マインドセットとは?意味と企業の取り組み事例、マインドセットが変わる3つの方法論
- 最終更新日:2024-08-19
マインドセットとは何か? その意味(重要性)と企業の取り組み事例、そして、組織のメンバーのマインドセットが変わるための3つの方法論を分かりやすく解説します。
マインドセットとは
マインドセットとは、過去の経験や教育などで形成された思考や価値観です(生まれ持った気質や遺伝的なものも含みますが、意識や習慣化によって後天的に変えることができます)。
このマインドセットは、人の行動の根幹となるものであり、マインドセットの状態が仕事における自己成長や成果創出に大きく影響するものと捉えられます。
ビジネスにおけるマインドセットの重要性
元株式会社ガリバーインターナショナル(現 株式会社IDOM)専務取締役の吉田行宏氏の著書「成長マインドセット」では、個人の成長をアイスバーグ(iceberg:氷山)に喩えています。
上図のように目に見える成果は氷山の一角に過ぎず、その水面下には能力・スキル、ふるまい・習慣・行動、意識・想い・人生哲学があることが分かります。そして、成果を大きくするためには必然的に水面下に隠れているアイスバーグを大きくする必要があり、それこそが個人の成長であると説かれています。
ここで重要なことは、成果の下にある3つの層の順序・関係性です。
成果を出す上で必要不可欠な能力・スキルの獲得は一朝一夕でできるものでもありません。自己学習の習慣化や実務で挑戦し続ける行動を取るなどの努力の継続が重要です。そして、努力を続けるには、成長することへの意識や成し遂げたい想いの強さ、自身を支える人生哲学などのマインドセットが問われます。
つまり、根底にある3つ目の層(マインドセット層)の裾野の広さが、アイスバーグの大きさ=自己成長や成果の大きさを規定すると言っても過言ではありません。
硬直マインドセットと成長マインドセット
米国スタンフォード大学の心理学教授であるキャロル・S・ドゥエック氏は、人間の能力に関するマインドセットには、硬直マインドセットと成長マインドセットの対極的な2つの思考があることを提唱しました。
硬直マインドセット(fixed mindset)は「自分の能力は最初から才能で決まっていて努力では変えられない」考え方(固定思考)であるのに対して、成長マインドセット(growth mindset)は「自分の能力は努力次第で成長させることができる」考え方(成長思考)です。
ドゥエック教授は、この2つの思考タイプについて研究を20年に渡り続けた結果、努力次第で能力を伸ばしていけると信じている人、すなわち成長マインドセットを持っている人の方が大きな結果を出していることを突き止めました。
この事実は、多くのビジネスパーソンにとって経験的に納得できるものではないでしょうか?(仕事で成果を創出した過去の経験を振り返ると、そこには、自分の可能性を信じて努力し続けてきた日々があるものです)。
マインドセットの変革に関する企業の取り組み事例
ここからは、マインドセットの変革(硬直マインドセットからの脱却と成長マインドセットの醸成)に取り組む、企業の事例をご紹介します。
少し古い事例も含まれますが、マインドセット変革の取り組みは普遍的なものであり、今の時代においても大いに参考になります。
ZOHOジャパン【企業理念を浸透させる仕組みづくり】
営業管理や業務管理などのツールを提供するIT企業、ZOHOジャパン。
本業で赤字が続いていた当時の同社では、挨拶をしない、チャレンジする人が少ない、挑戦して失敗した人に対して裏で悪口を言う。そんなネガティブ思考(硬直マインドセット)が社内全体に広がっていました。
インド本社からの指名で新たに就任した迫社長は、全体会議で財務の現状を突きつけ、社員の意識改革を始めます。
まず、多様な年代からメンバーを集め、8ヶ月かけて企業理念を作成しました。そもそも理念とは何か、パートナーやお客様からどう思われているかという現状認識、100年後どうなっていたいかを話し合います。完成した行動規範についても、なぜそれが大事なのか、その意図は何か、良い行動例とは何かなどを話し合い、現場で発揮するために社員全員で具体化していきました。
また、理念を会社に浸透させていくために、各会議の前に「理念トーク」を行っています。話題はなんでもよく、理念に出てくるキーワードに関連して「こんなことを経験した」「この経験は理念のここに通じると思う」など話し合うものです。さらに同社では、社員同士のコメントで成長マインドセットを育む、画期的な表彰制度を導入しています。
“理念は簡単にはできませんので理念を創るプロジェクトの前に、SPA(スピーディー、ポジティブ、アクティブ)という経営方針を出しました。そして、主体的に動き実績に貢献した人を表彰するMVP賞、SPAの精神で行動し成果に貢献した人を表彰するSPA賞、挨拶、会社の雰囲気に貢献した人を表彰するさわやか賞をセットで導入しました。
これは上司ではなく、メンバーが選ぶことが特徴です。社員が1票ずつ理由付きで投票します。そして、理由も一緒にみんなの前で公開します。そうすると良いコメントをシャワーのように浴びるので会社の雰囲気が少しずつ柔らかくなってきました”
ただ表彰するだけでなく、「なぜその人に投票したか」という全員のコメントを公開することによって、表彰されなかった社員も「ここは自分にもできるはずだ」「自分も努力しよう」と前向きに捉えるマインドを育むことに成功しています。
ジョンソンホームズ【「チーム自治」を取り入れて組織を前向きに】
札幌のハウスメーカー、ジョンソンホームズ。
同社では、長らく好調だった新築住宅ブランドがやや不振に陥っていました。経営者側が積極的に介入したり、営業担当者と様々な対策を講じたりと努力したものの、なかなか成果が上がらない。そんな状況が続いていました。
その中で、経営陣の一人である川田さんは「経営者が言った通りにできているか」に主眼が置かれていて、社員それぞれに「自分がどうしたいか、どう思うか」という視点が抜けていることに気づき、チーム自治という仕組みを取り入れました(次の2つのルールを決めました)。
- 社員を数人のチームに分け、現時点での課題と対策、目標達成のためになすべきことなどを、新卒1年目を含めたメンバー全員で話し合うこと
- 上層部は干渉せず、それぞれが良いと思うやり方を選んで進めること
例えば課題が「集客」なら、以前は集客イベントの企画立案をマーケ室という部署に頼り切っていたために、決まったことをこなすだけの「与えられる仕事」になっていました。チーム自治では、どのようなイベントをどのように行うかをメンバー全員で模索させるのです。
その結果、業績は順調に伸び、何よりも社員みんなが楽しそうに取り組む姿がみられるようになったようです。「絶対成功するイベントを考えました!」という発言や、もし失敗しても「必ずお客様は来るからもう1回やらせてください!」など、前向きな発言が増えました。
川田さんは次のような言葉を記事で述べています。
“チーム自治を取り入れる前の僕は、社員たちに対して「なぜ僕の言ったことを自分の言葉で理解してから実行に移さないのか」とやきもきし、「主体性がない」「意識が低いのでは」と評価していました。
それが、ふと思い立って始めたチーム自治を通じて社員の様子を見ているうちに、僕が伝えたいと思っていたことはきちんと彼らに伝わっていたのだと気が付きました。今まで教えたことはしっかりと彼らのベースになっていて、その上で自主的に動けるように環境を変えたことでやりがいが増し、結果につながったのです。
主体性を求めながら、それを発揮する場所を与えていなかった。実は、意識を変えなければならないのは「変えろ」と言っている僕の方だったのだと思い至りました”
参考:社員の意識改革の成功事例からわかる必要性やポイントについて|ヤマチユナイテッド 100VISIONS経営
社員が成長型マインドセットになるための「土壌」を整える。この改革成功により、同社の社員は、上層部が「これでいいだろう」と判断した業務を的確にこなすのではなく、自分たちが熟慮した案を自分たちで実行することに楽しさを見出すようになりました。
部下のマインドセットを変えるためには、まず自分自身の意識を変え、それを行動で示すことの重要性が伝わる好事例と言えます。
MUFG【パーパスを「自分ごと化」するマインドセット改革】
三菱UFJフィナンシャルグループでは、パーパスを自分ごと化し、挑戦するマインドを生むためのカルチャー改革を行いました。
「銀行はお金を扱うため、失敗しないことの重要性が高い」。そのような価値観があると「失敗するなら挑戦しないほうがいい」という硬直マインドセットに陥りやすくなります。
しかし、今の銀行を取り巻く状況を鑑みると、これまでの仕事が社会の役に立たなくなるかもしれない。それなら何もしないよりは、新しい世界に向け自ら変革に挑み、すぐに行動を始めたい。同社では、そう思えるように、パーパスを自分ごととして落とし込むマインドセット改革を行っています。
“社員一人ひとりが日々の業務とパーパスを結び付け、具体的な行動に繋げていくために、2021年度に実施した「MUFG Way浸透セッション」を深化させる取り組みを始めました。
まず、社員全員が自身の価値観・信念・志である「My Way」とMUFG Wayの重なりについて考え、MUFGで働くことで誰に対し、どのように貢献していくのかを具体的に言語化し、それを上司や後輩など周りの人と率直に語り合う「MUFG Way共鳴セッション」を実施しました。
また、MUFG Wayを体現する社員や取り組みを増やすプロジェクトとして「MUFG Way Boostプロジェクト」も始まりました。このプロジェクトには、亀澤社長の任命を受けた、海外拠点やグループ会社などさまざまな組織に所属する約70名のメンバーが参加し、毎週オンライン上で集まり熱く議論を交わしました。議論の結果、プロジェクトの第1弾として「この人こそはMUFG Wayを体現している」と思う社員を広く社内から募集し、推薦された社員一人ひとりに、プロジェクトメンバーが想いや活動をヒアリングし、まとめた「MUFG Way体現者ブック」を発行しました。
他の社員の取り組みを知ることで、パーパスの自分ごと化が難しいと感じている社員に、少しでも気づきを得てもらうことを期待しています。他にも、体現者ブックを使った座談会やラジオ放送・動画配信などを実施しました。こうした取り組みを通じて、社員一人ひとりの内発的な動機に基づくMUFG Wayの体現を後押しし、組織全体でパーパスの実現をめざしていきます”
パーパスの「自分ごと化」にはそれが目の前の業務とつながっている、社会へ貢献できているという実感が必要です。そのためには、各自が自分の「ありたい姿(キャリア)」と「パーパス」の重なりを見つけていくことが重要になります。
そして現場で実践するために、同社の「MUFG Way体現者ブック」に代表されるような、パーパスと現場の行動をつなぐ「樹形図」を作ることが有効な手段だと考えられます。
JAL(日本航空)【「JALフィロソフィ教育」による意識改革】
経営危機にあった大手航空会社JAL(日本航空)。
経営破綻当時の同社は、一握りの経営幹部が指示を出し、組織がそれを守り実行する「縦割り」意識の強い組織でした。新しく就任した稲盛会長は、旧経営陣のメンバーや企業理念、ロゴマークまで、企業の根本となる部分を一新しました。
そして、全社員がいきいきと働ける会社にするために、入社10年目までの従業員を対象に、モチベーションとコミュニケーション力を高める研修を実施しました。
研修のキーワードは「I will be OK!」「I like me!」「I like you!」。これは「自分にもできる」という感覚や、自分を肯定する気持ち、仲間が好きだという気持ちを持つことで、従業員自身が幸福感を意識できるようにするための研修です。モチベーションの源泉は、自己効力感。まさに、成長マインドセットを育む研修です。
稲盛氏はさらに、従業員全員が持つべき意識、価値観として、JALフィロソフィを掲げ、この理念を浸透させるJALフィロソフィー教育を、会社・部門を横断したチームで実施し、JALの一員としての意識を醸成しています。
“研修は一回2時間、年に4回行いますが、基本的に毎回全員参加です。言いかえれば、全員が、年に4回、JALフィロソフィ教育を受ける、ということです。教育内容は毎回変わります。この内容を考えることが、フィロソフィグループの重要な仕事のひとつとなります。
JALフィロソフィは、40項目からなっていて、それが大きく第一部と第二部に分かれ、それぞれが4章と5章にまとめられています。社外にも公にしていますので、是非ご覧になってください。
メンバーたちは、現場に取材するなどして、次回のテーマとするJALフィロソフィを1〜2項目選び、それを伝えていくための、具体的な内容、進め方まで設計していきます。もちろん、実際の運営もチームの仕事です。毎回内容は異なりますが、基本的には一方的なレクチャーではなく、参加メンバーたちが自発的に発言、考えることができるような仕掛けにしています。
研修を作り、運営する人財が多様ならば、一回一回集まってくる人財も多様です。どの回に誰が参加するかは、基本的に本人からの申し込みで決まります。仕事の性質上ローテーションがあるような職種の場合は組織が割り当てることもありますが、部署毎にまとめて、ということにはしていません。ですから、いろいろな会社や部署から集まってきた、ほとんどが初対面というメンバーとJALフィロソフィについて考えることになります”
参考:板谷和代氏「第16回 グループとしてJALフィロソフィを体現し、一体感を持って、元気に働くために」|人材・組織システム研究室
こうした取り組みの結果、JALフィロソフィーは社内に浸透し、同社の現場は破綻前と比べて大きく変わりました。採算意識が高まり、部署を超えたコミュニケーションが活性化し、能動的・自律的に社員が動くようになっていったのです。
社員の幸福を追求した自律的な研修や様々な改革が「成長マインドセット」を育み、意識改革の成功を導いた好事例です。
タカラトミー【リスクをとる精神を育む意識改革】
老舗玩具メーカーの「タカラトミー」は、グローバル化を推進するにあたり、社員の意識改革を進めています。
少子高齢化による国内市場の縮小や、プラザ合意による円高で厳しい時代を経験しながらも、決して臆することなく海外展開を進めてきた歴史があります。2013年には国内はもちろん国外でも販売が苦戦し、営業利益は25億円まで低下したものの、2018年の連結営業利益は131億円と過去最高となりました。
このV字回復に貢献したのは、「意識改革」「商品改革」「ビジネスの構造改革」の3つの柱からなる新中期経営計画です。
社員の意識改革では、まず初めに、V字回復時に社長を勤めていたハロルド・ジョージ・メイ氏の演説により、組織のパッションを奮い立たせました。1926年の第一創業期から2015年までの第三創業期の歴史について触れ、長い期間、時代の変化に対応してきた凄い企業である、というプライドを社員に植え付けます。そして、売上拡大に向けて広告宣伝や研究開発などに積極的に資金を投下すると同時に、「失敗を恐れず、チャレンジを続けよう」と社員に激励を続けました。
またメイ氏は、「褒めること」を大切にしていました。出社時、毎日自分の席まで行くルートを変えており、話したことがない社員に声を掛けて具体的なエピソードをもとに褒める、ということを実施していたそうです。さらに、外資系企業でよく行われる「People Day」という取り組みを導入し、社員のエンゲージメント向上に繋げました。
“外資系企業でよく行われている「People Day」とは幹部が自分の部下を他の幹部に説明する場であると述べています。メイ氏は他の幹部に説明する内容は以下3点だと述べました。
- 一人一人の強み・弱み
- 研修・異動・OJTなど、今必要な改善
- 昇格・現状維持・異動などの3~5年後のキャリア
メイ氏はこれらを他の幹部に説明することにより、大きな2つのメリットがあると述べています。1つ目は、一人一人の強み・弱みを説明することによって、第三者から全然違った意見が舞い込んでくるということです。2つ目は、社員一人一人について議論することで、議論されている当事者は「自分のことを考えてくれる組織である」と感じ、「会社に守られている」という認識が根付くようになる、と説明しました”
参考:【セミナーレポート】成長企業の人事vol2.〜今の組織をもう一度見直そう、成果が出る人材育成・組織づくりとは〜|back check
このように同社では、社員の挑戦に対するマインド改革を行い、グローバル化に対してリスクを取ってでも挑戦する精神を育んでいます。
村田製作所【次世代リーダーを育てるための中堅層の意識改革】
世界トップクラスの電子部品メーカー、村田製作所。
同社では、将来的に経営に関わることが期待される中堅層の育成を重視する中、30〜40代の次世代リーダー育成の研修として、人材育成プログラム『Make2030』を実施しました。3つのステップから成る、事業・組織・勤務地の垣根を超えた130名が集まる、組織横断型の研修です。
STEP1では、中期の経営課題に関するコアテーマの講演、経営陣と有識者による対談を受講。
次のSTEP2では、130名の受講者が27のチームに分かれ、部門を横断した疑似経営チームを結成。「ムラタ」という主語を一旦取り払った自由な発想で未来を妄想し、自分たちなりの変化の仮説を導き出し言語化する「未来妄想ストーリー」に取り組みます。そして「未来妄想ストーリー」をムラタの経営課題と結びつけ、最終報告会で具体的なアクションプランを経営陣にむけて提案しました。
最後のSTEP3は、自身のキャリアと向き合い、リーダー像について対話する「リーダー像の明確化」。育成責任者との1on1や、役員・部門長クラスへのインタビューを行うなかで、自身が思い描くリーダー像を言語化します。
この『Make2030』研修を受けた受講者からは、様々な意識の変化があったようです(以下、コメント抜粋紹介します)。
“最初は自分の無知をさらけ出すようで怖かったのですが、みんなも同じように少しずつ理解を深めていることを知り、安心しました。あるコアテーマに詳しい人がいれば、その人を中心に議論が進み、議論することで周りの人の理解も深まって行き、後半はグループディスカッションの時間が楽しみになったほどです”
“現業や子育てに追われるなかで「私は本当にリーダーになりたいのだろうか?」という疑問に突き当たりました。そうした本音を上長に伝えたところ、「首藤さんらしいリーダー像はどんなものか。そして、周囲のどんなサポートがあれば前向きになれるのかを教えてほしい」と言われ、あらためて自分の中にある不安の根源や、自分だから発揮できる価値に向き合いました。そこから自分なりのリーダー像を考えて、私のような女性で時短勤務の人でもリーダーになることは、次の人のために道を切り拓くことなのだと思い至ったのです”
参考:革新の担い手となる意識の変化はどのように生まれたか?|村田製作所
こうした本音で議論し合う場が、社員の成長マインドセットを育み、「会社の未来」や「変革の担い手」という言葉を自分ごととして考えることに繋がったようです。
キリン【「真にお客様のことを一番に考える組織風土」への改革】
キリンでは、従業員一人ひとりが真にお客様のことを考え、主体的に挑戦する組織風土づくりを重視しています。
以前、キリンはビール市場で長くトップシェアを誇っており、「ビールと言えばキリン」と言われるほどでした。しかし、消費者のニーズの多様化や他社のヒット商品の影響を受け、2001年に首位から転落してしまいます。
同社ではこの出来事をきっかけに、同年に「新キリン宣言」を発表し、組織風土改革に取り組み始めました。しかし、改革を進めてはいたものの、2015年に布施孝之社長が就任した時点では、成果がでないことを他人や他部署のせいにする雰囲気や、ヒット商品が出ると安心し、元に戻ってしまう慢心が感じられる組織風土のままでした。
危機感を抱いた布施社長は、若手社員や労働組合をも巻き込んだ対話集会をスタートさせ、「お客様のことを一番に考える組織風土に」というメッセージを繰り返し説き続けました。
“キリンビールはなぜ、飲み飽きないおいしさを実現したフルリニューアルという、正しい方向へと進化させることができたのか。間接的な要因として見逃せないのは、同社社長の布施孝之氏による組織風土改革だ。
布施氏は15年に就任してから、社員とひざ詰めの対話集会を繰り返して、問題意識のある若手社員や労働組合をも巻き込んだディスカッションを重ねてきた。そこで伝えたメッセージの1つが、「真にお客様のことをいちばんに考える組織風土に」。これまで以上に、「判断基準はお客様に」を徹底しようと説き続けた。
対話集会は40カ所、議論した相手は延べ900人に及んだ。また、若手選抜社員を対象に「布施塾」も開講するなど、トップ自ら発信を続けた結果、社員の意識は着実に変わっていったという”
参考:キリン「一番搾り」過去10年で売り上げNo.1 〜ビール変革期にヒットする商品の特徴とは?〜|東洋経済オンライン
現在も、挑戦風土作りは、社員の自主的な取り組みにより続いています。
挑戦思考の風土を作りたいという思いのもと、若手社員4人が立ち上げた「キリンアカデミア」では、年齢や場所を問わない学びを共有する場として、社員の学びを促進するためのオンラインセミナーや新規事業立案ワークショップ、メンタリングなどの企画を実行しています。
社長主導の本気の意識改革が社員にも伝わった結果、現場社員自らが手を挙げて、みんなの挑戦マインドを育む取り組みを行うようになった成功事例と言えます。
マインドセットが変わる3つの方法論
本稿の締めくくりとして、組織として個人のマインドセットが変わる(成長マインドセットが育まれる)ための方法論をご紹介します。
1. マインドセットに気付くための 1on1ミーティング
人は誰しも、自分自身のことに無自覚なものです(第三者からの指摘で自身の長所や短所に初めて気づくケースは少なくありません)。
マインドセットも同様です。まずは自分自身がどのようなマインドセットを持っているのかを知ることが、マインドセットを変えるための第一歩になります。
組織として個人のマインドセットに気づきをもたらすための方法としては、1on1ミーティングの場で第三者視点の意見をもらうことがお勧めです。普段の自分の行動を見ている上司やメンターだからこそ、自分のマインドセットを的確に把握しているものです。
<ご案内>
1on1ミーティングについて詳しく知りたい方は下記の記事をご覧ください(1on1ミーティングで押さえてくべきポイントについて、分かりやすく解説します)。
2. 経験を積む機会の提供
経験というものは、それ自体がマインドセットに大きく影響するものです。
人は自分自身を頑張るしかない状況に追い込み、経験を積み重ねる中で、頑張れば報われる意識(成長マインド)を獲得・強化することができます。
そういった経験の機会獲得は本人の主体性に委ねられる側面がありつつも、組織として、個人が経験を積む機会(新規事業立案コンテストや企業内大学、副業制度や公募制の異動制度など)を提供することが推奨されます。
また、経験とは日々の業務そのものであるという観点では、チームメンバーに経験を積む機会を提供する立場にある管理職(マネージャー)の育成に力を入れることも大切です。
<ご案内>
私たちプロジェクトデザインは、チームが一体となり、目的に向けて効果的に行動するための意識と能力を継続的に伸ばし続ける組織をつくる方法論である「学習する組織」を構成する、3つの柱と5つの実践事項を学ぶ研修プログラムをご提供します。
3. 組織のマインドセットの浸透
企業が掲げるPMVV(パーパス・ミッション・ビジョン・バリュー)。それは、自分たちの組織の目的・使命・未来像・価値観を示すものであり、組織のマインドセットを体現するものです。
人は、自分のためよりも他者のためを思う際に大きな力を発揮するように、PMVVを浸透させること(一人ひとりの社員の共感を引き出すこと)によって組織への貢献意欲を高め、自然な形で、個人の硬直マインドを成長マインドに転換させる効果が期待されます。
<ご案内>
MVVについて詳しく知りたい方は下記の記事をご覧ください(ミッションとビジョンとバリューの言葉の意味について解説をしつつ、具体的な企業のMVVの事例をご紹介します)。
この記事の著者について
執筆者プロフィール
氷見 優衣
神戸大学国際人間科学部環境共生学科の4年生(2024年時点)。高校生の時に参加したワークショップで体験型のゲームコンテンツを通した社会課題の解決や参加者全員が主体的に生き生きと議論できる「場づくり」に魅せられる中で、体験型ゲームの開発元であるプロジェクトデザインと出会う。2022年の8月より、同社の長期インターンシップに参加。大学で学んでいる知識を活かし、環境問題や社会課題、SDGsをテーマにした記事の執筆に取り組む。ジブリ映画が大好きで、趣味は絵を描くことと、カフェ巡り。
監修者プロフィール
亀井 直人
鳥取県立鳥取東高等学校卒業、福岡工業大学情報工学部情報通信工学科卒業。SE(インフラエンジニア)として長く経験を積む。プロジェクト遂行におけるチームのパフォーマンスを引き出すためにファシリテーション技術の習得・実践を続ける。特定非営利活動法人日本ファシリテーション協会では役員(2016年~2021年理事、2019年~2021年副会長)を務める。富士ゼロックス福岡在籍中にSDGsとビジネスゲーム「2030SDGs」に出会う。ビジネスゲームが持つ力の素晴らしさに触れ、2020年に研修部マネージャーとしてプロジェクトデザインに合流する。活動を通じて関わり合う方々との対話を楽しみにしている。鳥取県鳥取市出身。蟹と麦チョコが大好き。
- 経済産業省認定情報セキュリティスペシャリスト
- PMP(Project Management Professional)
- NPO法人 SDGs Association 熊本 監事
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