ビジネスにおけるウェルビーイング(Well-being)とは? 意味と企業の取り組み事例

ウェルビーイング(Well-being)とは何か。

ビジネスシーンにおけるウェルビーイングの意味について、実際の先進的な企業のウェルビーイングに関する取り組み事例を交えながら、分かりやすく解説します。

Contents(目次)

ウェルビーイング(Well-being)とは

ウェルビーイング(Well-being)とは、幸福を意味する言葉です。その上で、ウェルビーイングの本質的な意味を掴む上では、世界保健機関憲章前文の内容が参考になります。

“Health is a state of complete physical, mental and social well-being and not merely the absence of disease or infirmity.”
健康とは、病気ではないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態にあることをいいます。

参考:世界保健機関(WHO)憲章とは|公益社団法人 日本WHO協会

健康(health)の定義を語る文脈の中で、ウェルビーイングは満たされた状態を指しています。つまり、ウェルビーイングとは、一時的な感情ではなく持続的な充実感であると捉えられます。よって、組織が個人のウェルビーイングを実現するためには継続的な取り組みが求められます(充実感をコップの中の水に喩えると、まずはコップの中の水を満たし、次にその状態を維持し続ける必要があります)。

さて、このウェルビーイングの概念は、ビジネスシーンにおいても広く使われているものですが、企業によってウェルビーイングの定義・捉え方には異なりがあります(企業が継続的な取り組みを行うには、それなりの理由が必要であり、その理由が企業によって異なります)。

そこで本稿では、先進的な企業のウェルビーイングの取り組み事例をご紹介しながら、ビジネスシーンにおけるウェルビーイングの姿に迫っていきます。

それではどうぞ!

ウェルビーイングとは「健康経営」である。

ウェルビーイングと健康は、ほとんど同じ意味(※)を有していることは、先述の世界保健機関憲章の内容からも明らかです。

※2つの言葉の違いを挙げれるのであれば、健康が心身の良い状態を指す言葉として使われているのに対して、ウェルビーイングでは心身に加えて社会的なつながりに対する充足感を含む点が異なります。

ビジネスシーンでは、従業員の健康管理を経営的な視点で実践する健康経営(※)の流れの中でウェルビーイングの実現を目指す動きが多く見受けられます。

※2014年に経済産業省と東京証券取引所が健康経営に取り組んでいる上場企業を選定する「健康経営銘柄」の制度が始まり、2016年には「健康経営優良法人認定制度」が経済産業省によって創設されるなど、健康経営は国を挙げた取り組みとなっています。

花王のウェルビーイング

花王では、ウェルビーイングを健康経営の結果として捉え、健康経営の取り組みを積極的に推進しています(2015年から8年連続で経済産業省と東京証券取引所による「健康経営銘柄」の選定を受けるなど、健康経営のトップランナーとしての評価を得ています)。

“人員構成や健康課題から導き出された6つの取り組み(生活習慣病・がん・禁煙・シニア・女性・こころ)と基盤活動(健康診断・二次検査・保健指導・治療と就業の両立支援・感染症対策・健康管理と有害業務者管理等)により、Well-being 一人ひとりのより良い状態を実現することを目指しています”

参考:花王| 花王グループ健康経営のご紹介

楽天のウェルビーイング

楽天では、楽天健康宣言 「Well-being First 」のもと、安全な職場づくりや従業員の心身の健康にコミットし、従業員・地域社会のウェルビーイングに貢献しています。

“楽天では、代表取締役社長をトップに位置づけた健康・安全・ウェルネス経営の推進体制をグループ全体で構築しています。CWO(Chief Well-being Officer)のリーダーシップのもと、ウェルネス部を中心にグループ企業が連携し、Body(健康的な体)、 Mind(健康的な心)、 Social(健康的な社会とのつながり)を促進するための様々な取り組みを行い、健康的に働き続けられる従業員、組織風土作りの実現を目指しています。

具体的には、知識向上や情報共有の場として健康経営ワーキンググループ勉強会を定期的に開催したり、健康課題や状況確認のためヒアリングを行うなどしてグループ全体の健康経営の推進活動を行っています。さらに、楽天健康保険組合においては、従業員への健康情報の提供、病気の予防を目的とした各種健診、運動施設や保養施設の利用機会の提供など、従業員とその家族の健康をサポートしています”

参考:健康・安全・ウェルネス|楽天グループ株式会社

IHIのウェルビーイング

IHIでは、ウェルビーイングを「“こころ”と“からだ”が健康で、生き生きと働き、個人も組織も活力ある状態」という定義し、心とからだの両面から健康管理に取り組んでいます。

“メンタルヘルス教育では、ディフェンス(不調者へのきめ細かい個別フォロー、復職支援特別勤務制度や再適応プログラムを活用した対応)とオフェンス(メンタルタフネス:モチベーションやコミュニケーション、パフォーマンスを向上させるための教育など)を実施し、管理監督者から新入社員まで、生き生きと働く人づくりと職場づくりを目指しています。また、メタボリック症候群や偏った生活習慣の改善、禁煙、新型コロナウイルス感染拡大予防などの健康対策にも継続して取り組んでいます”

参考:労働環境の向上(労働安全衛生)|社会|サステナビリティ|株式会社IHI

ウェルビーイングとは「働き方改革・D&I」である。

身体的・精神的・社会的な充足感を意味するウェルビーイング。

この社会的な充足感に焦点を当てると、個人(社員)と共に社会的活動を進める企業としては、個人の多様な価値観を許容する働き方改革やD&I(ダイバーシティ&インクルージョン)によってウェルビーイングを実現することが考えられます。

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D&Iに関して興味の有る方は下記の記事をご覧ください(D&Iとは何か。その意味とビジネスシーンで注目されている背景、そして、D&I推進における課題と企業の取り組み事例を分かりやすく解説します)。

コクヨのウェルビーイング

コクヨでは、社員のワークライフバランスの実現や新たな働き方の推進、そしてジェンダー、障がい、国籍など多様性ある組織づくりによるイノベーションの創出を通して、Well-beingの向上を図っています。

“コクヨでは、自分らしい働き方・学び方・暮らし方のバランスが整っている状態を「Life Based Working」と定義付け、活き活きと働き学ぶ人が増えている社会の実現を目指して、2030年のチャレンジ目標とKPIを設定しています。

    • 多様な働き方の選択肢の挑戦数(時間、女性活躍など)27挑戦(3挑戦/年×9年)
    • インクルーシブデザインを経た新シリーズ上市率50%以上

社内のWell-beingを向上するため、時間に対する価値観の変革、人材活性化と成長支援に取り組んでいきます。ワークスタイルを提案する企業として、多様な働き方を実践すると共に、一人ひとりが自らの可能性を高めて豊かなキャリアを形成できる環境整備を行います。また、障がい者を始めとした社会のバリアに阻まれている人と企画段階から共感・共創し、新たな課題を発見・解決する「インクルーシブデザイン」手法の商品開発を推進し、社会のWell-beingの向上に貢献します”

参考:-重点課題1- Well-beingの向上|コクヨのマテリアリティ|コクヨ

ウェルビーイングとは「人的資本経営」である。

今のビジネスシーンにおける潮流の中で、人的資本経営は最も支持される経営スタイルと言っても過言ではありません。

人材の価値を最大限に引き出すための投資を通じて、中長期的な企業価値の創造につなげる人的資本経営。日本においては、人的資本経営について国を挙げて取り組むべく、2023年1月に人的資本に関する戦略や指標などの開示を求める内閣府令が公布され、2023年3月期の有価証券報告書から人的資本に関する情報開示が義務化されています。

このような大きな潮流の中で、ウェルビーイングを人的資本経営の多面的な取り組みの中で実現を目指すものとして位置づける企業があります。

※今後、人的資本経営のもとにウェルビーイングやD&I、従業員エンゲージメントなどの様々な概念を統合・一体化させて取り組むケースは増えることが想定されます。

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人的資本経営に関して興味の有る方は下記の記事をご覧ください(人的資本経営についての基本知識、人的資本経営が注目される背景をお伝えしつつ、人的資本経営に関する企業の取り組み事例を分かりやすくご紹介します)。

MUFGのウェルビーイング

MUFG(三菱UFJフィナンシャル・グループ)では、人的資本を最重要資本の一つとして位置付けており、人的資本の拡充を通じて「社員一人ひとりが活き活きと活躍し、社会・お客さまに貢献するグローバル金融グループ」となることを目指しています。

この「社員一人ひとりが活き活きと活躍」という部分は、まさに社員のウェルビーイングが実現されている状態を指しており、同社では人的資本経営の実践を通じて、社員のウェルビーイングの実現に向かっています。

“めざす姿の実現に向け、MUFGは「事業競争力の強化」と「「挑戦とスピード」のカルチャー醸成」を2本の柱として、人的資本経営を実践しています。まず、「一人ひとりの心身の健康」を維持し、「多様な人材を認め合う」組織をつくることで、社員が安心して「挑戦と変革」にチャレンジできるようになると考えています。

その上で、実力を存分に発揮できる機会や成長する機会を提供し、社員の「働きがい」を高めます。さらに、「高度なスキルや専門性」を身につけるための仕組みを整え、「事業競争力を強化」し、企業価値の向上をめざします。

こうして生み出したキャッシュフローの一部を人的資本に再投資し、「挑戦とスピード」のカルチャーを定着させていくことで、人的資本経営の好循環を生み出していきたいと考えており、この好循環、そしてめざす姿への貢献実感を含めて、社員のウェルビーイングを高め、企業価値向上につなげていきます”

参考:MUFGの人的資本経営|三菱UFJフィナンシャル・グループ

ウェルビーイングとは「成長戦略」である。

一人ひとりの個人の幸福を実現するウェルビーイングの概念は、市民の安全を守り、便利で豊かな生活を支援する自治体(行政機関)の視点では、一つの成長戦略として位置づけることができます。

富山県のウェルビーイング

富山県では、富山県成長戦略(2022年2月策定)の中心にウェルビーイングを掲げ、戦略のビジョン「幸せ人口1000万~ウェルビーイング先進地域、富山」の実現を目指し、各部局と連携しながら取組みを進めています。

“ 今後は、収入や健康といった外形的な価値だけでなく、キャリアなど社会的な立場、周囲の人間関係や地域社会とのつながりなども含めて、自分らしくいきいきと生きられること、主観的な幸福度を重視した「真の幸せ」(ウェルビーイング)を目指すことが経済成長の目的であり、手段でもある時代となり、新しい産業政策、新しい人材政策が必要となっています” 

富山県成長戦略では、富山の強みを最大限に活用し、弱みを克服することにより、富山のウェルビーイングの向上を図り、次世代の価値を産む人材が富山に育ち、また、県外から引き寄せられて富山に集積することを戦略の核に据えることとします”

 ビジネスやまちづくりにおける世界の潮流がハードからソフトへ、モノからヒトへと変わりつつある中で、デザイン思考やクリエイティブなアイデアを活用し、人の主観を重要視するウェルビーイングをより意識した取組みを生み出し、新たな製品・サービス、企業、市場の創出や新しい価値を生み出す地域づくりを進めます”

参考:富山県/富山県成長戦略(令和4年2月18日策定)

ウェルビーイングとは「経営の土台」である。

ウェルビーイングは、経営の土台として位置づけることもできます。

組織のビジョンを実現するために、まずは社員のウェルビーイングを実現させる必要があり、その土台の上で、組織開発や人材開発の取り組みが行われていく。そういった順序を大切にしている企業があります。

パナソニックのウェルビーイング

パナソニックでは、社員のウェルビーイングを一人ひとりが心身ともに健康で、挑戦の機会を通じて幸せと働きがいを感じている状態と定義し、社員のウェルビーイングを実現するための3つの取り組みを推進しています。

  1. 安全・安心・健康に、はたらく。
    安全・安心・健康な職場づくりの推進

  2. やりがいを持って、はたらく。
    自発的な挑戦意欲と自律したキャリア形成の支援

  3. 個性を活かしあって、はたらく。
    「Diversity, Equity & Inclusion(DEI)」の推進

3つの取り組みによって実現される社員のウェルビーイングは、パナソニックグループが目指す「物と心が共に豊かな理想の社会」の実現に向けた取り組み(個人の挑戦心の醸成や組織の風土改革)の前提、つまり、土台に位置づけられるものであります。

“パナソニックグループが目指すのは「物と心が共に豊かな理想の社会」。その実現のためには個々の事業の競争力強化が欠かせません。そのための手段となるのは、一人ひとりの社員稼業と衆知経営の実践に支えられた「自主責任経営」です。

そこでは、グループの社員一人ひとりが卓越した自主責任感にもとづき積極果敢に挑戦し、言うべきことが言える風土の醸成と、その中で全ての社員が知恵を出しあうことが常態化していることが望まれます。

「自主責任感」と「言うべきことが言える風土」、この両輪の前提となるものが、「社員のウェルビーイング」です”

参考:DEIと社員のウェルビーイング|Diversity, Equity & Inclusion|サステナビリティ|パナソニック ホールディングス

この記事の著者について​

池田 信人

自動車メーカーの社内SE、人材紹介会社の法人営業、新卒採用支援会社の事業企画・メディア運営を経て2019年に独立。人と組織のマッチングの可能性を追求する、就活・転職メディア「ニャンキャリア」を運営。プロジェクトデザインではマーケティング部門のマネージャーを務める。無類の猫好き。しかし猫アレルギー。

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