オンボーディングとは?意味と目的、企業の取り組み事例
- 最終更新日:2024-06-20
オンボーディングとは何か。
その意味と目的、ビジネスシーンで注目されている背景、そして、先進的な企業の取り組み事例について、分かりやすく解説します。
オンボーディングとは
オンボーディングとは、組織の新メンバーをサポートする取り組みを意味します。
その上で、オンボーディングの由来は「on-board(乗り物に乗る)」という言葉にあるように、新メンバーに組織という乗り物を乗りこなしてもらう=新メンバーを組織に馴染ませることが、オンボーディングの目指す姿であると捉えられます。
オンボーディングの目的(期待される効果)
早期離職の防止
新メンバーは新卒・中途を問わずに、新しい組織に対する大きな期待と不安を抱え、精神的に不安定な状態にあるものです。リアリティショック(理想と現実のギャップがもたらす衝撃)を受けやすい状況にあるとも言えます。
だからこそ、オンボーディングを通じて新メンバーを組織に馴染ませるプロセスを経ることに大きな意義があります。リアリティショックが起きることは避けられずとも、その衝撃を緩和させることは十分に可能です(オンボーディングを通じた相互コミュニケーションによって、未然に防ぐことのできる早期離職は少なくありません)。
着実な戦力化
組織文化への適応、組織固有の仕事の進め方の理解、アンラーニング(これまでの知識や価値観をリセットし、新しい組織環境の習慣や行動特性などを学び直すこと)、既存メンバーとの信頼関係の構築。
新しいメンバーが自らが持つ能力やスキルを最大限発揮するためにクリアすべきことは数多くあります。人材採用における即戦力神話に惑わされずに、腰を据えてオンボーディングの取り組みを丁寧に継続することが、新メンバーの着実な戦力化につながります。
仲間を大切にする組織風土の醸成
新メンバーを支えるべく、全社一丸となってオンボーディングの取り組みを進めることを通じて、仲間を大切にする組織風土を醸成することも可能です。
そういった風土は、オンボーディングの枠に囚われない、組織の新規加入メンバーに対する「きめ細やかな支援」を生み出すことにつながります。
オンボーディングが注目されている背景
採用難の時代
日本の人口は2008年の1億2,808万人をピークに減少の一途を辿っています。
特に、15歳未満の子どもの人数は43年連続で減少し続けています。1950年の2,943万人から、2024年には1,401万人にまで減少しています(総務省統計局のデータを参照)。
なお、日本の労働力人口(15歳以上人口のうち、就業者と完全失業者を合わせた人口)は2013年の6,593万人から、2023年には6,925万人へと増加していますが、これは専業主婦などの女性や高齢者の労働参加があってこその数字です。若者の人数が減っている以上は長期的には労働力人口も減少することは明らかです。
また、大卒の若者中心の新卒採用や経験豊富な即戦力人材を狙う中途採用においては、人材の需給バランスはすでに崩れている状況です。採用需要に対して人材が少ないアンバランスな状態(売り手市場)が続いています。多くの企業では採用活動が難しくなった(いよいよ採用難の時代に突入した)と感じている状況があり、新しく加入した人材を大切にする意識が高まっています。
ちなみに、オンボーディングの取り組みを外部に公開することは採用ブランディングにも一定の効果が期待できます(オンボーディングには採用競争に勝つための戦略的施策としての側面もあります)。
人的資本経営の実践
ヒト・モノ・カネの経営資源と言われるように、人材は人的資源(Human Resource)として一般的に認識されています。資源とは使う・消費するものであり、経営においては人材に係るコスト管理に主眼が置かれています。
これに対して、人的資本経営では、人材とは人的資本(Human Capital)であると考えます。そして、企業のマネジメントの方向性はコストの管理ではなく、投資です。つまり、人的資本経営とは、人材の価値を最大限に引き出すための投資を通じて、中長期的な企業価値の創造につなげる経営の考え方であると捉えられます。
参考:人的資本経営とは何か?注目されている背景と人的資本経営に関する企業事例をご紹介!|株式会社プロジェクトデザイン
この人的資本経営の実践の文脈で、組織に新しく加入した人材に対する投資としてのオンボーディングが注目を集めています。
オンボーディングの取り組み内容
新規加入メンバーを組織に馴染ませることを目指すオンボーディングの取り組み領域は広範囲に及ぶため、これからご紹介するオンボーディングの取り組み内容は一部に限られますことを予めご了承ください。
また、どんなオンボーディングの取り組みを行うべきかの判断は各社の方針や戦略によって異なるため、それぞれの取り組み内容自体に優劣はありません。
オンボーディングに関連する研修
オリエンテーション
オンボーディングの観点においては、オリエンテーションの中で、新メンバー同士・新メンバーと既存メンバーとの交流機会を設けることが推奨されます。
レクリエーションのように気軽に交流できるコンテンツ、あるいは、チームビルディングを意図したコンテンツをオリエンテーションの中で実施すると良いでしょう。
受け入れる側のオンボーディング研修
オンボーディングの取り組みは、人事部門に閉じたものではなく、受け入れ部門の主体的な協力が欠かせません。
ゆえに、新メンバーを受け入れる側に向けてオンボーディング研修を実施し、オンボーディングの知識を伝え、具体的な取り組みを進める機運を高めることが重要になります。
オンボーディングに関連するイベント
入社式
メンバーが一堂に会する入社式は、オンボーディングを行う上で最適な機会になります。
Welcome Box(ウェルカムボックス)を通じて自社のカルチャーを伝えるも良し。メンバー同士の交流プログラムを実施することで関係性を深めるも良し。新メンバーの不安を軽くし、会社に対する期待が膨らむような場を企画することが推奨されます。
社内交流ランチ
社内交流ランチ(交流を目的としたランチコミュニケーション)は、新メンバーが組織に溶け込む上で大きな効果が期待できるオンボーディング施策になります。ランチという場だからこそ、業務中のビジネスライクなコミュニケーションの中では見えづらい、互いの人柄や価値観を知ることができ、仲間意識の醸成につながります。
なお、全社的にコミュニケーション面での課題がある場合は、シャッフルランチ(役職や部門の壁を超えて、ランダムなメンバーでランチを取るコミュニケーション手法)もお勧めです。
オンボーディングに関連するサポート
オンボーディングサーベイ
入社から一定のタイミングで(できれば複数回に渡って)新人メンバーの状況を調査・ヒアリングすることは、個別具体的なオンボーディング施策の実施や、組織全体のオンボーディングの改善につながります。
1on1ミーティング
1on1のマンツーマンコミュニケーションは、対象者の成長を促すだけでなく、互いの信頼関係の構築や心理的安全性の醸成など、多くの効果を創出することが可能です。
オンボーディングにおける1on1ミーティングは、メンターによる精神面のサポートを行うことが推奨されます。上司と部下という縦の関係性では本音やプライベートの事情を話すことが難しいケースがあるからこそ、メンターという話しやすい存在が必要になります。
なお、メンターには、同性・同年代・似た立場にある人物をアサインすると良いでしょう。
<ご案内>
1on1ミーティングについて詳しく知りたい方は下記の記事をご覧ください(1on1ミーティングで押さえてくべきポイントについて、分かりやすく解説します)。
企業のオンボーディングに関する取り組み事例
LINEヤフー
LINEヤフーでは、オンボーディング施策を中途で入社した人に向け、強化する取り組みを始めています。例えば、入社オリエンテーションを、中途入社者同士の交流の場に変える取り組みは、当事者から好評を得ています。
“毎月入社初日に中途入社者オリエンテーションを行っているのですが、こういったオリエンテーションはつい会社から一方通行の情報伝達になりがち。そこで本プロジェクトでは、入社者同士のワークを盛り込み、会社の理念や仕事内容、また入社後の期待や不安についてともに語りあえる場に変更しました。
配属先の異なる中途入社者でチームを編成し、ヤフーのオープンコラボレーションスペース「LODGE」で同じテーブルを囲みます(東京以外の拠点の入社者はオンラインで参加。また、緊急事態宣言下では全員オンラインで参加)。それぞれのバックグラウンドや人となりを知り、その縁を今後の仕事にも生かしてほしいという狙いがあります。
「社内の評判もよく、参加した中途入社者からも『社内ネットワークづくりに役立った』と好評でした。今後、もし壁にぶつかっても、このオリエンテーションで知り合った仲間同士、互いに支える関係になってほしいと考えています”
サイボウズ
サイボウズでは、「チームワークを発揮するために必要な要素を理解し、やるべきことに前向きに取り組むことで、期待通りにチームに貢献できる」ことをコンセプトに、新卒・キャリア入社メンバーそれぞれに適したオンボーディングプログラムを実施しています。
“新卒入社メンバー向けのオンボーディングでは、1年間を通してプログラムを実施しています。入社後3週間ほどの研修では、サイボウズで働くうえで重要なキーワードである「個人の自立」と「チームワーク」の2つを軸に、社会人としてのマインドセットやキャリア選択に対する考え方など、汎用的な知識・スキルを身に着けていただきます。その後は配属された部門ごとの研修に移ります。そして1年目までは、人事主催のフォローアップ研修を定期的に実施しています”
“キャリア入社メンバー向けのオンボーディングでは、6ヶ月間のプログラムを実施しています。一般的にキャリア入社は即戦力としての活躍を求められる傾向があります。しかしサイボウズは、新しく入社するメンバーが前職との文化やコミュニケーションの違いに戸惑うのは当然と考えているため、焦らずじっくり慣れていただきたいというスタンスで、様々なコンテンツを準備しています”
三井住友海上火災保険
三井住友海上火災保険では、新メンバーを受け入れる部門向けにオンボーディングリーダー研修を実施することで、受け入れる側の体制を整えています。
“チームワークを発揮するには、関係の質を引き上げ、「心理的安全性」を高めることが重要です。部門間異動者やキャリア入社社員が新たな職場に適応し、良好な人間関係を形成することで、自身の強みや能力を早期に発揮できるよう、職場全体でサポートをする制度です。また、部門間異動者やキャリア入社社員の受け入れ部門向けに、オンボーディングリーダー研修も実施し、受け入れ体制も整えています”
DeNA
DeNAでは、中途入社者向けの濃密なオンボーディング「DOP(DeNA Onboarding Program)」を2022年1月より始動
多彩なバックグラウンドを持って入社した中途社員を対象に、DeNAをいち早く理解し、なじみ、活躍してもらうための入口として、約4ヶ月間・13回のプログラムを実施しています。
また、同社ではオンボーディング当事者のフィードバックを受ける形でプログラムを進化させています。その背景にある「たとえ非効率でも、パッケージ化しない」という考え方には、ひとり一人の中途社員に対するリスペクトが感じられます。
“先にお話したとおり、DeNAはリモートワークが中心なので、オフィスで自然と顔を合わせたり、DeNAカルチャーを肌で感じたり、雑談から人となりを感じたりという、ノンバーバルなコミュニケーションがない環境です。
そのような状況下で、居場所をつくり、カルチャーを理解してバリューを発揮し、より良い自己表現や自己実現をしていただくために、『DOP』は大事な入り口です。
機械を相手にしているわけではなく、感情も価値観も一人ひとり異なるわけで、その場は“生モノ”です。きちんと丁寧に向き合うべき部分は、工数をかけてでもパッケージ化せずにやるべきだと思っていますし、常にアップデートし続けたいと思います”
参考:DeNAの中途入社者がフルスイングするための“ホームベース”に。「オンボーディング」プログラム始動中|フルスイング by DeNA
メルカリ
メルカリでは、新型コロナウイルスの影響を受ける形で新入社員のオンボーディングを完全オンラインに切り替えていましたが、2023年12月からオフィスでの入社オリエンテーションを復活させることを決断しました(この決断に至った理由は大いに参考になります)。
<入社オリエンテーションを復活させるに至った具体的な理由>
- 対面でのコミュニケーションやチームビルディングがリモートと比較してより一体感を得られるという意見が多く寄せられたこと
- オフィスでの入社オリエンテーションによって、新入社員にメルカリの雰囲気や価値観をより感覚的に理解してもらいやすいこと
- 同じ日に入社した「入社同期」との関係構築ができること
- 「入社日にオフィス出社」とすることで、一つの節目として参加してもらえる・出社スケジュールが立てやすいなど、オフィス出社のハードルが下がること
サイバーエージェント
サイバーエージェントでは、新卒・中途のそれぞれにオンボーディングのプログラムを導入しています。また、同社ではオンボーディングの取り組みを通じた部署全体での育成カルチャーの醸成に取り組んでいる点も印象的です。
“-入社後に受ける育成プログラムについて教えてください。
新卒・中途で入社した社員を3ヶ月で戦力化する「スタメン」という育成プログラムがあります。個々人がトレーナーと共に目標設定し、インターネット広告事業本部全体で横断的にモニタリングを実施。所属の事業部ごとにチーム戦となっていますが、目標達成のためにチームを超えて助け合う場面もあったりしますね。
困っている新人がいたら全員で手を差し伸べる、人の成長を諦めない、というのが私たちの育成に対する考え方。入社者が愚直に頑張る姿を見て先輩社員たちも鼓舞されるし、部署全体で育成していこうという雰囲気の醸成にもつながっています。また、月に一度「スタメン月初会」という場で成果をあげた個人やチームを表彰することで、仲間の成果や頑張りを賞賛する、当社らしいカルチャーを体感する機会をつくっています”
参考:過去最高の業績を更新し続ける広告事業。最大の競争力である人材育成のカルチャーに迫る。|CyberAgent Way サイバーエージェント公式オウンドメディア
Chatwork
Chatworkでは、2023年3月以降の入社者を対象に、Welcome BOX の取り組みを始めています。カルチャーフィットを大切にしている同社だからこそ実現した、素敵な取り組みです。
“──自宅にこんな箱が届いたら思わずテンションも上がりそうですが、この“Welcome BOX”のねらいを教えてください。
時澤:Chatworkでは採用でも「カルチャーフィット」を大切にしているので、入社前から私たちのカルチャーに触れてもらいたい!というのが企画の出発点です。
小野寺:私たちのカルチャーや、ミッション・ビジョン・バリューは社外にも積極的に発信していますが、まずは社内から。「Chatworkってこういう会社だよね」というイメージや価値観を自分たちでちゃんと体現できていないと、それを外に発信していくことはできないと思うんですね”
この記事の著者について
執筆者プロフィール
池田 信人
自動車メーカーの社内SE、人材紹介会社の法人営業、新卒採用支援会社の事業企画・メディア運営(マーケティング)を経て、2019年に独立。人と組織のマッチングの可能性を追求する、就活・転職メディア「ニャンキャリア」を運営。プロジェクトデザインではマーケティング部のマネージャーを務める。無類の猫好き。しかし猫アレルギー。
監修者プロフィール
亀井 直人
鳥取県立鳥取東高等学校卒業、福岡工業大学情報工学部情報通信工学科卒業。SE(インフラエンジニア)として長く経験を積む。プロジェクト遂行におけるチームのパフォーマンスを引き出すためにファシリテーション技術の習得・実践を続ける。特定非営利活動法人日本ファシリテーション協会では役員(2016年~2021年理事、2019年~2021年副会長)を務める。富士ゼロックス福岡在籍中にSDGsとビジネスゲーム「2030SDGs」に出会う。ビジネスゲームが持つ力の素晴らしさに触れ、2020年に研修部マネージャーとしてプロジェクトデザインに合流する。活動を通じて関わり合う方々との対話を楽しみにしている。鳥取県鳥取市出身。蟹と麦チョコが大好き。
- 経済産業省認定情報セキュリティスペシャリスト
- PMP(Project Management Professional)
- NPO法人 SDGs Association 熊本 監事
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