【公認ファシリインタビュー】「総合的な探究の時間」の授業教材に使えるCHANGE FOR THE BLUE カードゲーム(富山第一高校の氷見栄成さん)

実際に「CHANGE FOR THE BLUE カードゲーム」を利用している公認ファシリテーターの生の声を通じて、ゲームの活用イメージをご紹介する、公認ファシリインタビュー。

今回は富山第一高校で生物教師を務める氷見栄成さんへのインタビューをご紹介します。「総合的な探究の時間」の授業で「CHANGE FOR THE BLUE カードゲーム」をどのように活用されているのかをお聞きしました。

ファシリテーター紹介

氷見栄成さん

現職は富山第一高校の生物教師、自然科学部の顧問をされています。「総合的な探究の時間」で学年の設計や運営を行う役割を担われています。

2016年の東レ理科教育賞奨励作の受賞を期に、教師が一方的に知識を提供する授業形態から、生徒自身が問いを立て主体的に学ぶ授業展開への転換を模索してこられました。その過程でSDGsについて知る機会を得、2018年6月より2030SDGs公認ファシリテーターとしてSDGsの理念と本質を広げる活動を始められました。

2030SDGsを総合的な探究の時間の導入的活動として位置づけ、3年をかけて全生徒(約1200名)に提供したとのことです。社会課題を基点とした探究活動を充実させるために、SDGs de 地方創生、SDGs Outside-in、風水害24、LEGO®SERIOUS PLAY®も活用しておられます。

<富山第一高校について>
富山第一高校の校訓は「剛健・練体磨心」。心身強く健やかな日本の将来を背負う青年たちを育てることが富山第一高校の教育目的です。知性を磨き才能を磨きスポーツを愛しその精神を体得する若きチャレンジャーの努力と実績を応援します(富山第一高校HPより引用)。

富山県内ではスポーツの強豪校とも知られ、卒業生がプロの世界でも活躍されています。

公認ファシリインタビュー:富山第一高校の氷見栄成さん

教材研究や授業の設計に苦労している先生が多い

ー「CHANGE FOR THE BLUE カードゲーム」をどのように活用されているのかの前に、今の学校教育で求められている「総合的な探究」やアクティブ・ラーニングについて、現場視点の見解をお聞きしたいです。
氷見さん:おっしゃる通り、今の学校教育では「生徒がどの様に主体性を発揮するか」をテーマにした授業設計が教師側に求められています。しかし、実際は「授業をアクティブに行う」という言葉に捕らわれすぎて “活動あって学び無し” の授業になっている。そんな問題意識が現場にあります。
ーアクティブ・ラーニングという手段が目的化している、ということでしょうか?

氷見さん:その通りです。アクティブ・ラーニングは手段の一つでしかありません。授業を通して、生徒が互いにキャッチボールをしながら、自分がこうしたいという主体者意識がしっかり生まれ、構築的に学びを得て行くのが本来の目的です。ただ、「何を、どのように学ぶのか?」という教材研究や授業の設計に苦労している先生が多いのが現状です。

ー生徒の興味のあるテーマを学べば良いと思うのですが、それでは駄目なのでしょうか? 例えば、SDGsについては小中学校で学んでいるので、興味を持っている生徒も多いと思います。

氷見さん:生徒自身が興味のある分野や、大事に思う事などを持っていてくれれば、それをテーマにして授業を進めて行けばいいのですが、なかなかそうは行きません。実際は、生徒自身が主体的に興味を持つ分野を探す事は、思うほど簡単な事では無いんです。「本気になってくれない」という問題に一番苦労しています。

また、SDGsの授業で取り扱う環境問題や社会課題は、自分とは遠い世界に感じている生徒が大半です。小さいころから、人ごとの環境問題を言われ続けると、環境問題アレルギーを生んでしまう事さえあります。

生徒に色々な「体験」をさせてあげることの難しさ

ー生徒さんに自分の興味のある事を見つけてもらう為には、何が必要だとお考えですか?

氷見さん:生徒には、まず色んな「体験」をしてほしいと思っています。その為に外へ出て、色んなモノに触れ、社会に起こっている事を生活に紐づけ、自分事として捉える事で、大切にしたい価値観を得るきっかけになると考えています。

ーそれでは、学校側としても様々な経験を促すような取り組みをされているのでしょうか?

氷見さん:価値変容から行動変容へ繋げて行くような体験を色々させてあげたいのですが、今、学校は色々な制約の中で動いています。生徒を安易に車に乗せて出掛ける事も出来ないし、勝手に行って調べなさいと言って、もし事故や事件に巻き込まれたとすると法的責任も問われますので、安易な事は言えません。社会とのつながりから学ぶ必要性が唱えられていますが、今の高校生は社会へ出れていません。コロナ渦で体験の場が更に減少してしまっています。

ゲームという疑似体験の可能性

ーそのような課題感の中で、「CHANGE FOR THE BLUE カードゲーム」を授業に導入しようと思ったのは何故ですか?

氷見さん:社会に出ていろんな体験が出来ない子どもたちに、ゲームという身近な疑似体験を通して様々な事を考えるきっかけを与えることが出来ると考えたからです。全ての生徒たちを実際に海岸へ連れて行ってごみ拾いをする事は難しいですが、ゲームの中で海洋ごみ問題に触れてみた事で、休みの日に「よし、行ってみよう」と主体的に行動する生徒が出てくるかもしれません。

ーなるほど、ゲームを通して実際の体験時に起こるような、価値変容を促しているのですね?

氷見さん:はい。ゲームという学習ツールは、まず、心がワクワクします。そういった時に、子どもたちは集中力を発揮して、学びが最大化して行きます。ゲーム体験と振り返りを通して価値変容が起こり、その後の探究へと繋げて行く事で、子どもに本気のスイッチが入るきっかけを与えられたらと考えています。

高校生は5年後10年後のキャリアに繋がる大切な時期です。大切にしたい価値観に気づけた子は、その後の進路にも影響してきますし、本気のスイッチが入り、目を輝かせて、主体的に活動し始めます。

ー「CHANGE FOR THE BLUEカードゲーム」は、海洋ごみ問題という社会課題だけですが、社会課題全般を広く扱う方が考えるきっかけになるのではないでしょうか?

氷見さん:私は、環境問題や社会課題を授業で扱おうと考え、これまでにSDGs全体を扱ったゲームツールも実践してきましたが、SDGsが2030年という目標達成年に近づくに連れて、SDGs全体として見るより個別の社会課題の方がより自分事として捉える事が出来るのではないかと考えています。

その点において「CHANGE FOR THE BLUE カードゲーム」は海洋ごみ問題という個別の社会課題なので良いですね。自分の行動が環境にどの様な影響を及ぼす事なのかとてもイメージしやすいですし、そこから社会の中の一員としてあるべき姿を考えるきっかけにできます。

先生視点での「CHANGE FOR THE BLUE カードゲーム」の価値とは?

ー先生自身が「CHANGE FOR THE BLUEカードゲーム」を実施してみた感想はどうですか?

氷見さん:学校は授業時間が限られているので、ゲーム体験から振り返りを行う為には、授業時間を最大限有効に使う為の設計が必要となります。「CHANGE FOR THE BLUEカードゲーム」は学校の時間枠に合わせた45分×2コマの設計になっている点が大変助かります。2コマを連続で実施しても、別の日で実施する事も可能なので、授業の中に組み込む調整がしやすいです。

また、「CHANGE FOR THE BLUE カードゲーム」は全員協力型のゲームツールなので、自然な協力が生まれます。ゲーム中は生き生きとする生徒が多く、促さなくても主体的に行動してくれていました。普段あまり会話をしない生徒同士でも、会話の接点が生まれる事で、その後の関係性を良くしてくれる副次的な効果もあると感じています。

生徒視点での「CHANGE FOR THE BLUE カードゲーム」の価値とは?

ー「CHANGE FOR THE BLUE カードゲーム」を実施してみて、生徒さんからはどの様な感想が出ましたか?

氷見さん:「自分たちが良かれと思って取った行動が逆の結果を生んでしまった。実は自分が知らない間に行動してしまっていたことに気づいた」「ゲームの途中で悔しい思いや嬉しい想いをした」「ゲームからの気づきを得て、現実社会で自分たちはどう行動すればいいのかと意識を高く持つようになったと感じる」などの感想が出ました。

ー生徒さんたちは、色々気づきがあったようですね。

氷見さん:はい。もちろん全ての生徒ではないですが、世の中を変えて行く為には自分たちの一歩が大切だよね!という主体的な意識を持ち、行動へ移す生徒も出て来ています。

マイクロプラスチックに強い関心を持つ子ども達も出て、実際に海に出掛け調査を始めています。色んな浜辺でどんなごみがあるのかを調べるという具体的なアクションに繋がったり、総合的な探究のテーマに「海洋ごみ問題」を扱う生徒も出て来ています。

ーゲームを通して、生徒さんの意識や行動が変わったのは何故だと思いますか?

氷見さん:このゲームは、知識だけではなく、考え方を学ぶことが出来るからではないでしょうか?

問題や課題に取り組む際に、今までのやり方では上手く行かないと感じた場合に新しい事に取り組むことで道が拓けることがありますが「CHANGE FOR THE BLUE カードゲーム」の中でも、そういったブレイクスルーの瞬間があります。

「今ある常識を捨てて、挑戦してみる事で道が拓ける」という成功体験を積むことは簡単に経験できることではありませんが、そういった経験をゲームの世界の中で疑似的に経験することができるのはとても有意義だと思います。

ゲームを通じて得た「挑戦することで道が拓ける」といった考え方が、生徒の意識や行動を変えたのだと思います。

「CHANGE FOR THE BLUE カードゲーム」の今後の活用イメージ

ー今後は、どういったシーンで「CHANGE FOR THE BLUE カードゲーム」を活用される予定ですか?

氷見さん:学校の探究活動の導入段階で、なるべく多くの生徒に体験してもらおうと考えています。私は生物の教員ですが、他には、社会科の教員や家庭科の教員も環境問題を扱いますので、他の教科との横断的な学びのきっかけにも使って行ければと思っていたり、アイデアはたくさんあります。

自分たちの取った主体的な行動が、社会に貢献出来る経験は生徒たちの自信に繋がっていきます。「CHANGE FOR THE BLUE カードゲーム」を経験して、その後現場に行って何かを感じたり、自分に何が出来るかを考えるきっかけにして欲しいと思っています。

「CHANGE FOR THE BLUE」カードゲーム実施概要

  • 実施日:2022年5月17日
  • 参加者:富山第一高校2・3年生 30名
  • 実施内容:「総合的な探究」の授業の中で、1時間の清掃活動の後に「CHANGE FOR THE BLUE カードゲーム」を2時間実施。

「CHANGE FOR THE BLUE」カードゲームとは

「CHANGE FOR THE BLUE」カードゲームは海洋ごみ問題について考えるゲーム型のアクティブラーニング学習教材です。小学生高学年から中学生向けの授業でご利用いただけます。

海洋ごみ問題は遠い未来の話ではなく私たちのすぐ身近に迫っています。けれども、このような大きな社会課題を前にすると、自分1人でやれることは小さく感じられ、中々行動に移せないものです。本ゲームを通して、海洋ごみ問題を自分事として理解することで “海洋ごみを減らす行動” の第一歩となれば幸いです。

※「CHANGE FOR THE BLUE」カードゲームは、海のごみや汚れを減らす行動のシミュレーションを通して海洋ごみ問題について考えるきっかけとしてもらえるように「CHANG FOR THE BLUE in富山実行委員会」と株式会社プロジェクトデザインが協業で開発したゲームです。

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