コミュニケーション能力とは?その意味と鍛える方法
- 最終更新日:2024-03-06
ビジネスにおける重要な能力の一つとして注目されているコミュニケーション能力。
本稿では、分かりやすいようで分かづらいコミュニケーション能力の定義と、その能力を鍛える方法について、分かりやすく解説します。
コミュニケーション能力とは
コミュニケーション能力とは、コミュニケーションが必要な場面で発揮される能力群を意味する言葉です。
“戦略” “マーケティング” などの言葉と同様に、“コミュニケーション能力”という言葉の具体的な定義(意味の捉え方)は様々です。ゆえに、自社におけるコミュニケーション能力とは何かを考え、定義することが大切になります。
参考までに、コミュニケーション能力の定義を2つご紹介します。この内容を下敷きにして、自社ならではのコミュニケーション能力の定義を考えてみることを推奨します。
経済産業省の社会人基礎力におけるコミュニケーション能力
経済産業が提唱する社会人基礎力の中にある、チームで働く力。
この能力は、多様な人々とともに目標に向けて協力する力・グループ内の協調性だけに留まらず多様な人々との繋がりや協働を生み出す力と表現されていることから、コミュニケーション能力を指すものとして捉えることができます。
このチームで働く力の能力要素は6つあります。
- 発信力
自分の意見をわかりやすく伝える力 - 傾聴力
相手の意見を丁寧に聴く力 - 柔軟性
意見・立場の違いを理解する力 - 情況把握力
自分と周囲の人々や物事との関係性を理解する力 - 規律性
社会のルールや人との約束を守る力 - ストレスコントロール力
ストレスの発生源に対応する力
伝える力・聴く力・理解する力は、コミュニケーション能力の定義としてよく用いられますが、規律性やストレスコントロール力などの能力を含めている点がユニークです。
コミュニケーションを成立させる前提として規律性が必要であること、そして、コミュニケーションの際に発生するストレスへの対応力も重要であることに気付かされます。
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社会人基礎力について詳しく知りたい方は下記の記事をご覧ください(社会人基礎力に関する基礎知識と、社会人基礎力のおすすめの鍛え方をご紹介します)。
エン・ジャパンの適性検査「3Eテスト」におけるコミュニケーション能力
エン・ジャパンの適性検査「3Eテスト」では、ビジネスにおいて円滑な人間関係を築くために必要となる基礎的な要素をコミュニケーション力として、4つの能力要素で定義しています。
- 意思伝達力
自分の考えをしっかりと伝えることができる力 - 論理的表現力
筋道立てて説明したり文章にできる力 - 好感表現力
感じの良さを意図的に表現できる力 - 対人調和力
相手の意図や感情を理解し、配慮できる力
参考:採用選考で重視される項目No.1『コミュニケーション能力』を可視化|適性検査「3Eテスト活用法」|人事、採用、労務の情報ならエン人事のミカタ
一見すると、伝える力に比重が置かれた定義に見えますが、聴く力と理解する力が対人調和力という能力に統合されているため、総合的にバランスの良い定義になっています。
個人のコミュニケーション能力を鍛える方法
コミュニケーション能力の定義によって鍛えるべき能力(能力要素)は変わるため、本稿では、コミュニケーション能力に影響する汎用性の高い能力・スキルを鍛える方法をご紹介します。
ロジカルシンキングの実践
ロジカルシンキングとは論理的思考です。
抜け漏れや矛盾が生じないように、かつ、論理の飛躍が生じないように、論理的に(筋道に沿って正しい順序で)考えること。それがロジカルシンキングです。
文章を書く上でライティングという “書くスキル” があるように、物事を考える上でも “考えるスキル” というものがあり、ロジカルシンキングは代表的な “考えるスキル” です。
日常会話では、その場で思いつくことを自由に話しても何ら問題ありませんが、ビジネスのコミュニケーションは違います。上司への報連相、お客様への提案、トラブル対応。どのような場面であれ、考えることが求められます。相手に分かりやすいように伝えるには、どういう順序で、どういった内容を伝えるべきか。そのことを考える上で、ロジカルシンキングが問われます。
ロジカルシンキングの巧拙に先天的な才能は関係ありません。誰もが、トレーニングによって磨くことのできるビジネススキルです。コミュニケーション能力を鍛える上で、最優先で伸ばすべきスキルの一つと言えます。
まずはロジカルシンキングの知識をインプットすると良いでしょう。今時は、論理的思考(ロジカルシンキング)を学ぶための教材はたくさん用意されています。参考書籍を読むも良し。オンラインでロジカルシンキング講座を受講するも良し。自身の学習スタイルにフィットする手段を選びましょう。
その上で、ロジカルシンキングは実践の中で、その能力を磨かれていくものです。職種や仕事内容によって、ロジカルシンキングの活用度合いには差はありますが、誰もが取り組む一般的な業務の中でもロジカルシンキングを実践する余地は十分にあります。
例えば、資料作成。企画書・提案資料・会議資料・報告書(あるいは、メールの文章でも構いません)。どんな資料であっても、資料の目的を達成するためにロジカルに情報を整理して見せることは重要です。「結論ファーストの構成にする」「要点を箇条書きでまとめる」などの工夫をする余地は常にあるので、そういった機会を最大限活かすことが肝要です。
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ロジカルシンキングについて詳しく知りたい方は下記の記事をご覧ください。ロジカルシンキングの意味、ロジカルシンキング基本とフレームワーク、論理的思考力を鍛える方法について、分かりやすく解説します。
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ロジカルシンキングのスキルが一定あると感じられる方はクリティカルシンキングを鍛えることをお勧めします。詳細は下記の記事をご覧ください。
アサーティブ・コミュニケーションの実践
アサーティブ・コミュニケーションとは、相手を尊重しつつ、自分の主張を正確に伝えるためのコミュニケーション手法です。
コミュニケーションの目的を達成することだけではなく、コミュニケーションをする当事者間の関係性を大切にすること。ここに、アサーティブ・コミュニケーションの本質があります。
アサーティブ・コミュニケーションのトレーニング方法として、2つの手法をご紹介します。
アイメッセージ
アイ(I)メッセージとは、私を主語にして意見を伝えることで、相手を非難することなく自分の伝えたいことを伝える手法です。
相手を主語にした意見はユー(You)メッセージと呼ばれ、命令的・支配的な印象を相手に与えてしまう(相手側からすると、自分が非難されているような気持になる)傾向があります。
一般的に、上司の立場にある方々は無意識的にユーメッセージを使っていることが多いので、意識的にアイメッセージを使ってみることを推奨します。
(例)仕事の進め方に意見を伝えるシチュエーション
- ユーメッセージ
(あなたは)そのやり方では上手くいかないよ。 - アイメッセージ
(わたしは)このやり方が上手くいくと思う。よければ試してみてもらえるかな?
DESC法(デスク法)
DESC法とは、Describe(描写)、Explain(説明)、Specify(提案)、Choose(選択)の頭文字を取った主張法です。4段階に分けて自己主張することによって、相手を傷つけない・柔らかい主張ができます。
このDESC法を日常業務の場で実践することが、良質なトレーニングとなります。
(例)部下に残業を依頼したいシチュエーション
- Describe(描写)
Aさん、ちょっといいかな? 先月に納品した製品に故障が発生して、先方の依頼により、今日中に修理をする必要が生じたんだ。
- Explain(説明)
故障が生じたのは残念なことだと私は思う。だけど、今回修理対応をスムーズに行うことは先方の信頼獲得に繋がると思うんだ。
- Specify(提案)
この修理対応をAさんにお願いしたいと思うのだけど、どうかな? 残業してもらうことになると思う。
- Choose(相手の選択に対する回答)
急な話なので、残業対応可能かどうかを聞かせてもらえるかな?
→(Yesの場合)ありがとう!とても助かるよ。
→(Noの場合)そうだよねぇ、急な話だから気にしないでくださいね。
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アサーティブ・コミュニケーションについてご興味のある方は下記の記事をご覧ください。アサーティブ・コミュニケーションの意味と効果、注目されている背景、トレーニング方法を分かりやすく解説します。
組織のコミュニケーション基盤を強化する方法
さて、ここまでは個人のコミュニケーション能力を鍛える方法についてご紹介してきましたが、ここからは、組織のコミュニケーション基盤を強化する方法をご紹介します。
組織の一人ひとりのメンバーが、自らの持つコミュニケーション能力を十分に発揮できるか否かは、組織のコミュニケーション基盤にかかっていると言っても過言ではありません。
チームビルディングに取り組む
チームビルディングとは、その名の通り「チーム作り」を意味する言葉です。
ビジネスシーンにおいては「チームワークを発揮することが大切だ」と言われますが、こういった当たり前のことの重要性が叫ばれる背景には、チームワークを発揮することは想像以上に難しい(難度が高い)現実があります。
チームのメンバーのパフォーマンスをベクトル(大きさと向きを持つ量)に例えると、チームワークが発揮されている状態とは、各メンバーが目標に向かってベクトルの向きを揃えることで組織力(メンバーのベクトルの総和)を最大化させている状態です。
ところが、現実においては
- 目標に納得していないメンバー
- 部分最適的な行動を取るメンバー
- 言いたいことを言いづらいと感じているメンバー
- モチベーションが低いメンバー
- 失敗を恐れて行動が鈍くなっているメンバー
など、チームメンバーが自身のベクトルの向きを異なる方向に向けており、その結果、組織力(メンバーのベクトルの総和)が十分に発揮されない状況に陥ってしまうケースがあります。
組織のコミュニケーション基盤においては「言いたいことを言いづらい」「モチベーションが低い」などのチームの状況は黄色信号であると言わざるを得ません。個人がコミュニケーション能力を発揮する以前の問題です。
コミュニケーションをする行為そのものを阻害するチームの問題を解決すべく、チームビルディングの取り組みを進めることが急務です。
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チームビルディングに興味のある方は下記の記事をご覧ください。チームビルディングの意味、チームビルディングが注目されている背景、そして、チームビルディングを通じて目指すべき組織の在り方と具体的なチームビルディングの実践方法を解説します。
コミュニケーション研修の実施
コミュニケーションは組織の血液であると言われるように、目標に向かって協働する組織においてコミュニケーション(対人関係における情報や感情のやり取り)は欠かすことができません。
コミュニケーションの滞り(血の巡りの悪い状態)は、コミュニケーションコストの増加、チームのパフォーマンス低下、経営と現場の対立、社内外の協働や連携の失敗など、様々な問題を生み出します。
このコミュニケーションに起因する問題を改善するものが、コミュニケーション研修です。
個人の努力によるコミュニケーション能力の向上に期待しつつも、組織全体のコミュニケーション問題を改善するための取り組みを同時並行で進めることが推奨されます。
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コミュニケーション研修の内容については下記の記事をご覧ください(コミュニケーション研修の内容を目的別・種類別に整理してご紹介します)。
業務以外のコミュニケーションの余白をつくる
社員旅行や懇親会、社内表彰や社内広報誌の取り組み、ピアボーナス(社員同士で報酬を贈り合う制度)の導入など、普段の業務以外で社員がコミュニケーションできる場や機会を設けることは社員間の関係性の強化に繋がり、組織のコミュニケーション基盤を強固なものにします。
もちろん、こういった取り組みの効果は定量的に把握しづらいところもあり、継続が難しい側面があります。かつては取り組んでいたものの今は廃止しているケースもあると思います。
ですが、その上で、コミュニケーション基盤の強化の観点、人的資本経営の観点、採用力強化の観点など多角的な観点から、業務以外のコミュニケーションの余白をつくることを検討してみる価値は十分にあります。
(特に、コロナ禍をきっかけにテレワークを推し進め、業務以外のコミュニケーションの余白が大きく削られた結果、社員の帰属意識やモチベーション、コミュニケーションの質が悪化していると感じられる企業にとっては検討の優先度が高い話になると思います)。
この記事の著者について
執筆者プロフィール
池田 信人
自動車メーカーの社内SE、人材紹介会社の法人営業、新卒採用支援会社の事業企画・メディア運営(マーケティング)を経て、2019年に独立。人と組織のマッチングの可能性を追求する、就活・転職メディア「ニャンキャリア」を運営。プロジェクトデザインではマーケティング部のマネージャーを務める。無類の猫好き。しかし猫アレルギー。
監修者プロフィール
亀井 直人
鳥取県立鳥取東高等学校卒業、福岡工業大学情報工学部情報通信工学科卒業。SE(インフラエンジニア)として長く経験を積む。プロジェクト遂行におけるチームのパフォーマンスを引き出すためにファシリテーション技術の習得・実践を続ける。特定非営利活動法人日本ファシリテーション協会では役員(2016年~2021年理事、2019年~2021年副会長)を務める。富士ゼロックス福岡在籍中にSDGsとビジネスゲーム「2030SDGs」に出会う。ビジネスゲームが持つ力の素晴らしさに触れ、2020年に研修部マネージャーとしてプロジェクトデザインに合流する。活動を通じて関わり合う方々との対話を楽しみにしている。鳥取県鳥取市出身。蟹と麦チョコが大好き。
- 経済産業省認定情報セキュリティスペシャリスト
- PMP(Project Management Professional)
- NPO法人 SDGs Association 熊本 監事
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