ゲームの根幹となる「ゲームロジック」について(ワンヘルスカードゲーム制作の裏側 vol.7)

はじめまして、株式会社プロジェクトデザイン代表の福井です。

2024年10月に完成したワンヘルスカードゲームについて、ゲーム制作の裏側(制作過程の様子)を全10回の連載記事としてお届けしてまいります。この連載記事を通じてワンヘルスカードゲームに興味を持っていただけることがあれば何より嬉しく思います。

なお、ワンヘルスカードゲームの制作依頼元 兼 共同制作パートナーである福岡県庁様には、ゲーム制作の裏側を開示することに快諾いただきましたこと、改めて感謝申し上げます。

ワンヘルスとは

動物から人へ、人から動物へ感染する「人獣共通感染症」は人の感染症のうち約6割を占めていると言われています。また、抗菌薬の不適切な使用を背景とした、人・食品・環境等における薬剤耐性(AMR)を持つ細菌の出現が国際社会で大きな問題になっています。

こうした問題を解決するために、人の健康と動物の健康、そして環境の健全性を一つの健康と捉え、一体的に守っていくという考え方がワンヘルス(One Health)です。

人・動物・環境の健康(健全性)に関する分野横断的な課題に対して、関係者が協力し、その解決に取り組むことが重要です。

美しい地球を次世代につなぐために、私たちにはできることは何があるのでしょうか。福岡県では、私たちにできる「ワンヘルス」を進めるための6つの基本方針をまとめています。

6つの基本方針

01 人獣共通感染症対策
医療、獣医療をはじめ各分野と連携し、発生予防、まん延防止を図る

02 薬剤耐性菌対策
薬剤の適正使用を推進する

03 環境保護
自然環境の保全を図る

04 人と動物の共生社会づくり
動物愛護の推進と野生動物の理解と共存を図る

05 健康づくり
自然や動物とのふれあいを通じた健康づくり

06 環境と人と動物のより良い関係づくり
健全な環境下における安全な農林水産物の生産・消費・食育を推進する

参考:福岡県ワンヘルス推進ポータルサイト

今回、制作するワンヘルスカードゲームに期待されることは、県の推進するワンヘルスの普及啓発をおこない、人と動物(家畜、愛玩動物、野生動物の別を問わず全ての動物)の健康と環境の健全性は、生態系の中で相互に密接につながり、強く影響しあうという概念の理解につなげ、日常における行動を生み出すきっかけとすることです。

今回お届けする内容について

本連載では、カードゲーム制作の流れに沿った内容を順番にお届けしてまいります。第7回目の今回お届けする内容は「ゲームロジック」です。

プロジェクトデザインのカードゲームでは、リアル(現実性)を再現することによって現実世界に持ち帰ることのできる学びや気づきを提供することに重きを置いています。このリアルを再現する上で欠かすことのできないものがゲームロジックです。

ゲームロジックとは、

「Aという行動を取ると、Bの結果が生じる」
「Bの結果が生じることによって、Cという行動の選択肢が生まれる」

などのゲームの構造・仕組みを意味します。カードゲームを制作する上では、現実の社会構造やビジネス構造に忠実にゲームロジックを組み立てていきます。

そんなゲームの根幹となるゲームロジックについて、株式会社プロジェクトデザイン代表の福井氏にお話を伺いました。インタビュアーは同社で長期インターン中の杉山です。

それではどうぞ!

ゲームの根幹となる「ゲームロジック」について

ゲームロジックの考え方

――ゲームロジックを組み立てる上で、最も気を付けていることについて教えてください。

福井:私たちは現実で何が起きており、どんな問題があり、なぜ起きているのかという部分をまず明らかにするようにしています。具体的には、専門家のインタビューをもとに問題の構造を紐解いていきますが、専門家によって見えている問題の構造というものは異なります。

ある専門家から見えている問題の構造は一つの真実ではありますが、ワンヘルスのような「幾つもの問題が複雑に絡み合って全体の問題構造を形作っている」ケースにおいては、一人の専門家の視点で全体を捉えることはできません。

よって、私たちは様々な専門家のインタビューを通じて見えてきた個々の問題の構造を組み合わせて、1枚のマップ上に表すアプローチを取っています。

――問題の構造を明らかにする上ではどのようなことを意識していますか?

福井:ワンヘルスのような複雑な社会課題には因果関係が必ず存在しており、根本的な問題の所在を明らかにすることが大切です。そこで、因果の繋がりを矢印で表し、全体像を掴むことを意識しています。

例えば、「人口の増加→宅地造成→山の切り崩し」や「プラスチックなどの不燃ごみの増加→埋め立て用のごみの増加」などが挙げられます。

――1枚のマップに全体像をまとめることはかなり難しいことのように感じますが、一発で上手くいくものなのでしょうか?

福井:一発で上手くいくことはないですね。因果の繋がりや問題のカテゴリ分けが不十分であったり、実はまだ見えていない問題があることもあるので、マップを何度もブラッシュアップする必要があります。

最初につくったマップ(※)

※各要素の因果関係やカテゴリが散乱している状態。まだまだ整理が必要です。

最終的なマップ(※)

※各要素の因果関係とカテゴリが整理されている状態。ここまで整理することで、各要素をカードに落とし込みやすくなります。

ワンヘルスカードゲームのプレイヤーの役割

――続いてゲームの設定についてお聞きします。今回のワンヘルスカードゲームではプレイヤー(ゲーム参加者)は12個の役割に分かれますが、それぞれにはどのような意図が込められているのでしょうか?

福井:プレイヤーは、ワンヘルスに関わる「専門家」や「市民」の役割を担う形でゲームに取り組むことになるのですが、今回は「市民」の役割の数を意図的に多くしています。

なぜならワンヘルスの実現には市民一人ひとりの行動が大切になるからです。「山の近くに住む人」「海の近くに住む人」「まちに住む人」など、様々な立場の市民の役割をゲーム内に表現することで、ワンヘルスと私たちの生活との繋がりを感じやすくすることを狙っています。

――その狙いを言い換えるならば、「人と動物の健康と環境の健全性が生態系の中で重要であるという概念の理解につなげ、日常における行動を生み出すきっかけとする」ということですね。

福井:その通りです。ワンヘルスカードゲームのゲーム体験を通じて、参加者の方々がワンヘルスを意識し、日々の生活の中で行動の変化が生まれることを期待しています。

ワンヘルスカードゲームならではの仕掛け

――今回のワンヘルスカードゲームならではの仕掛けにはどのようなものがありますか?

福井:2つあります。1つ目は地域のワンヘルスの達成状況が示す「地域の状況メーター」です。人の健康・動物の健康・環境の健全性の3つのメーターがあり、プレイヤーが起こした行動による直接的な効果が各メーターに反映されます。

しかし、プレイヤーが起こした行動の全てが「地域の状況メーター」に反映されるわけではありません。自分のアクションだけでは地域の状況は変わらずに、ともすれば無駄足になってしまうこともあります。

ただ、そんな中においても、同じ問題に関して様々なプレイヤーが行動を重ねていくことではじめて地域の状況が変わることがあります。このプレイヤーの起こした行動による間接的な効果を表したものが、2つ目の仕掛けとなる「影響チップ」です。影響チップは複数枚手に入れることでメーターが変化します。

――「地域の状況メーター」と「影響チップ」にはどんな意図が込められているのでしょうか?

福井:「自分が変わり、相手が変わり、世界が変わる」。そんな感覚をゲームの中で体験していただきたい。そんな意図を込めています。

現実社会において、私たちは “大勢の中の一人” に過ぎず、自分一人の行動で世界を大きく変えられるわけではありません。しかし、一見すると微力に見える自分の力であっても、周囲を巻き込み、働きかけていくことによって、より大きなインパクトを生み出すことができるものです。

ワンヘルスカードゲームにおいても、数十名にも及ぶプレイヤーが一堂に会し、12の役割に分かれてゲームに取り組みます。個々のプレイヤーはまさに “大勢の中の一人” に過ぎないわけですが、自分なりに考えながら周囲を巻き込んだり、働きかけたりすることを通じて「行動を積み重ねていくことで周囲が変わり、やがてゲームの場全体が大きく変化していくこと」を実感できるようになります。

この「自分が変わり、相手が変わり、世界が変わる」感覚を得やすくする仕掛けが、プレイヤーが起こした行動の影響を見える化した「影響チップ」と「地域の状況メーター」になるというわけです。

これからワンヘルスカードゲームを体験する方へ

――最後に、今後ワンヘルスカードゲームを体験される方々へのメッセージをお願いします。

福井:普段、私たちは人間の目線でしか物事を見ていないことが多く、その結果、動物や環境に悪影響を及ぼしていることがあります。

まずはこのワンヘルスカードゲームを体験して、自分たちの小さな活動一つひとつが多方面に影響を与えていることを感じてみてほしいです。

そして、人間か動物か環境かという「 何かを犠牲にする視点 」ではなく、人間も動物も環境もという「 調和を考える視点 」で見てみるとどうなるのかを学んでみてほしいです。

――本日は貴重なお話をありがとうございました!

インタビュアープロフィール

杉山 貴哉

富山大学経済学部の4年生(2024年時点)。大学の講義で「キャリア教育」を知り、中高生や社会人向けの教育に興味を持ち始める。就職活動中にプロジェクトデザインと出会い、2024年5月より、同社の長期インターンシップに参加。現在は学生向けのイベント運営や記事執筆、ゲーム制作の一端を担う。SNOOPYが大好きで、趣味はプロ野球の観戦。

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