組織開発とは?注目される背景と具体的な手法、企業の取り組み事例​

組織開発とは何か。その意味と注目される背景、そして、組織開発の手法と企業の取り組み事例を分かりやすく解説します。

Contents(目次)

組織開発とは

組織開発とは、人材開発と同様に組織を上手く機能させるための取り組みを意味します。その上で、【人】に焦点を当てる人材開発とは違い、組織開発では【組織】に焦点を当てます。

組織開発と人材開発は優劣関係にはありません。

個の力を伸ばす人材開発が重要になる局面もあれば、組織が一体となり協働が促進される土壌をつくる組織開発が求められる場面もあります。いづれにしても、組織を上手く機能させる共通の目的のもとに、その時々の組織課題を解決するための統合的な取り組みが求められています。

 人材開発組織開発
目的組織を上手く機能させること(組織全体のパフォーマンスの最大化)
 対象人(個人) 組織環境(人と人の関係性)
取り組み内容の例個人の能力開発やキャリア開発組織が一体となり協働していくための土壌づくり

表. 組織開発と人材開発の違い

余談

組織開発の類語に、組織デザインという言葉があります。この2つの言葉の概念的境界は曖昧ではありますが、組織デザインは組織の枠組み・体制というハード(形のあるもの)が対象であり、組織開発は組織構成員の関係性というソフト(無形のもの)を対象とする点に違いがあります。

組織開発が注目される背景

人的資本経営の潮流

ヒト・モノ・カネの経営資源と言われるように、人材は人的資源(Human Resource)として一般的に認識されています。資源とは消費するものであり、経営においては人材に係るコスト管理に主眼が置かれています。

これに対して、人的資本経営では人材は人的資本(Human Capital)であると考えます。そして、企業のマネジメントの方向性はコストの管理ではなく、投資です。つまり、人的資本経営とは、人材の価値を最大限に引き出すための投資を通じて、中長期的な企業価値の創造につなげる経営の考え方であると捉えられます。

日本においては、人的資本経営について国を挙げて取り組むべく、2023年1月に人的資本に関する戦略や指標などの開示を求める内閣府令が公布され、2023年3月期の有価証券報告書から人的資本に関する情報開示が義務化されています。

特に、近年では人的資本と業績との関連をデータで示す試みも始まっており、組織開発を含めた人的資本向上の取り組みに対して、社内外のステークホルダーからの期待が寄せられています。

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人的資本経営についての基本知識、人的資本経営が注目される背景をお伝えしつつ、人的資本経営に関する企業の取り組み事例を分かりやすくご紹介します。

多様性を許容する組織への移行

新卒一括採用に年功序列、画一的なキャリアパスや働き方。かつての日本企業で当たり前とされていた組織の制度・仕組み・価値観は、見直しの時期に差し掛かっています。

働く人の価値観や働き方の多様化が進む中、企業には多様性を許容する組織への移行(ダイバーシティ&インクルージョンの推進)が求められており、異なる価値観や考え方を持つメンバー同士が協働していくための組織開発の必要性が高まっています。

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ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)とは何か。その意味とビジネスシーンで注目されている背景、そして、D&I推進における課題と企業の取り組み事例を分かりやすく解説します。

組織開発の具体的な手法

PMVVの浸透

組織の目的や使命、展望や価値を指し示すPMVV(パーパス・ミッション・ビジョン・バリュー)は経営の根幹を成す概念であり、組織のあらゆる活動を統合する鍵になるものです。

PMVVを組織内に浸透させることは、組織が一体となり協働していくための共通言語を持つことに他なりません。パーパス経営や理念経営を実践する組織においては一丁目一番となる組織開発の手法と言えます。

PMVVの浸透施策は経営層からのメッセージの発信や社内広報、社内コンテストや評価制度との連携など、多岐に考えられます。

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私たちプロジェクトデザインでは、ビジネスゲーム(現実のビジネス活動をゲームでシミュレーションするツール)を活用したビジョン・パーパス浸透のソリューションをご提供しています。

ゲーム内でのビジョンやパーパスの活用による成功体験(または、ビジョンやパーパスを軽んじることによる失敗体験)と、その体験をもとにした対話によって、ビジョンやパーパスに対する意識を一段高め、組織の掲げるビジョンやパーパス浸透の土壌をつくります。

ビジネスゲーム研修 for ビジョン・パーパス浸透
ビジネスゲーム研修 for ビジョン・パーパス浸透は、組織が掲げるビジョンやパーパスの重要性を体験することができるビジネスゲームを活用したソリューションです。

ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)の推進​

働く人の価値観や働き方の多様化が進む今の時代、多様な人材が、皆イキイキと働くことができる環境を構築することは多くの組織にとって急務となっています。

人事制度のアップデートはもちろん、一人ひとりのメンバーが、自らの「無意識の偏見」に気付き、その認識を改めるきっかけとなるアンコンシャスバイアス研修を実施するなどの取り組みが推奨されます。

チームビルディング​

チームワークが発揮されている状態とは、各メンバーが目標に向かってベクトルの向きを揃えることで組織力(メンバーのベクトルの総和)を最大化させている状態です。

ビジネスにおいてはチームワークを発揮することが大切だと言われますが、こういった当たり前のことの重要性が叫ばれる背景には、チームワークの発揮が難しい現実があります。

現実においては、

  • 目標に納得していないメンバー
  • 部分最適的な行動を取るメンバー
  • 意見を言いづらいと感じているメンバー
  • モチベーションが低いメンバー
  • 失敗を恐れて行動が鈍くなっているメンバー

など、チームメンバーが自身のベクトルの向きを異なる方向に向けており、その結果、組織力が十分に発揮されない状況に陥ってしまうケースがあります。だからこそ、チームビルディングを通じてチームメンバーがチームワークを発揮するための支援をすることに価値があります。

チームビルディングの具体的な取り組みとしては、チームメンバーが協働する形の研修やワークショップがお勧めです。実務とは異なる場における交流はお互いの人となりを知る良い機会になります。

関連情報

私たちプロジェクトデザインでは、ビジネスゲーム(現実のビジネス活動をゲームでシミュレーションするツール)を活用したチームビルディングのソリューションをご提供しています。

ゲームとしての楽しさはもちろん、「仲間意識を高める」「仲間の個性に気付く」「心理的安全性が高まる」効果が期待できるソリューションです。

ビジネスゲーム研修 for チームビルディング
ビジネスゲーム研修 for チームビルディングは、イベントや合宿、キックオフミーティングなどの場で、気軽にビジネスゲームを楽しみながらチームビルディングを行うソリューションです。ご要望(場の目的やテーマ、ゲーム難易度などに関するご希望)に沿ったビジネスゲームをご提案します。

管理職研修・次世代リーダー研修

組織開発とは人と人の関係性を対象にするものですが、関係性というものは急に変わるものではありません。長い目で関係性の改善に取り組んでいく必要があります。この時、重要になるのが、組織の長たる管理職やリーダー層の振る舞いです。

例えば、1on1ミーティングのようなコミュニケーションの仕組みがあったとしても、それを活用する管理職が業務の延長線上の指導をしていては意味がありません。1on1の手法(傾聴やコーチング的な関わり方)について学ぶ必要があります。

組織開発に関する企業の取り組み事例

LINEヤフー

LNEヤフーでは、グループ内再編を契機に新たなミッションを定め、社員のパフォーマンス発揮がプロダクトドリブンの大きな原動力になるという考えのもとに、社員がパフォーマンスを発揮できる環境の整備に取り組んでいます。

「人材強化」と「カルチャー醸成」を柱とする同社の人材戦略は、統合的な組織開発アプローチとして参考になります。

“LINEヤフーはグループ内再編を機に、新たなミッション”「WOW」なライフプラットフォームを創り、日常に「!」を届ける。”を企業ミッションと定め、圧倒的なプロダクトドリブンを目指す姿として位置付け、プロダクト主導の成長戦略を推進することにいたしました。

インターネット事業における競争力の本質は、革新的なサービスやプロダクトの創出力にあり、これは社員の力によって支えられています。社員が活力をもって働き、卓越したサービス・プロダクトを生み出すサイクルを確立することが、LINEヤフーにとっての最優先事項の一つです。

そこで、社員がパフォーマンスを最大限に発揮し、組織全体の成長力向上に寄与するために、「人と事業をつなぎ、人材と組織のパフォーマンスを最大化する」を人材戦略の根幹に掲げました。具体的には、「人材強化」と「カルチャー醸成」を二つの主軸としており、特に、「人材強化」については、重点課題(マテリアリティ)の1つにも位置付けております。

また、グループ内再編以前においては各社の風土、制度、環境などの違いが強みである一方、グループとしての一体感醸成につながらなかった背景もあり、「カルチャー醸成」を掲げることで、LINEヤフーとしての独自のカルチャー創出につなげ、ミッションの実現に寄与することを目指しています”

参考:人材戦略(人材強化とカルチャー醸成)|LINEヤフー株式会社

メルカリ

メルカリは、インクルージョンを事業成長とその先にある「あらゆる価値を循環させ、あらゆる人の可能性を広げる」というミッションを達成するためのキードライバーとして位置づけ、I&Dステートメントを公開し、「柔軟な働き方」「言語サポート」「情報の共有・公開」などのさまざまな組織開発の取り組みを推進しています。

“私たちは、世界中から集う多様なバックグラウンドを持つ仲間の存在を尊重し合うだけでなく、その可能性を広げ合うために、フェアでインクルーシブな環境を全員で作り続けます。インクルーシブな環境づくりのために、私たちは以下にコミットします。

  • お互いの違いを尊重し、違うからこそ学び合える文化を作ります
  • 多様なメンバーが3つのバリュー「Go Bold」「All for One」「Be a Pro」を体現するための平等な機会を創造します
  • バックグラウンドに起因する差別や不平等を許容せず、定量・定性による現状把握と改善を続けます”

参考:メルカリ、「Inclusion &Diversity Statement」公開のお知らせ | 株式会社メルカリ

ヤッホーブルーイング

クラフトビールメーカーのヤッホーブルーイングでは、社員が自ら管理職に立候補するディレクター立候補制度(管理職登用制度)を運用しています。

この制度には「チームで働くことを大切にしている」や「自ら考えて行動する組織文化」などの組織の価値観が体現されている点において優れた組織開発アプローチであると捉えられます。

“年に一度(9月頃)、ディレクターになりたい人が自ら手を上げ、自分がディレクターになった際のユニット戦略や作りたいチームについて、全スタッフ約200名の前(!)で発表してもらう、ディレクター立候補プレゼン大会が実施されます。スタッフは、立候補者のプレゼンを聴き、アンケートに回答します。そのアンケート結果等に基づき選出をするため、立候補する側だけでなく、プレゼンを聴く側のスタッフも大事な役割を担っていますし、スタッフ全員が全社の戦略や人事を自分事として考えられる重要な場となっています”

参考:役職は全て「立候補」!ヤッホーブルーイングの”ディレクター立候補制度”ってホントなの!?|ヤッホーブルーイング/よなよなエール

この記事の著者について​

池田 信人

自動車メーカーの社内SE、人材紹介会社の法人営業、新卒採用支援会社の事業企画・メディア運営(マーケティング)を経て、2019年に独立。人と組織のマッチングの可能性を追求する、就活・転職メディア「ニャンキャリア」を運営。プロジェクトデザインではマーケティング部のマネージャーを務める。無類の猫好き。しかし猫アレルギー。

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