5年生が「さとうみ学習」、6年生が企業の協力を得て特産物の商品化を行った「ふるさとの自慢」です。
これまでは地域と連携して学習を進めることが多く、最近では地域外の企業とも連携しています。地域を超えた企業と連携する良さは、考え方や方法・工夫など、学校内では出てこない案やアドバイスをいただいて、学習をさらに広げることができる点です。
しかしその一方で、学校教育の目標と企業が目指す姿にズレが生じ、子どもたちが思い描いたことを実現できないなどの問題も出てきます。子どもたちの思いをどこまで叶えられるか、現実とのギャップをどのように埋めていくかは非常に難しい問題です。
さらに総合的な学習は、準備段階でどのように学習に落とし込んでいくかが重要です。私たち教員が企業との打ち合わせでズレを修正したり、計画を綿密に練る時間を確保できたら良いのですが、実際には十分に時間を取れない現状もあり、活動を外部に広げれば広げるほど難しくなっていきます。
ーそのような中で、ゲーム型学習にはどのような期待を持ってご応募いただいたのでしょうか。
佐々木様:さとうみ学習をより深める手立ての一つになると考えました。
実施前から「楽しそう」「面白そう」という印象は持っていましたが、それ以上に参加者の意識や行動の変容が見られることに期待を抱いていました。
カードゲーム体験を通して、これまでとは違う視点から自分たちの生活を振り返ることで、児童一人ひとりが学びを生活に活かすきっかけになるのではないか。また未来を見据え、持続可能な社会を形成する一員として、できることに取り組む意識や意欲を高められるのではないかと考えました。
ー「CHANGE FOR THE BLUE」カードゲームの実施を決めた理由を教えていただけますか。
佐々木様:まずゲーム内容が5年生の学習テーマと合致し、外部と年間計画を策定して通年で、または長いスパンで進めていく学習と比較すると、導入のしやすさがあったからです。
さらに、教員が児童たちに望む「自分の考えを実際の行動につなげる力」を身に付けられる学習教材であったことが大きな理由です。
海のすぐそばに学校がある私たちにとって、海は生活の一部であり、当たり前にあるものです。さとうみ学習をする上でも十分に学習環境は整っておりますし、児童も海に親しみを持っています。
しかしながら、この環境が当たり前すぎて、海辺にごみが落ちていたり流れ着いていたりするのを日常的に見て「拾ったほうが良い」と頭では理解しているものの、「ごみを拾う」主体的な活動にはつながっていませんでした。これまで様々な学習を通して海への理解や愛情を深める活動をしてきたものの、身に付けたい「主体的に活動する力」を得るには不十分だと感じていたのです。
カードゲーム体験から生まれた、「全員で海を守る」意識の高まり
ーカードゲーム実施中の子どもたちの様子はいかがでしたか。
佐々木様:外部講師を招いてゲーム型の学習コンテンツを実施したのは、今回が初めてです。児童には「さとうみ学習と関連づけてカードゲームをする」と話しておりましたが、非常に興味を持ち、実施するのを楽しみにしていました。
始めは「小学生には難しいのではないか」「説明だけでルールや役割を理解して進めていけるのか」と心配していました。
しかし、2ターン目からはスムーズに進行できるようになり、海のごみや汚れを少なくするという共通の目標に向かって、それぞれの役割でしっかりと考えて、行動できたと思います。また、取り組みをただ進めていけば良いのではなく、市民意識や技術が高まっていなければ逆効果になることも感じ取ることができました。
ゲームが進行するうちに、全員が同じ目標に向かって協力しながら取り組む一体感が生まれ、非常に盛り上がりました。

ーカードゲーム体験を通して、どのような学びが得られましたか。
佐々木様:海の豊かさを守っていくにはどのようなことが大切なのかを、楽しみながら学ぶことができました。
物事の捉え方も多角的になり、一人ひとりが意識を高める重要性に気付くきっかけを得られたと感じています。
それぞれの職種や立場で役割を果たしながら、全員で「海を守る」意識を高めることが大切だと分かり、自分一人ではなく、それぞれの立場で物事を考えていく姿勢を身に付けられました。

ーカードゲーム実施後には、具体的にどのような行動変容が生まれたのでしょうか。
佐々木様:授業に関係なく、放課後には海辺へ行き、ごみ拾いをしている児童が何名もいます。
この「拾ってみよう」という気持ちが生まれたことが大きな変化です。海辺には自主的にごみ拾いをされている地域の方もいらっしゃるのですが、これを機に交流も生まれています。

佐々木様:ゲームでは、自分の排出したごみが全て海洋ごみにつながることを学びました。終了後の感想で「これから自分はどう生活していきたいか」について、具体的に述べられていました。
海辺に流れ着いたごみを拾うだけではなく、例えば「魚釣りをする際に、釣り針や糸を捨てない」「公園で食べたお菓子のごみは持ち帰る」など、日々の生活から見直し、マナーを守ることが児童の心に強く響いている印象を受けています。
また「ごみを拾う」「ごみを出さない」といった行動の変化以外にも、立場や役割の違う人と協力する姿勢を学んだことで、学校内での下級生との関わり方や対応の仕方にも変化が生まれたように感じています。
ー今回初めてゲーム型学習コンテンツを授業へ取り入れていただいたとのことですが、どのような感想を持たれましたか。
佐々木様:このゲームは、「汚れ・便利さ・市民意識・技術」がメーターで可視化されていたため非常に分かりやすく、海洋ごみ問題について楽しく学べました。
また、自分の考えを持ち、相手の考えを知る活動を通して、生きていくための資質や能力を高められたと感じています。
自分の考えを持った上で周りに意見を聞くことで、自己の考えが高まります。さらにグループを超えて「こんなことをしてほしい」と相談することで、コミュニケーション能力が高まるとともに、自己表現にもつながります。
このカードゲーム体験を通して海やSDGsへの理解を深められただけでなく、人と関わることや先を見通す力など、普段の生活の中で活かせる力を身に付けたことが大きな価値だと思います。
身近にある海を未来へつなげるために
ー今回の体験から、授業や日頃の生活にどのようにつなげていきたいですか。
佐々木様:身近にある海を未来に残していくために、自分たちができることを考えていきたいと思います。今回は学んだことを活かしながら、ビーチコーミング(海岸や浜辺に打ち上げられた漂着物を収集すること)や漂着物アートの制作も行いました。

佐々木様:今後、他地域の学校にも海の豊かさを知らせる活動を進めていく予定です。また校内でもカードゲームの実施効果を伝えていきたいと思っています。
ー最後に、全体での感想や、授業にゲーム型コンテンツを取り入れようと考えている学校に向けてのメッセージをお願いします。
佐々木様:「CHANGE FOR THE BLUE」カードゲームは、児童が自分の考えを伝え合い、相手の意見と比較する中で、より良い選択を見出す活動を繰り返しながら海の環境について学習を進めることができる、非常に楽しいゲームです。ぜひ一度体験してみてほしいと思います。
ー今後の活動も応援しています。本日はありがとうございました!
参加した児童の感想
ゲームを体験した5年生の児童の中で、代表の3人も感想を話してくれました。
-1024x768.jpg)
“思っていたよりも難しかったけれど、最終的にごみを減らせて、市民意識も上げられたので嬉しかったです。ゲーム中は友達との交流もあって楽しく、クラスの団結も高まったと思います。また、ゲームを通して改めて江田島の海の良さを知ることができました。地域の人に知ってもらい、色んな人が見たくなる綺麗な海にしたいです。 ゲーム後には、海辺で拾ったごみでアート作品を作りました。「ごみを拾おう」と思ったのも、カードゲームで学んだことがきっかけです。家でのごみの分別も自分から進んでやるようになり、家族には「進んでやるのはすごいね!」と驚かれました”
江田島小学校 5年1組 濱﨑 杏月(はまさき あずき)さん
-1024x768.jpg)
“ごみが増えたときは焦ったけれど、最後はみんなで協力してごみを減らせたので良かったです。ゲーム中は他のグループの友達とも話し合い、「ごみを減らせたらこのカードを使おう」などと相談しました。みんなで積極的に話し合って行動できたと思います。 ゲーム後、友達と遊ぶ約束をして浜辺に行ったときに、一緒にごみ拾いをしました。それをきっかけに、地域で砂浜を綺麗にしている人とも話すようになりました。今までは意識していなかったけれど、これからもごみ拾いを続けていきたいです”
江田島小学校 5年1組 宇根 拓海(うね たくみ)さん
-1024x768.jpg)
“初めはみんなの考えがバラバラだったけれど、途中から「みんなと協力してごみを減らそう!」と行動しました。ゲームは想像以上に難しかったけれど、楽しかったです。 また、ゲームを体験して「ごみ拾いをした方が良い」と思うようになり、今までは面倒くさいと思っていたごみ拾いも進んでできるようになりました。自分でごみを出さないように、マイバッグも持っています。江田島の海は、魚がたくさんいる良い海です。釣りにもよく行くので、この豊かな海を守っていきたいです”
江田島小学校 5年1組 奥 幸大(おく こうた)さん
その他児童の感想
“カードを使って思い通りの結果にならなかったけど、リザルトカードを見て、「なるほど!」と思った。江田島もこのようになればいいなと感じた”
“自分が起点になって、ペットボトルをマイボトルにしたり、海のごみを少しでも減らしたりして、世界へつなげていきたいです”
“今回のことを活かして、海の生き物がごみを食べて死なないようにボランティアをしたり、ごみを分別したりして、自分たちでできることをしていきたいです”
“自分だけでは海はきれいにならないから、皆に協力してもらわないといけないのだと思った”
“自分ができることは人に頼らず、自分から進んでごみ拾いなどをしたいです”




※江田島小学校のHPでも、体験の様子をご紹介いただきました。
参考:5年 さとうみ学習(海洋ごみ問題を考える)|広島県江田島市立江田島小学校
※代表児童がインタビューを受ける様子もご紹介いただいています。
当日のファシリテーターより
「カードゲーム楽しかった~」「もう一度やりたい! 次はごみ・汚れゼロにしたい!」
体験会が終わりカードを片付けていると、児童たちが集まってきて感想を伝えてくれました。準備の苦労が報われる瞬間です。
最初に休憩でざわざわしている教室に入室、カードを机の上に並べ始めると児童たちが周りに集まってきました。興味深くカードを眺める児童を横目に準備を着々と進め、時間通りに体験会がスタート。ゲームが始まると、積極的に活動するあまり、若干混乱したのですが、プロジェクトデザイン山口様の協力で乗り切りました。
前半は一人ひとりがごみ・汚れを減らしたいと頑張ったにも関わらず、逆に増えていってしまいました。後半はチーム間でのコミュニケーションが活発になり、ごみ・汚れが少しずつ減っていったのですが、ゼロには出来ずゲーム終了。ゲーム体験後のチーム対話では意見が尽きず、ゲーム中に感じたことを聴き合ってもらいました。
振り返りシートを読みながら、児童の皆さんには、自分が起点となって海を綺麗にしていける、世界を変えていけると体感してもらえたのではないかと感じています。
このような機会を頂き、プロジェクトデザイン様に、改めて、感謝いたします。
サステナブルみはら
安藤 真

私がゲームを通じた学びに魅了され、2024年3月にプロジェクトデザインに入社して以来、江田島の子どもたちにもぜひ「CHANGE FOR THE BLUE」カードゲームを体験してほしいと思っていました。思い切って母校である江田島小学校にゲームを紹介するメールを送ったところ、佐々木先生から「一度話を聞きたい」とのお返事をいただき、すぐに社内担当者へつなぎました。
ゲーム実施当日、小学校にドキドキしながら向かいました。実は私が卒業してしばらくして小学校は建て直しを行ったため、今の校舎には初めて足を踏み入れたのですが、不思議と懐かしさがこみ上げます。
教室では、ゲームにワクワクしている雰囲気が教室全体に漂っていました。児童の皆さんは、ゲームの最中にも「いいことに見えても良くないこともあるんだ」など様々な気付きを見つけており、その様子を微笑ましくも頼もしくも感じました。
今後も継続して島内で「CHANGE FOR THE BLUE」カードゲーム体験から多くの気づきが生まれるよう、サポートして参ります。
株式会社プロジェクトデザイン
山口 明菜

ご案内
“総合学習の時間に、SDGsをテーマにした授業を実施しようと考えているものの、どのように授業を設計したら良いか分からない”
“過去にSDGs学習を実施したものの、SDGsはテーマが壮大過ぎて、どこか他人事のように考える生徒が多かった。生徒自身が、自分の身近な問題としてSDGsを捉えることができて、主体的に学びを進められるような学習法が見つからずに困っている”
これらの悩みを解決する一つの手段として、「CHANGE FOR THE BLUE」カードゲームをお勧めします。ご興味を持っていただけたのであれば何より嬉しく思いますし、話を聞いてみたいと思われる場合は、ご遠慮なくお問い合わせください。
なお、私たちが手がけている「CHANGE FOR THE BLUE」カードゲームには、小中学校や高校の「探究」や「アクティブラーニング」の授業の「問い作り」への振り返り方法、ゲームとフィールドワークをセットにしたワークショップなど、多様な活用方法があります。
探究学習の授業でより効果的な学びや取り組みを探している先生は、ぜひキャンペーンの活用もご検討ください。