ビジネスにおける経験学習サイクルとは?
- 最終更新日:2024-01-09
ビジネスにおける、経験学習サイクルとは何か。
その意味とビジネスシーンで注目されている背景、社員の経験学習を促すための人材育成の方法について、分かりやすく解説します。
経験学習サイクルとは
経験学習サイクル(経験学習モデル)とは、アメリカの教育学者であるデービット・コルブ氏が提唱する学習モデルです。
- 経験
- 省察(経験を多様な視点から振り返る)
- 概念化(現実でも応用できるように概念化する)
- 実践(新しい場で実際に試してみる)
このように、経験→省察→概念化→実践のサイクルを回していくことで学習を進めます。
ビジネスにおける経験学習サイクル
経験
経験学習サイクルとの起点となる【経験】では、その経験の質が問われます。
講義や読書を通じて知識をインプットする。これも一つの経験ですが、ビジネスにおいては「アウトプットを伴う具体的な経験」をすることが強く推奨されます。
主体的に関わる経験、何かに挑戦・背伸びするような経験。そういった経験の中にこそ、自らを成長させるヒントが隠されているものです。
省察
【省察】では、経験したことを多様な視点から振り返ります。
「あの時に、あんな行動を取ったのは何故なのか?」
「より良い成果を得るためには、どうすれば良かったのか?」
「リーダーシップの観点で、自分には何が不足していたか?」
など、具体的な経験の中における自分の思考や行動を振り返ります。だからこそ、経験の質が問われます(自分が思考や行動を重ねていない経験を振り返るのは困難です)。
概念化
【概念化】では、経験と省察を通じて得られた気づきや学びを、現実の業務で応用できるように概念化(体系化)します。教訓(今後の改善方針)にすることも概念化と言えます。
<概念化の例>
- リーダーシップの必要性に気づいた人が、リーダーシップの理論を学びながら、自身の経験知との統合を図る
- 自身の行動の悪い癖(例えば、自分の勝手な判断で物事を進める癖)に気づいた人が、それを教訓とする
実践
【実践】では、概念化したものを新しい場面で試します。
ビジネスにおけるスキル(業務遂行能力)は実践の中で磨かれていくものです(磨き続けないと、錆びれていきます)。だからこそ、経験学習サイクルの最終ステップに【実践】が位置付けられています。
経験学習サイクルを回す施策
ビジネスにおける経験学習は、個人で進めることには一般的に不向きです。
ビジネス=業務においては、周囲の人の方が自分のこと(長所や短所、癖や課題)を知っているものです。自分一人の省察よりも、周囲との対話の中での省察の方が深い気づきを得られます。
概念化についても同様です。どのような業務・仕事にも視座の高い位置からしか見えないこと、熟練者だからこそ分かることがあります。そういった先達のサポートのもとに行われる概念化は(自分一人で行うものと比べて)実用的で応用性が高いものになります。
そこで、本稿では、組織的に(上司や先輩社員、外部の専門家などの周囲のサポートのもとに)経験学習サイクルを回す施策をご紹介します。
<余談>
並外れたビジネスセンスを持つ人や熟練のビジネスパーソンの中には、個人で経験学習サイクルを回すことができる人もいます。ただ、そういった “自分一人で育っていく人材” は希少です。
OJT・1on1ミーティング
実務は、経験学習における「経験」そのものです。
ゆえに、社員の経験学習サイクルを回す支援策としては、社員の経験を省察・概念化する仕組みをつくることが効果的です。この観点でOJTや 1on1ミーティングは優れた施策として位置づけられます。
その上で、OJTや1on1ミーティングは現場部門への負担が大きい取り組みになります。部門や担当者の業務に支障が生じないように、組織としてサポートしていくことが大切です。
具体的にどのようなサポートをすべきかについては、経験学習サイクルを回す観点では、育成する側に対してリフレクション(振り返り)の技法を学ぶ機会を提供することが推奨されます。
<ご案内>
1on1ミーティングに関して興味の有る方は下記の記事をご覧ください(1on1ミーティングで押さえてくべきポイントについて、分かりやすく解説します)。
役職者向け研修
リーダーや管理職などの役職者は、これまでの活躍が認められているからこその役職者であり、そんな彼・彼女たちは、実務を通じて多くの良質な経験を積み上げています。
その一方で、リーダーや管理職は業務に多忙であるがゆえに、省察や概念化を行う機会に恵まれない傾向にあります。
だからこそ、経験学習サイクルを意識した研修カリキュラム(自分自身の思考や行動を振り返るワークと、ワークの気づきや学びを概念化をする講義)を提供することが推奨されます。
ビジネスゲーム研修
ビジネスゲームとは、飛行機のパイロットが訓練を積む「フライトシミュレーター」のようなものです。
ビジネスゲームでは、現実の世界における経済活動や社会活動のエッセンス(本質的要素)を抽出し、繰り返しトレーニングできるようにゲームとして表現しています。
現実の世界では、活動の結果と経験を得るためには多くの時間と労力が必要になりますが、ビジネスゲームでは、短時間で活動の結果と経験(成功体験や失敗体験)を得ることができます。
つまり、「高速経験学習」のツールとして、ビジネスゲームを研修に活用できます。
<ご案内>
ビジネスゲーム研修に関して興味の有る方は下記の記事をご覧ください(ビジネスゲームの特長についてご紹介します)。
この記事の著者について
執筆者プロフィール
池田 信人
自動車メーカーの社内SE、人材紹介会社の法人営業、新卒採用支援会社の事業企画・メディア運営(マーケティング)を経て、2019年に独立。人と組織のマッチングの可能性を追求する、就活・転職メディア「ニャンキャリア」を運営。プロジェクトデザインではマーケティング部のマネージャーを務める。無類の猫好き。しかし猫アレルギー。
監修者プロフィール
亀井 直人
鳥取県立鳥取東高等学校卒業、福岡工業大学情報工学部情報通信工学科卒業。SE(インフラエンジニア)として長く経験を積む。プロジェクト遂行におけるチームのパフォーマンスを引き出すためにファシリテーション技術の習得・実践を続ける。特定非営利活動法人日本ファシリテーション協会では役員(2016年~2021年理事、2019年~2021年副会長)を務める。富士ゼロックス福岡在籍中にSDGsとビジネスゲーム「2030SDGs」に出会う。ビジネスゲームが持つ力の素晴らしさに触れ、2020年に研修部マネージャーとしてプロジェクトデザインに合流する。活動を通じて関わり合う方々との対話を楽しみにしている。鳥取県鳥取市出身。蟹と麦チョコが大好き。
- 経済産業省認定情報セキュリティスペシャリスト
- PMP(Project Management Professional)
- NPO法人 SDGs Association 熊本 監事
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